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スピリッツ! ~おちこぼれ勇者の大冒険~  作者: 時雨瑠奈
話し合う巫女
26/33

第二十五話 ~精霊の姫は覚悟を決める~

 ルーク=ウレイアは急ごしらえで

作られたテントの中で料理を

作っていた。

 いい匂いがその中にたちこめて

いる。

 精霊達に認められた事が嬉しくて、

かなり上機嫌だった。

 ビショップ=ルクウィッドと、

カストルがこっそりつまみぐいを

しようとして彼に怒鳴られ、それを

くすくすとアンジェが笑っていた。

 アンジェは少し具合がよくなった

らしく、人一倍食べては三人を呆れ

させていた。

 呆れつつも、おかしそうに笑うの

だが。

 精霊達は人間界の物は口に出来ない

らしく、ふわふわと浮きながらただ見て

いるだけだった。

 何故アンジェは人間界の物を口に

出来るのかというと、〝姫〝と〝王〝

だけは特別な存在だからだ。

 他の者は人間界の物を口にすれば汚れて

しまうが、彼らは汚れることなくそのままの

存在でいるのだ。

 他の精霊達は一応はルーク達を認めている

様子だが、闇の精霊リオンだけは拗ねたような

顔だった。

 仕方なく認めたということを隠そうとも

しない。

 でも、三人はそれ以上口を出さずにいた。

アンジェがとがめようとした言葉も遮る。

 三人には分かっていた。これ以上何か言えば、

彼の機嫌をさらにそこねると。

 しばらくは彼のためにも、放っておいた方が

いいのだった。

「おーい、できたぜ!!」

『やったあ!!』

「待っていましたわ」

 ついにルークの料理が完成し、嬉しそうな声を

上げた二人と、アンジェがすぐにやってきた。

 今日の料理は、分厚いハムステーキに、付け

合わせのポテトサラダ、具だくさんのコンソメ

スープ、チーズ入りのパンがそれぞれ二つずつ。

 デザートにはバナナのタルトレットだった。

どの料理も美味しかったので、四人は瞬く間に

それを平らげ、皿はすぐに空になった。

 アンジュでは割ってしまうので、カストルと

ビショップが皿を洗う事になる。

 ルークが皿を拭いていると、隣に立った

アンジェが急に真剣な顔になっていた。

「エレナを、精霊の巫女を助けるためには、魔法を

使いこなせないといけません」

「そうだよな。よし、アンジェ、稽古付けて

くれよ!!」

「私も!! 私もやる!!」

「僕も!! 早くお姉ちゃんを助けたいもん!!」

 四人は片付けが終わると、精霊達を伴ってテントを

横に動かすと、そこで稽古をすることになった。

 笑みを消したアンジェが三人の前に立ち、攻撃を

してくるようにと命じる。

「ルーク、カストル、ビショップ。三人でかかって

来なさい。精霊の力も使い、全力で」

「えっ!? アンジェに本気で来いってこと!?」

「む、無茶だよ、アンジェ!!」

「そうよ、危険すぎるわ!!」

「いいから来なさいッ!!」

 アンジェの言葉は有無を言わせない響きだった。

あまりに強い勢いに、三人は顔を見合せている。

「どうなっても、知らないからなッ!! 来い、

バランス!!」

「了解じゃ」

 ルークはためらいながらもバランスの力を剣に宿し、

アンジェに飛びかかった。

 ビショップとカストルが小さい悲鳴を上げ、顔を手で

覆って目を閉じる。

 だが、三人が思ったような結果にはならなかった。

アンジェが手をかがけた瞬間、ルークはバランスと共に

吹き飛ばされ、その場に叩きつけられたのだ。

 老人の姿をした精霊は目を回している。

ルークはかろうじて気絶はしていなかったけれど、頭を

地面に打ち付けてしまい呻いていた。

「うぅっ、な、何で……!?」

 二人は異変に気づいて目を開け、そして形成が逆転

しているのを見てぎょっとなった。

 アンジェは真剣な顔を崩さず、静かな声で言い放つ。

「本気で来なかったでしょう?」

「ほ、本気でなんていけるわけないだろ!!」

「そんなことで、兄に、精霊王に勝てるのですか!!」

 そう怒鳴られて、ルークはアンジェの事を思い出した。

彼女は精霊王の妹、精霊の姫。

「精霊の力だけでは、私には勝てません。私に勝てないの

ならば、精霊王にだって勝てないでしょう」

「で、でもアンジェ……」

「安心してください、ビショップ。精霊の力では私を

殺す事などできません」

 それは殺すための力ではないから。

アンジェはそんな事を望んでなどいなかった。

 出来る事ならば、話し合いたい。

彼らにそんな事など強制しない。

 もし、殺すのならば、彼の血縁である私が殺す。

止められないのならば、私に責任があるのだから。

「あなたたちは彼を止めるだけでいいのです。

もし、それができなかったら、私が、妹である私が

殺します」

 ビショップは顔が青ざめるのをどうする事も

出来なかった。

 アンジュの殺す、と言った顔には嘘も偽りもない。

彼女は本気だった。

 肉親を殺す事など、ビショップは考えた事も

なかったのだった。たとえ、犯罪や間違いを犯

しても、殺すなど出来なかった。

「アンジェ、殺すのは最終手段だよね?」

 ビショップは確認のためにそう言った。

アンジェだって、話し合いを望んでいるはず

なのは分かっている。

 たった一人の肉親なのだから、悲しくない

訳がない。

「ええ、できれば、話し合いだけで終わらせたいと

思います。でも、それはできないだろうということも

分かります」

「そんなこと!!」

 カストルが叫び声をあげた。

アンジェはさらに言葉を続ける。

「ルーク、あなたは、エレナのために命の危険を

冒そうとしています。ビショップも、カストルも、

大事な人がいたらそうするでしょう。彼も、そう

なのです。カトレイアが生き返るのならば、命を

捨てる覚悟で挑んでいます」

 三人は何を言っていいのか分からなかった。

アンジェは最後にこれだけを言うと、稽古を

再開した。

「だから、簡単に諦めるはずはないのです。

あなた達が、エレナをあきらめないように。

……さあ、来なさい!! 今度は三人で!!」

 ルーク達はキッと顔を上げると、それぞれの

武器を構えながら飛びかかった――。

 次第に最終章へと進んで来ました。

まだまだですが、最終決戦が近づいて

来ています。

 次回は、エレナ編の予定になって

います。

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