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プロローグ:

 初めての方は、はじめまして。初めてでない方は、お久しぶりです。

 自分は、羽沢将吾と申します。


 数年前、こちらでいくつかの作品を投稿していました。

 その後色々有りまして、こちらに完結せずに放置状態の作品をいくつか残したまましばらく執筆活動を止めていました。

 ですが、昨年から執筆活動自体を再開して、今年三月に「第一回ハヤカワSFコンテスト」へ投稿し、一次は通ったのですが二次で落選してしまいました。

 このまま埋もれさせるのは勿体ないので、久しぶりに古巣(?)のこちらへ投稿させて頂きます。

 たくさんの方に読んで頂き、感想やご意見を頂けたら望外の喜びです。

 作品自体は完結していますのでエターは有り得ませんが、結構長編なのと、自分で読み返してもまだまだ改稿の余地があるのと、なによりも「小説家になろう」での連載形式が楽しいので、一度に全文投稿するのではなく、二日から三日の間隔である程度の量(一回につき、一つの章の投稿を目安)を投稿して行こうと思います。

 SFと言っても堅苦しいものではなく、ライトノベル的味付けも多分にしてありますのでお気軽に読んで頂ければと思います。


 それでは、どうぞお付き合い下さいませ!

「お父さま、早く!」


 美しくしなやかな金髪を月明かりに輝かせながら、少女が叫んだ。

「はは、そんなに焦らなくても大丈夫だよ、アリス」

「いいから、早く! 北斗の乗っているお船が、私達の銀河に戻ってくる瞬間を見たいの!」

 少女は父親の諭す言葉を聞いても、それでももう待ち切れない、と言ったように走り出してしまった。

 細く、長い足でしっかりと大地を捉え、軽やかに掛けていくその姿。かつて、少し歩くだけで息を切らせていた娘を思い出した父親は、

「この手で施したとはいえ……」

 その頃とは見違えるほどに、強く元気になった最愛の娘の姿を星空の下に見て、ふ、と自嘲的に微笑んだ。

「お父さまってば!」

 そんな父の想いをよそに、眼下に港を見下ろす高台にある公園の展望台から、愛娘がぶんぶんと手を振って呼んでいる。父親は数回、頭を振って先ほど脳裏に浮かんだ自嘲の想いを跳ね除け、輝く笑みを自分に向けている愛娘の元へと急いだ。


「あっ!」


 父が辿り着くのとほぼ同時に、夜空を見上げていた娘が愛らしい叫び声を上げる。

「どうしたんだい、アリス?」

 父に問い掛けられた娘――神崎アリス・リヒトフォーフェンは、

()えた! 北斗が還って来たよ!」

 先ほどから何も変わっていない夜空を見上げたまま父親に応えた。

「そうか……視えたのかい、アリス」

 アリスの小さな頭に掌を置き、慈しむように撫ぜつつ、もう一度父が問い掛けると

「ええ! たったいま、北斗の乗ったお船が出て来たの。もうすぐ、もうすぐ北斗に逢えるんだね……」

 輝くサファイアブルーの瞳からダイヤモンドの如く光る涙を零し、アリスが呟いた。

「還って来たか、我が友よ」

 アリスの言葉を聞いた父――超巨大企業国家フラビオン現総帥、神崎雅臣(かんざきまさおみ)は、愛娘に注いでいた慈愛の眼差しを夜空へと向け、数々の修羅場を潜った精悍な友の顔を思い浮かべた。

「うふ、お父様の大切なお友達。そして、私の大切な人が、ね」

 悪戯っぽくそう言うと、アリスは自分の頭を撫ぜてくれていた父の手を取り、白く繊細な右手でぎゅっと握り締める。

 濡れた真蒼(あお)の瞳もそのままに輝く笑顔を見せ、アリスは銀色に光る指輪が薬指に嵌められた左手を、十二歳そこそこにしか見えない外見とはアンバランスなほど豊かな胸にあて、つぶやいた。


「視えた……視えたよ、北斗。お還りなさい、私の愛しいひと……」


 アリスの真蒼い瞳は、地球から約38億キロメートルの位置――太陽から最も遠い惑星、海王星の軌道から少し内側に設置された超時空接続システム、通称『エレメント・トンネル』からたったいま姿を現した第一次外宇宙探査船団旗艦『はやぶさ』の姿をはっきりと捉えていた。


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