第二十話 ~精霊の巫女は仲間達と話し合う~
あの男の検査に〝適合〝してしまった
エレナ=ルクウィッド。
仲間達は今相談の真っ最中だった。
「ねえ、どうするの?」
そう言ったのは、ステラ=ワイズだった。
かなり真剣な顔である。
ミルカ=ライニオも、ジゼット=ブラック
も、そしてリエンカも同じような顔で悩み
こんでいた。
もちろんエレナも同様である。
何せ、自分の事なのだ。
エレナは無意識のうちに、さくらんぼの
ようなピンク色の唇を噛んでいた。
「ルークが助けに来てくれたら……」
「ルーク?」
一番最初に反応したのはリエンカだった。
まばたきをしながらエレナを見てくる。
失言に気付いてエレナは口元を押さえたが、
あまりに遅すぎた。
いつの間にか、ジゼットとミルカが目を
きらきらさせていた。
「ルークって誰? エレナの好きな人?
恋人?」
「何何? 私にも教えてよお!!」
エレナは真っ赤になってうつむいた。
だが、二人の少女は追及の手を緩ませず、ずい
ずいと詰め寄りながら聞いてくる。
エレナが涙目になった時、ようやくステラが
助け船を出してくれた。
藍色の瞳があきれ果てたような色を移している。
「こら、今はそんな話をしている場合じゃない
でしょ。考えなきゃいけないことは山ほどある
のよ」
不満そうな顔をしながらも、二人は「はーい」と
言い返して話に戻った。
ふぅ、とため息をつきながらステラがエレナを
見つめる。
「エレナ、気にしなくてもいいから」
「ありがとう、ステラ……」
エレナは途端に笑顔になった。ステラとこうして
笑える事がとても嬉しかった。
ルークに会えない時も、彼女達と笑いあえる
事が唯一の救いだった。
彼女達がいなかったら、きっとくじけて
しまっただろう。エレナはもう一人ではないのだ。
ルークは、今誰かと共にいるのだろうか……。
彼が心配だった。責任を取らされてないか、とか、
魔物に倒されてないか、とかそんなことばかり
考えてしまう。会いたいと、心から思う。
彼は今、どこにいるんだろう。
「私、戦う……」
リエンカが唐突に言った。
全員は驚いたように彼女を見やる。
リエンカは無表情だったが、拳を握って
やる気満々といった様子だった。
漆黒の瞳には感情は宿っていないけれど、
結った黒髪が動物の耳のように跳ねて、どこ
となく彼女のやる気を示しているように
見える。
「あの人、エレナ、渡さない……リエンカ、
エレナ、守る……」
「リエンカ……」
エレナは感動したように目に涙を浮かべた。
ミルカやステラ、ジゼットも同じように拳を
握った。
「あたしもやる!! ……確かにあの人は
あたしを助けてくれた。だけど、友達に何か
しようとしてるのなら許せないよ」
「私も……エレナを守りたいと思うわ。
彼は何か隠している……」
「僕だってエレナも守る!!」
全員は一致団結した。
エレナ以外の者達は、彼に助けられた。
だが、何か隠している様子の彼に友達が
何かされそうになっているのも確かだ。
守りたい、彼女を。たとえ、命の恩人に
逆らっても。
その後、全員はとりあえずミルカの作った
料理を平らげた。
今日のメニューは、ミルクを使って煮込んだ
ライスである。
ミルカ曰く、「ミルクガユ」というらしい。
お腹に優しく、しかも美味しい料理を、エレナ達は
鍋一杯平らげたという――。
一方、ここは城の一室。かなり豪華な造りの部屋に、
宙に浮いた少女がいた。
その顔は、悲しみに沈んでいる。
「お願い、誰か、あの人を止めて……!! あの人は、
恐ろしい事に手を染めているの!! どうか、誰か、
止めて……!!」
少女は男を止める事が出来ない。
彼女は、すでに死んでいるのだ。
体がないため、状態が安定せず、一日でも少ししか
姿を他人に見せることができない。
男とは何度も話したが、彼は彼女の意思を受け
入れない。話など聞いてくれないのだ。
少女は涙交じりなためいきをもらし、彼女はまた
消えていく自身の姿を見つめながら、その場から
いなくなった――。
エレナは一人になると、ルークの事を想いながら
ベッドに倒れ込んだ。写真を取り出し、ながめる。
かなり幼い頃に取られたものだった。
ルークと、何も考えずに一緒にいた頃の写真。
エレナがルークを愛する前の。その写真にはエレナも
写っていて、髪に百花百連の髪飾りを
飾って笑顔な彼女がいた。
当然その顔は今よりも幼く、彼と離れる事など考えも
しないように、彼の手をしっかりと握っていた。
彼も抵抗せず、彼女の手を握り返している。
エレナはそっ、と自分の髪に手を伸ばした。
さらさらとした感触だけがその手にはある。
どこかでなくしてしまったのか、髪飾りはエレナの
手元にはなかった。
「本当に、どこで落としたのかしら。ルークは覚えて
ないかもしれないけど、私には本当に宝物だった
のよ……」
誰に否定されようと、エレナはルークが好き
だった。
捨てろと言われても、ずっと反抗して髪飾りを
手元に置いていた。
十五歳になった今でも。おもちゃの髪飾りでも、
エレナには宝物なのだ。
彼が何の気もなしにくれたものだとしても。
エレナにはかけがえのない貴重品だった。
「会いたいよ、ルーク……。早く来て、私を
助けてよ。お願いよ、ルーク……」
彼女の小さな嗚咽の声が外を吹く風にまぎれる。
その声を聞いたのは、悲しげな顔で彼女を見つめる
霊体の少女だけだった――。
今回はエレナ編です。
少女達同士の和気藹々と
したシーンや恋愛トーク
なども書いてみました。




