大会予選
少し長くなりました。
「結局、今日の今日まで彼女の家に泊まっていたと・・・・・・逆月さん、ちょっと爆発してくれませんか?」
こう、派手に、ドーンと。
「生憎、自爆魔法なんぞ習得しとらんよ。というかシトよ、何を勘違いしているか知らんが儂はリーゼちゃんに何もしておらんよ。」
リーゼよいうのはおそらくあの受付嬢さんの本名だろう。
「そうなんですか?」
「儂とてそう簡単に誰とでも寝るなんてことなぞないわい。まったく、お主は儂を何だと思っているんじゃ?」
百合全開の変態だと思ってました。
「鬼改め色欲魔だと思ってました。」
「それで本音を隠したつもりか?」
とまあ、僕等は今闘技大会控え室でだべっている。
控え室といっても60人くらいの人数を収納してまだスペースが有り余るのだからその広さはかなりのものだ。
だが僕達はそんな広い部屋の隅にいたりする。
というのもこうして話し合っている目的はこの三日間お互い得た情報を交換し合うという事だったのだが逆月さんの口から出るのはピンク一色の惚気話ばかりであり、さすがの僕も我慢の限界を感じていた。
「彼女はああ見えてもなかなかの甘えん坊でな。ただどう接すればいいかわからんから自己主張も上手くできんようじゃった。なのでこちらからアレやコレやと世話を焼いておったらその度に見せる表情がかわいくてのぉ。」
うへへへへ、と涎を垂らして笑うその姿は控え室でもかなり浮いている存在だ。
・・・・・・本当に手をだしてないですよね?
僕はフードつきの黒のコートで身を隠してはいるが逆月さんはいつものように着物に袴と和風スタイルなので目立ってしょうがない。
悪目立ちするなって言われているのになぁ・・・・・・。
「・・・・・・ところで逆月さんのランクはFから変わりましたか?」
「んにゃ、変わっておらんよ。もしやそっちはランクアップしたのかの?」
「一応Eにはなりましたよ。」
というかFランクのクエストはもっぱら日雇いバイトのような力仕事が大半で今や岩も素手で砕けるような身体を手に入れた僕としては簡単すぎる仕事だ。
なので逆月さんも真面目にやればこの三日間でEへと昇格できるはずだったのだがどうやらこの人は受付嬢さんもとい、リーゼさんとイチャラブするのに忙しかったらしい。
・・・・・・別にうらやましくないそうだなんてことないただ僕は逆月さんみたくコミュニケーションが下手なだけであって決して孤独感を感じていることなんてない。
「儂はクエストはしておらんかったが色々手伝ってはいたぞ?酒場のお姉さんや飯屋の看板娘さん、それに看板娘さんの妹さんとかおかげでここに来て一気に交友関係が広まったわい。」
「うわぁ。」
なんでこの人は色々とフラグ立ててるの?
それなんてエロゲ?あなたは主人公かなんかですか?
