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スピリッツ! ~おちこぼれ勇者の大冒険~  作者: 時雨瑠奈
話し合う巫女
18/33

第十七話 ~精霊の巫女は友を得る~

 エレナ=ルクウィッドは、自室のベッドで

目覚めた。

 枕元には、リエンカが立っていて、無言で

見つめている。

 思わず悲鳴を上げ、彼女は飛び起きた。

「きゃあああああっ!!」

「私、リエンカ……」

 たとえ知っている者でも、目の前でじいっと

無言でのぞきこんでいられたら、びっくりする

ものである。

 エレナは涙目で彼女を睨んだ。

「知ってるわよっ。知ってるけど、無言で見つめ

られたらびっくりするにきまってるでしょっ」

 リエンカは首をかしげていた。エレナの言って

いる意味が理解出来ないのだろう。

 彼女は毒気を抜かれ、ベッドから降りた。

まだ頭が痛い。あの男、何を飲ませたのか、と腹が

立った。

「エレナ、大丈夫?」

 心配そうにリエンカが聞く。表情は変わらないが、

声に不安が混じった感じがした。

 エレナは無理に笑顔を作る。

「大丈夫よ」

「嘘、よくない……」

 エレナは思い切り舌打ちをしたくなった。

作り笑顔の事も完全に見破られている

らしい。

「まだ寝てた方、いい……」

 そのままベッドに戻されそうになり、エレナは

話を変えた。

「ねえ、そういえば、リエンカが私を運んで

くれたの? 誰かが運んでくれたってことは

覚えてるんだけど」

 まるで頭に霞がかかっているかのように、思い

出せない。

 リエンカではないような気もしたが、聞いて

みたかった。

「違う……ステラ……」

「えっ?」

 それは予想外だったので、エレナは思わず目を

丸くした。

 彼女は、エレナを拒絶したのだ。仲良くなり

たいと、親友になりたいと思ったのに。

 でも、彼女はエレナの事を嫌いなのだと思って

いたが、そうではないのだろうか。

 それだけのことなのに、エレナは心が温まるのを

感じた。

『エレナ、大丈夫!?』

 ジゼット=ブラックとミルカ=ライニオが

やってきた。

 大声で叫ばれ、エレナは頭を抱えたくなる。

「大丈夫だから、ちょっと声を落として……」

 エレナが眉をしかめて言うと、二人は慌てて声を

小さくした。気遣わしげな瞳が、さらにエレナを

苛立たせる。

 だが、彼女はそれ以上文句は言わなかった。

「またステラはいないのか?」

「いないみたいね」

「みんな、ステラのこと好き?」

 エレナは思わず聞いていた。こっくりと全員が

頷く。ジゼットもミルカも、リエンカも頷いていた。

「好きだよ、ボクはステラが好き」

「あたしも!!」

 そのまま四人は食事を楽しんだ。今日の朝ごはんは、

しっとりと焼き上げた大きなアップルパイである。

 かなり大きく、ゆうに四人分以上あった。

ミルカが切り分け、全員がそれを食べようとした、

その時だった。

 遠慮がちなノックの音が響いて来たのだ。

ジゼットが開けると、そこにいたのは、ステラ=

ワイズだった。

 久しぶりに仲間のもとへやってきたというのに、

嬉しそうな色は皆無で、罪人のような暗い顔だった。

「私も一緒に食べていい?」

「もちろんだよっ!! 待ってて今切るからね!!」

 綺麗な三角形に切られたアップルパイが、ステラの

皿にも載せられる。ひとまず、全員が口に運んだ。

 甘酸っぱいりんごが、柔らかい生地によくあっている。

あっと言う間に四人は平らげ、おかわりしていたけれど、

ステラだけはゆっくり食べていた。

 彼女は食事中も他の人がしゃべりかけようと黙って

いたが、食べ終える頃になってようやく口を開いた。

「私、もうやめるわ……」

 唐突な言葉だった。ミルカもジゼットも目を丸く

している。

 真剣な顔で、ステラはなおも続けた。

「もう、壁を作って素の自分を隠すのはやめる。先に

壁を作っていたのは、あんたたちじゃなくて、あたし

だったのよね」

「ステラどうした?」

「黙って話を聞いてジゼット! 話さなきゃいけ

ないのよ!!」

 きつい声で言われ、ジゼットは眉をしかめながら

黙った。

 ミルカも不満そうな顔で頬をふくらませている。

「私、いい子ぶってたわ。人のことばかり考えて、

自分を殺してた。そんなんじゃ、本当の親友なんて

出来る訳なかったわ」

 ミルカ達が胸をつかれたような顔になった。

彼女達も、ステラが無理をしていたのは気づいて

いたのだろう。

「エレナ、私、あんたが大嫌いよ。あんたが、素で

いい子で、人を引き付ける力があって、誰にでも

優しくて、本当に妬ましかった!! でも、私は

同じくらいあんたが好きなのよ! 自分でも自分が

わからないわ!!」

 エレナの目から涙があふれた。最初は悲しい意味

での涙だったけれど、ステラの告白をすべて聞いた

後では、それは嬉し涙に変わった。

「ステラ!! ステラ!! ステラ!!」

「抱きつかないでよ、うっとうしい!」

 ステラはムッとしたようにしがみつくエレナを

睨んだが、決して突き放す事はしなかった。

 少し頬が赤くなっているのに気付き、ジゼット達が

微笑ましそうな顔になる。

「私たち、親友になろう、ねっ?」

「あんたバカじゃないの? あたしはあんたを傷つけた

のよ? それでも友達になりたいっていうの?」

「うんっ!!」

 ステラの目にも涙が浮かんだ。それでも、強がる

ようにエレナを睨みつける。

「あんたバカよ! 大バカよっ!! 何考えてん

のよ!! ……あんたたちも、私のこと聞いたら

あたしが嫌いになるわよ」

 ステラはエレナが止めるのも聞かず、全てを

告白した。

 エレナに仲良くしておいて拒絶した事も、エレナの

提案を却下した事も、全て。

 ミルカ達は、それを聞いても彼女を疎ましく思っ

たりはしなかった。

 自分の罪を、彼女は隠そうともせずちゃんと受け

いれている。その事実が、ジゼット達の心を温かく

させた。

「ケンカならだれでもするよ。ステラは悪くない」

「私、ステラ好きだもん!! 嫌いになったり

しないよ」

「リエンカ、ステラ、大好き……」

 ステラはエレナに抱きつかれたまま、うなだれた

ように泣きじゃくっていた――。

 ようやくエレナとステラの関係が

修復されました。次回はルーク編の

続きになります。

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