第九話 ~森の中の生活~
ルークとビショップは、まだ食料探索の
真っ最中だった。
別れて探しているようだ。
ルークの方は、かなりの食材を手にしており、
きちんと成果を上げていた。
きのこ数本、食べられる木の実数個を大事
そうに胸に抱きかかえている。
彼は食べ物に関してはとても詳しいのだった。
あの村にいた時も、修行に夢中にならない限りは
いろいろと森の中で食料を探していたりも
したのだ。
夢中になると寝食を忘れてしまい、ビショップの
姉であるエレナに叱られていたけれど。
「あとは、肉か魚でもほしいかな。これじゃあ
足りないかもな」
ぐううううっ、と再び腹の虫が鳴く。
ルークは一旦きのこなどを置くと、流れていた川に
飛び込んで魚を次々と掴んでいった。
きらきらと輝く茶の瞳は本当に楽しそうだ。
「あ~、楽しい!! つめてえ!!」
十匹近く捕まえると、彼は上機嫌で食料を抱えて
戻って行った――。
一方、ビショップはさんざんな結果に終わって
いた。
リスの姿をしたモンスターに、見つけた木の実を
取られたり、魚に馬鹿にされて、全然取れなかっ
たり、あげくのはてに、モンスターに川に投げ
込まれてずぶぬれになったりと本当にさんざん
だった。
ルークの所に戻り、彼が海の幸山の幸を大量に
取っているのを見て、さらに打ちのめされる。
「ルーク、ごめん、全然駄目だった……」
「いいよ、誰にでも得手不得手はあるんだからさ。
ビショップは自分にできることを頑張ればいいん
だよ」
「ありがとう、ルーク……」
ビショップは、ルークが取ってきて料理した
食事をしながら、お姉ちゃんがルークを好きに
なった理由、分かる気がするな、と思うの
だった。
二人は食料をその日は分け合って食べ、その
まま眠る事にした――。
翌日。ルーク=ウレイアは今日も剣の素振りを
していた。
銀色の剣は、輝きが曇ってしまっている。
精霊達がいないからだな、とルークは思った。
精霊達に認められた証の石、〝プリュネル〝も
今は光がなくなっている。
「ルーク!! アンジェがまだ目覚めないよ!!」
泣きそうになりながらビショップが走り
込んで来た。
ぶつかりそうになり、慌ててルークがよける。
「気をつけろよ!! ……アンジェの様子はどうだ、
ビショップ? 苦しそうか?」
「ううん、それはもう大丈夫みたい」
「それだけでも進歩だな」
ルークは伸びをし、剣を鞘におさめた。
優しく彼の肩を叩く。
「ご飯にするか?」
「うん……」
彼らは、木陰で眠る少女をちらりと見てから、
歩き出した――。
ルーク達は食事を取る事にした。
ルークが仕留めた鳥の魔物(ハルピュイアでは
ない)を焚き火で焼いて、串にさして
食べている。
チーズがあればな、と彼がぼやいた。
「仕方ないよ、こんなところに乳製品なんか
ないもんね」
「わかってるよ、ビショップ。早く食べて
訓練するぞ」
「う……うん……」
ためらいもなく食するルークとは違い、
ビショップには少し食べにくかった。
彼は肉を食べた事はあるが、元は生きて
いたもの、という実感はなかったのだ。
生きていた命を奪わなくては、人は生きて
いけない。
その事は十分分かってはいるけれど、
ためらいはあった。
と――
「ねえ!!」
いきなり声が聞こえたので、二人は驚いて
振り向いた。
そこには、薄汚れた恰好の女の子がいた。
猫のような大きな目を見開き、じいっ、と
ビショップの手元に目を落としている。
お腹がすいているようだった。
「食べないなら、それ、あたしにくれ
ないか!! もう三日も食べて
いないんだ!!」
「え、ええ!? いいけど……」
少女はひったくるようにビショップの肉を
取り、実に気持ちのいい食べっぷりで瞬く間に
平らげてしまった。
物欲しそうに、ルークの分の肉も見ている。
ルークは声を立てて笑い、予備で焼いていた分を
全部少女に渡した。
それを全て食べ終わった少女は、すっかり
お腹がふくれたらしく、満足そうに息をついた。
「ああ、お腹いっぱい!! ありがとう、君たちは
恩人だよ!! 〝迷いの森〝で迷って三日!! 死ぬ
かと思ったよ!!」
にっかりと笑う少女の顔は、土で汚れてはいたが、
とても可愛らしかった。ルーク達も笑い返す。
「ん? ちょっと待てよ、迷いの森?」
「そうだよ!! ここは、一度入ったら出られない、
おっそろしい森なんだぞ!! 君たちは何日
かかった?」
ビショップは首をかしげた。二人は、まったく迷う
事なく森を出る事が出来たのである。
だが、少女が嘘を言っているようにも見えなかった。
口調にも、恐怖がにじんでいる。
「俺たち、迷わなかったぜ?」
「嘘だろおおおおっ!?」
あんたら神様!? と少女は大きな目をさらに大きく
見開いた。ルーク達は困ったように肩をすくめる。
「これのおかげかな、ルーク?」
銀色の弓を触りながらビショップが言い、ルークも
銀色の剣をながめた。
これは、精霊の姫と精霊達の加護を受けた証である。
きらきらと目を輝かせ出した少女に、ルーク達は事情を
説明したのだった――。
今回は、せっかく旅に出ているという
事でルーク達にサバイバルっぽく活躍して
もらいました。ビショップは失敗してますが。
新キャラクター登場です。




