第二十八話 ~勇者は精霊の巫女の危機を知る~
ルーク=ウレイアは、彼女が苦しげな
顔をしたのを見てホッとしたように膝を
ついた。
はあはあ、と同じように膝をついた
アンジェが安心したような笑みを作る。
「よく、ここまで頑張りましたね、ルーク」
ルークは額の汗をぬぐって笑顔になった。
「ありがとな、アンジェ」
一時休憩をしていたカストルと、ビショップ=
ルクウィッドの目も優しげなものになっていた。
ルークの顔に笑顔が広がった。
「よし!! 今日はあるもの使ってごちそうを
作るぜ!!」
「やったあ!!」
「ルークが強くなったお祝いだね!!」
ルークは浮き浮きとしながら荷物を探って
いた。
干し肉と調味料がいくつかと野菜とチーズと
小麦粉だ。
「水を汲みに行こうよ、カストル」
「えっ? うん、いいけど……」
ビショップがカストルを誘った。
カストルは一瞬精霊に出してもらえばいいのに、と
思ったけれど文句は言わなかった。
一時的にルークはアンジュと二人きりになる。
アンジュは料理が出来ないため、ルークに任せて
見学をすることにした。
ルークは手際よく火をおこし、干し肉と野菜を
先に切ることにする。
半分はスープ、半分は炒め物を作るつもりで
分けておく。
久しぶりに好物を作れるとあってルークは
目をきらきらさせていた。
「楽しそうですね、ルーク」
「うん!! 料理好きだし、チーズ入りの
パンができるなんて久しぶりだしさ!!
まあ、蒸しパンはできないけど」
「いつもありがとうございます。ごめん
なさい、私も料理ができればいいのです
けれど」
「気にすんなよ、人には出来る事と出来
ない事があるんだからさ」
「そうですね」
二人が楽しげに話会っているその頃――。
ビショップとカストルもまた二人っきり
だった。
ビショップは彼女の隣を歩きながら顔を
赤らめているがカストルはまったく気が
付いていない。
「あの……カストル?」
「何よ」
「カストルってさ、ルークの事好きなの?」
「なっ!? 何言ってるのよそんなわけない
でしょ!?」
真っ赤になった顔を見れば「そんなわけ
ある」のだろうが、カストルはそんな訳ない
と頭を振り続けた。
ビショップは悲しげな顔をしながら続ける。
「ルークを好きになっても望みないよ。だって、
ルークはエレナお姉ちゃんが好きなんだもの」
「だ、だから違うって言ってるでしょう!!」
「僕にしておきなよ」
真剣な顔で見つめてくるビショップに慌てる
カストル。だが、彼はずっと彼女を見つめ
続けていた――。
その頃、ルークは。
野菜を切っている途中、ずきりと何故か頭が
痛んだ。
手元が狂い、指を切ってしまう。
アンジェの悲鳴が上がったが、ルークは大丈夫
だからといさめて指を口にふくんだ。
どうしたんだろうと思った時だった。
(ルーク……さようなら……)
「エレナ!?」
ここにはいない彼女の声が聞こえた。
攫われてから一度も会っていない少女。
ずっと一緒にいた幼馴染。
無能者と言われ続けた自分を、女性で唯一認めて
いた人。
悲しげな声を聞いた時、ルークは自分の気持ちを
初めて知った。
彼女の事が、幼馴染としてではなく、友達として
でもなく、一人の女性として好き、だと。
「エレナ……」
「どうしたのですか、ルーク?」
「よく、分からない……でも、エレナが危ない
んだ!! 声が聞こえた、『ルーク、さようなら』
って」
「大変です!!」
料理なんて作っている暇ではなかった。
ルークは血相をかえて材料を放りだし、ビショップ
達のもとに急ぐ。
その頃、ビショップは今まさにカストルに愛の告白を
しようとしていた所だった。
「あのね、僕は君が好――」
「ビショップ!! カストル!!」
「ううわああああっ!!」
「きゃあああああっ!!」
見つめ合っていてルークの登場に気がつかなかった
二人はぎょっとなった。
悲鳴を上げたので耳をふさいだルークがため息をつく。
「もうルーク空気を読んでよ!!」
(かえって助かったわ、ルークありがとう)
ビショップは頬を膨らませたがカストルはホッとした
ような顔になっていた。
ルークは彼を構う事なく言葉を発する。
「エレナが危険な目に遭っているかもしれ
ないんだ!!」
「えええっ、お、お姉ちゃんが!! で、ででででも場所
とか分かってるの!?」
「それが分かってりゃすぐに乗り込んでるよ!!」
「私が、知っています」
言い合う二人を、涼しげな声が止めた。
アンジェだ。彼女は冷たい空気をその身にまとっていた。
説得に応じなければ自身が兄を殺す。
そう言ったのは、アンジェ本人だ。
決意に満ちた瞳がきらりときらめく。
「あなたたちの以前の力ならば敵わないと思い、ずっと
言わずに来ました。ですが、今のルークならもう大丈夫
です。精霊王のいる所に転送します」
そう言ったのと同時に、四人を虹色の光が包み込んだ。
力がまだ万全でないアンジェのために、十三体の精霊達が
くるくると光に飛び込んで力を増幅させる。
光が消えると、彼らの姿はすでに精霊王の根城にあった――。
もうすぐ、最終決戦です。
最後はハッピーエンドで終わらせ
たいので、最後まで見てくださると
嬉しいです。




