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スピリッツ! ~おちこぼれ勇者の大冒険~  作者: 時雨瑠奈
成長していく勇者
11/33

第十話 ~目覚める精霊の姫~

 ルーク達は、カストルと名乗った少女に

案内され、彼女の住んでいる村に来ていた。

 カストルはのべつもなしにしゃべって

いたが、ルーク達は笑顔でそれを聞いていた。

 おしゃべりな女の子は、エレナで慣れて

いたのだ。

「あ、ついたよ。おしゃべりはここまでだね」

 少女が立ち止った。ルークは背に負った

アンジェを背負い直しながら、笑顔になる。

 ここは、小さな酪農村・ラクレット。

お礼に家の乳製品をごちそうする、と言われて

いたので、ルークはかなり上機嫌だった。

 ルークほどではないが、ビショップもどこか

楽しそうだ。

「ただいまあ~」

 何事もなかったかのように村に入っていく

カストル。

 三日もいなかったのに。とゆうか、『カストルを

しのぶ会』とかいう垂れ幕が張ってあったが、スルー

して歩いて行った。

「なあ、カストル?」

「なあに?」

「お前、死んだ事にされてないか?」

「だから、命の恩人って言ったじゃん。一度迷いこむと、

あそこは一生出れないって言われてるんだってば」

 カストルはきっぱりと言い切った。特に気にしては

いないらしい。

 オレだったらかなりショックだな、とルークは思った。

『カストル!!』

 と、彼女の姿に気づいて村人達が一斉に駆けてきた。

どの目にも、涙がたまっている。

 カストルは村人全員に愛された娘だった。

「みんな、心配させてごめんね、あたし、ちゃんと帰って

きたから!!」

 カストルは母親と父親と思われる人に抱きついた。

妹らしき子と、弟らしき子が腕に掴まっている。

「あの人達が助けてくれたんだよ!!」

 全員の目がルーク達の方に集中する。

二人は顔を赤らめてうつむいたのだった――。



 それからルーク達は大変だった。

「命の恩人!!」だの「神の使い!!」だのと

言う人達をなんとかなだめ、カストルの家に

たどり着いたのだ。

 アンジェはカストルの貸してくれたベッドに

寝かせた。

 エメラルドにも似た緑の髪の、サイドポニーに

結った髪を揺らしながらカストルはにこっと

笑う。

「さあ、どんどん食べてよ」

 ドドン、とさらに山盛りの乳製品が皿に乗って

出て来た。かなり美味しそうだ。

 ごくり、とルークが唾を飲み込む。

「こんなものしかないですが」

 優しそうなカストルのお母さんが苦笑している。

だが、ルークは好物を前にして目を輝かせていた。

「いえ、これで結構です!! オレ、チーズとか

好きなんで!!」

「とてもおいしそうですよ」

 二人は早速食べ始めた。とろけたチーズをパンに

塗り、たっぷりのミルクでいただく。

 それは今までで食べたこともない味だった。

独特のくさみもあまりない。新鮮な乳製品の

美味しさを、ルークとビショップはこころゆく

まで味わった。

 カストルは笑顔で給仕をしていて、これはこういう

名前、とか、これはあたしが作ったのよ、とか教えて

くれて、食事はかなり楽しいものだった。

 その時――。

「お客様が、お目覚めになりましたよ!!」

 一旦様子を見に行ってくれていたカストルの母が、

血相をかえて走ってきた。ルーク達も慌てて走っていく。

 カストルがその背を追いかけた――。



「う……ここは……」

 アンジェは銀の瞳をパチパチと瞬かせていた。

バサリ、と体にかけられていた羊毛の毛布が落ちる。

 驚いたように、女性が後退した。

それから、ホッとしたように笑う。

 小柄な茶色の髪を結い上げた女性だった。

「よかった!! お目覚めになったんですね!!」

「ここは……どこ、なのですか……」

 アンジェは弱弱しい声で尋ねる。

すると、女性はこころよく教えてくれた。

「ここは酪農村のラクレットですわ。今、お二方を

呼んでまいります!!」

 しばらくして、ルークとビショップが部屋に

駆け込んで来た。

 後ろには、可愛らしい少女もいる。

「アンジェ!! よかった!!」

 ビショップは涙目でアンジェに抱きついた。

ルークは泣きはしなかったが、ホッとしたように

肩をなでおろしていた。にっこりと少女が笑う。

「あなたアンジェっていうのね、あたし、カストル。

よろしくね!!」

「あ、はい……よろしくお願いします」

 アンジェはあいまいに笑っていたが、その場の全員が

目をそらした時、悲しい目をしていた。

 ここは、アンジェにとって思い出深い所なのだ。

この少女も母親も、アンジェの事は知らない

だろうが――。



 アンジェは恐縮しながら食事をいただき、カストルの

汚れのない笑顔で癒された。自分の力を確認し、力が

あまりないことを知る。これでは、ルークたちの足手

まといも同然だった。

「私は、もうルークたちとは共にいけません」

「どうしてだよ、アンジェ!!」

「あの男と戦った際に、力を封じられました。足手

まといですから、どうぞどこかに置いていって

ください」

 ルーク達は迷うように目を泳がせた。

アンジェを置いて行きたくはないけれど、自分達の

力量で彼女を守り切れるかが心配だった。

 これ以上彼女には怪我をして欲しくない。

提案したのはカストルだった。

「じゃあ、ここにいればいいよ!! ずっと倒れて

たんでしょ? そんな人をどこかに放っておくなんて、

駄目だよ。ね、お母さん?」

「ええ。狭い家ですが、どうぞいつまでもいてくだ

さいな」

 アンジェはすまないと思い断ろうとしたが、二人は

かなり強情でついには了承してしまった。

 そして、次のカストルの言葉にルーク達は目を

丸くした。

「あたしも、ルークたちについてく!! これでも

強いんだよ~」

「そんな、女の子を巻き込むわけにはいかないよ!!」

「男女差別はよくないよっ。あんたに命救われなきゃ、

あたし死んでたもん、恩返しさせてよ~」

 アンジェでさえ敵わなかったのだから、元々口ベタな

ルークが勝てるわけはない。

 結局カストルに打ち負かされた。

「カストル……こちらに……」

 アンジェが真剣な顔で言った。手招きされたので、彼女が

向かっていく。と、パアアッ、と虹色の光が散る。

 それが晴れると、カストルの腕に銀色の籠手が輝いていた。

ルーク達と同じくぼみが十二個ある。

「うわあ、きれーい」

「あなたなら使いこなせるハズです。がんばってくださいね」

「「「行ってきます」」」

 三人は笑顔で村を出て行った。差し入れとしてもらった

乳製品やパンを大量に荷物におさめながら。

 彼らは知らなかった。笑顔で三人を見送ったアンジェが、

力の使いすぎでまた倒れた事を……。

 アンジェがようやく目覚めました。

好きなゲームのキャラに名前が微妙に

似ていたのでうっかりアンジュと打ち

間違えかけたのは今ではいい思い出です

 カストルが仲間入りしました。

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