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スピリッツ! ~おちこぼれ勇者の大冒険~  作者: 時雨瑠奈
精霊の巫女誘拐事件
3/33

第二話 ~精霊の巫女の秘密~

 エレナ=ルクウィッドは、何者かに

攫われ、謎の城の一室に幽閉されていた。

 黒衣のあの男の正体はエレナには全くと

言っていいほど分からず、また誰かに憎

まれた覚えもない。

 だから何故ここに連れて来られたかの

理由も分かっていなかった。

 部屋の窓の外はかなり高く、落ちれば

死か大怪我が待っていそうだ。

 それでも金の髪を振り乱し、エメラルド

グリーンの瞳をきらめかせながらエレナは

考えた。

 高価そうな白いカーテンや、白い丸

テーブルにかけられた白いシルクの布を

勝手に引っぺがす。

 それでも足りないので、クローゼットに

入っていた白系統のドレスも拝借し、よう

やく綱上につないだ物が出来上がった。

 窓を開け、慎重に綱を下そうとした、

まさにその時だった。

「何をやっているの、あなた!!」

 いきなり鍵のかかっていたハズの扉が

開き、綺麗な銀髪の娘が入って来た。

 彼女は慌てて食事の乗った銀盆を置き、

エレナを後ろから羽交い絞めにした。

「離して!! 離してよ!!」

 エレナはじたばたと暴れた。が、娘の

力は緩まない。かなりの力がこもっていた。

「ここからは出れないわ!! 死んでしまう

のよ!!」

 娘は一旦片手を離し、部屋に置いてあった

ガラス製の置物の一つを掴むと、窓の外に放り

投げた。と――。

 バチッと電撃が走り、それは焼き焦がされた。

少しの塵も残らない。エレナは青ざめた。

 体から力が抜け、へたり込む。

もし、自分が同じように飛び降りたら、跡形も

なく消滅して死んでいたのだ。

「な、なにこれ……」

「結界が張ってあるの。前に同じ事をしようと

した人がいたから、あの方が張ったのよ」

「あの方?」

 彼女の藍色の目が曇った。まるで曇天どんてんの空の

ような印象を受け、エレナは目をそらす。

 引き込まれそうなほど、綺麗な目だった。

「私は、あの方の名前を教えていただいてないの。

ごめんなさいね」

「いえ、わ、私こそ、ごめんなさい」

 ようやく彼女の手は離された。

窓を閉め、置いてあった銀盆をエレナに差し出す。

「これ、食事よ。食べてね。……あ、それと、

ここにある物は自由に使っていいからね。」

「あ、あの……ここからは、出れないの?」

「まだ駄目だと思うわ。〝適合〝するまでは、私達も

あなたを自由することができないの」

 頭を下げ、娘は出て行こうとした。

エレナが慌てて呼びとめる。

「あ、あの!! あなた、名前は?」

 娘は驚いたように藍色の目を見張った。

名前を聞かれるとは思わなかったのだろう。

「ステラよ。ステラ=ワイズ。あなたは?」

「エレナ=ルクウィッドです」

「エレナちゃんね。よろしく」

笑顔になり、娘――ステラは、部屋を出て

行った。かちゃり、と鍵のかかる音が響く。

 逃がしてくれる気はないらしい。

そんなに甘くはないか、とエレナは舌打ちした。

 でも、悲観していてもはじまらない。

「ルークが迎えにきてくれるまで、がんばるわ」

ぐっと拳を握り、エレナは着替えるために

クローゼットを探り始めた――。



エレナは比較的動きやすそうな、チョコレート色の

ドレスに着替えて食事を取る事にした。

 何のために用意されたのかは分からないが、彼女が

いる部屋のクローゼットには色とりどりのドレスが

詰まっていた。フリルやレースがついていたりする

可愛らしい物もあったが、今エレナが着ているのは

全く飾りがないシンプルな物だった。

 皿に乗った料理はかなり豪勢な物だった。

今まで食べた事もない味に、彼女は目を輝かせたが、

同時に太るかも、と落ち込んだ。

 贅沢な悩みだけれど、女性はいろいろ気にする物

なのだ。今日のメニューは、柔らかく煮込まれた

鶏肉のクリーム煮に、何の肉かわからないが、肉が

入った野菜スープ。名前がわからないけど美味しい

魚の焼き物。

 ふわふわに焼きあがったパン。鳥の丸焼き。

サンドイッチに焼き菓子、熱いいい香りのお茶まで

ある。至れり尽くせりだな、とエレナは思った。

 お腹がいっぱいになり、腹ごなしに体を動かして

いると、ステラが再び入って来る。

「食器を取りに来たわ、エレナちゃん。味は美味し

かった?」

「ステラさん!! とっても美味しかったです。これって、

ステラさんが作っているんですか?」

「違うわ。私は、新しく来た精霊の巫女の世話係なの。

料理を作るのは、別の子の役目よ」

「ここって、たくさん人がいるんですか?」

「ええ。何年か前から、精霊の巫女達が来ているのよ」

 精霊の巫女ってなんなんだろう。エレナはそう思ったが、

ステラの顔がひどく悲しそうなので、口をつぐんで

しまった――。



 しばらくの後。エレナは、陶器の花瓶の水を替えに来た

ステラに、とうとうこらえきれずに聞いてしまった。

「精霊の巫女ってなんなの!?」

 ステラは一瞬ためらったが、彼女には知る権利があると

思ったらしく、ため息をつきながら口を開いた。

「あの方は、世界の理を知る者と言っていたわ。けれど、

私達の村では、精霊祭は、生贄の儀式だったの。村の生き

神とするための、人身御供の儀式……」

「そ、そんな、じゃあ、私の村の儀式は間違いなの!?」

 エレナは青ざめた。生贄、生き神、人身御供、その言葉が、

ぐるぐると頭の中で回転を始めていた。

 精霊の巫女の儀式は、楽しい物だとエレナはずっと思って

いた。村人達が美味しそうなご馳走を食べ、巫女となった

少女は好きな男性――パートナーと踊る。

 でも、それは間違いだったと言うのだろうか。

「あなたたちの村では、どうだったの?」

「巫女が祭壇でまず一人で踊り、それからパートナーと

ダンスをするのよ。そうすれば、村が繁栄するって」

「私の場合はね、綺麗な衣装を着て踊るのは、思い出作り

らしいのよね。その後、好きな相手と踊り、生涯最初で

最後のお酒を飲む。その中には、強力な睡眠薬が入って

いるの。そして、埋められる」

「……!!」

 エレナは言葉にならない悲鳴を上げた。

生きたまま埋められてしまうなんて、ぞっとしない話である。

今ステラはここにいるが、運が悪かったら彼女はあのまま

埋められて死んでいたかもしれなかったのだ。

「私は死にたくなんてなかった。なのに、村人達は私を責め

立てるのよ、もう死にたいと思うほど、ね。拷問にかけ――」

「やめて……。もうやめて!!」

 聞きたくない、とエレナは耳をふさいだ。

精霊の儀式は、ただ楽しいだけだと思っていた。

 なのに、こんなに酷い物だっただなんて。

こんなに、悲しい物だったなんて――。



 

 誘拐されたエレナサイドのお話です。

元々はルークサイドと一緒に載せていた

のですが、ごっちゃになって見にくかった

のでエレナサイドだけに修正しました。

 旅に出たルークサイドは次回に投稿

させていただきます。

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