表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スピリッツ! ~おちこぼれ勇者の大冒険~  作者: 時雨瑠奈
話し合う巫女
15/33

第十四話 ~精霊の巫女の妹の失敗~

 ルーク=ウレイアは、食事の用意を

していた。

 基本カストルと当番で料理をする事に

している。

 もう一人の仲間、ビショップ=ルク

ウィッドは、料理が下手なので当番には

入っていない。

「ルークルーク!!」

 と、カストルが目をきらきらさせて走り

込んできた。

 鍋にぶつかりそうになったので、慌てて

ルークが彼女を抱きとめる。

「な、何やってんだよっ!!」

「ご、ごめん……。でも、チーズにそっくりな

実を発見したんだよ。食べてみて」

 それは茶色い殻につつまれた、小さな実だった。

匂いだけなら、すごく美味しそうだ。

 ルークは笑顔になると、殻をむいて実を口に放り

込んだ。その時である。

「その実を食べちゃ駄目!!」

 青ざめた顔でビショップが走り込んできた。

口に入れた瞬間にそう言われ、ルークも青ざめる。

「それは毒だよっ!! お腹壊すよっ!!」

 それを聞くなり、ルークは実を吐き出した。

口の中に残る異物感に、数秒せき込む。

「か、カストル!! 毒なんじゃねえかよっ!!」

「ええ、私食べたけど、なんともないよ? いつも

食べてるのに」

 いきなり怒鳴られ、カストルは頬をふくらませた。

進めた物が毒と言われた事にも、腹を立てている。

 しかし、ビショップの瞳は咎めるような色を

見せていた。

「それは、君の進めたやつと、君が食べたやつが

別物だからだよ」

「そんなことないっ!! 同じのを持って来たよ」

 ビショップは首を振ると、ルークが捨てた実と、

どこからか取り出した実を並べた。

 あっ!! とカストルが声を上げる。

その二種類の実は、殻の色は同じでも、中身の色が

違っていた。

 ルークの方は毒々しい赤、ビショップが持って来た

方は、綺麗な金色だった。

「こっちが毒、こっちが食べれる方だよ」

 カストルは今にも泣きそうな顔になっていた。

体が小刻みに震えている。

「カストル、落ちつけよ。もう怒ってないって!!」

「もういいっ!!」

 カストルは目から涙を流すと、前に一直線に走り

出した。

 前も何も見ずに走る。ルーク達はギョッとなった。

 下は崖だ!! 一番素早いルークが駆けつけ、落ちる

前に彼女の腕を掴んだ。

「おい、大丈夫か?」

「だい、じょうぶ……」

 落ちかけて青ざめた彼女は、震える声で言った。

ホッとしたルークはすぐに引き上げようとするが、運悪く

そこに魔物が現れた。

 ひときわ奇妙な風体である。上半身も足も人間だが、腰は

蠍の物で、毒のある尻尾もあった。

「ギルタブルルだ!!」

 ビショップは慌てて弓を構えたが、長い尻尾が飛んできた

ので、よけるために下がらなくてはならなくなった。

 お湯を張った鍋が倒れ、火が消える音が聞こえる。

煙が上がってその場が一端見えなくなった内に、魔物は

ルークに襲いかかっていた。

 片手を掴んでいる状況で、勝てる訳はない。

ルークとカストルは、そのまま崖下に突き落とされた。

「ルーク!! カストル!!」

 ビショップの悲痛な声を聞きながら、彼らは下へ下へと

落ちて行った――。



 が、結論から言うと、彼らは一切怪我をしなかった。

精霊の姫からもらった武器が輝き、彼らを守ったのだ。

 だが、上にのぼる手段は今のところないので、二人は

困り果てていた。

 なにしろ、食料も水もないのである。

朝ごはんを作る途中でこんな事になったため、お腹が

ペコペコだった。

「腹、減ったなあ……」

「ごめん……あたしが変な実拾ってきたから……ううん、

あたしが前を良く見て走ってたらこんなことにはなら

なかったよね」

 卑屈に言うカストルに、ルークは苛立ちを覚えた。

確かに、落ちたのはカストルのせいもある。

 けれど、実際に悪いのは魔物である。

この状況じゃなくても、近くに崖があったのだから、

落とされていた可能性はあったはずだ。

 もう一度「ごめんね」と言われ、ルークは眉を

しかめて言い返した。

 今までは考えた事もなかったけれど、ビショップや

エレナが自分が卑屈な発言をした時腹を立てた理由が、

今ようやく分かった気がした。

「何度も謝るなよ、余計に腹が立つ」

 自分でも驚くほど、とげとげしい声が出た。

カストルは黙り、沈黙がその場を支配する。

 ルークはさらに苛立ったが、何も言わずに歩き

続けた。

 その時、ようやく何かが見える。

それは、洞窟だった。外よりも快適に思えたので、

彼らはすぐに場所を移った。

 雨風がしのげるので、洞窟の方が格段にいい。

その辺で拾ってきた薪に術で火をつけ、二人はそれを

囲む。

 お腹がペコペコな状況は変わらないけれど、温かく

明るい炎は二人の気持ちを少しだけ和ませた。

「どこかに食料ないか、探すね」

「俺も行くよ。俺の方が、植物には詳しいから」

 火をその場に残し、勇者と精霊の巫女の妹は、奥へと

歩いて行くのだった――。

 今回はルーク側のお話です。

カストルがうっかりミスをし、

さらに魔物に襲われると言う

不幸が重なった結果、ルークと

カストルはビシュップとはぐれ

てしまった感じです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