男が羨うことを平然とこなすこの人は男の敵に認定しても良い気がする。
「これがリア充って奴ですか。・・・・・・確かに爆発して欲しいものがありますね。」
「だから爆発なんぞできん。まあこの三日間を好きに楽しんだことは認めるがの。」
そうやって肩を竦める逆月さんは様になっていたがどこか釈然としない気になった。
そして、そんなどうしようもないことを喋っていたら大会の係員と思われる青い軍服のそうな服装をした人達が入ってきた。
「これより闘技大会予選を行います!1番~30番の者はこちらに来てください!」
「儂は22番じゃから行ってくるとしよう。」
「お気をつけて。」
死人が出ないことを祈ろう。
ちなみに僕は41番なので呼ばれなかった。
予選のルールは単純で30人ほどを闘技場に立たせてのバトルロワイヤルというものだ。
最後に立っていた者が予選通過となるとかなり荒っぽいが予選を一日で終わらせようとするのならこれくらいが丁度いいのだろう。
「おい坊主、あのねーちゃんは強いのか?」
さっきまで僕達を遠巻きに見てた一人が話しかけてきた。
日に焼けた肌に服を着てても分かる程の筋肉に坊主頭と見るからにパワータイプのおっさんだった。
「俺の名前はイエン。ランクCの冒険者だ。俺はお前らがギルドに登録してきたときに遠巻きに見てた奴から聞いたんだが、あのねーちゃんを化物とか言ってな。俺としては想像がつかねぇんだ。」
化物と言うか鬼なんですけどね。
「強いですよ。あれがランクFだなんて詐欺も同然。誤って死人がでないよう祈るばかりです。」
「そんなに強いのか?」
「見ればわかると思いますが・・・・・・ってここからは見えませんよね。」
選手は呼ばれるまでここで待機することになっている。
「それなら大丈夫だ。そこの壁にに水晶が埋め込まれてるだろ?試合が始まれば埋め込まれた壁いっぱいに試合の様子が映るようになっている。まあ、音質は歓声も合ってあまり良くないが。」
「詳しいですね。」
「なんだ坊主は初めてか?闘技大会は定期的に行われるからな。俺は今回で4回目だ。」
聞く話によるとどうやら参加者の中には腕試しや武者修行といった景品なんぞ二の次の人も多いらしく、イエンさんもどうやらそのうちの一人に入るらしい。
「自分の腕を再確認するってことでもあるけどな。」
「成る程。」
「ただ今回は景品がエルフの魔法武具だからなソレ目当ての奴もいる。なんせ国がレイ将軍を持ってくるほどだ。」
「レイ将軍?」
というか国が持ってくるとはどういうことだ?これは国が開催する催しではないのか?
「よく勘違いされるが違う。ここを催してんのは≪黎明≫っていう傭兵ギルドだ。ただこの催しには国も関わっているからそう勘違いする奴も多いな。」
「では景品とかはその傭兵ギルドが用意するということですか?」
「そうとも。だから国も欲しけりゃ実力で勝ち取るしかないっていうわけだ。そこでレイ将軍の出番ってわけさ。」
「そこまで言うなら相当強い人なんですね。」
「ああ。実力ならランクS相当ならしい。剣の腕前もかなりのもんだが魔法も上級魔法まで使えるからな。俺から言わしてもらえばアレが化物だ。」
「その、上級魔法って何か分かります?」
上級魔法。
冒険者ギルドに通っていると度々耳にする言葉だ。
だがあまり詳しいことがわからなかった。
ゲームのときは冒険者にランクはなく――ただクエストにレベル制限があっただけだ――だが魔法はランク分けされていた。
SS~Fの八段階に分けられ、一応僕もSランクまでの魔法をいくつか習得している。
エルフのレベルなどから判断してEまたはF程度の魔法がこの世界での普通だと思っていたがやはり上級魔法となるとそれを遥かに凌駕するのだろうか?
「いや、こればっかりは見たことねえから何も言えんな。」
「そうですか。」
まあ用心はしとくべきか。
「お、始まったみたいだなって・・・・・・おいおいなんだありゃ。」
見ればいつの間にか壁に予選映像が映し出されているがそれはすさまじいものだった。
一言で言うなら、ネズミの群れに突っ込む削岩機と言ったところか。
逆月さんが大太刀を鞘に収めたまま振るっているっておい。
「あれ、≪カンガラ≫じゃないですか。」
「≪カンガラ≫?なんだそれ?」
「あの人の愛刀ですよ。」
我らギルドの副ギルドマスターが逆月さんのために作った最高作品の一つ。
つまりというかもちろんのことであるがアレはこんな大会で使っていいものではない。断じてない。
あの大太刀は自分より格上、つまりボスモンスターなどを敵と想定しての武器であってそんなものを一般人に毛が生えたような程度の冒険者に使うなんぞバランスブレイカーもいいとこだ。
例えるのなら平安時代に核兵器を持ち込むようなものなのだ。
見れば逆月さんがあの大太刀を振るう度にその余波で地面は削れ人が埃のように舞っている。
本人も直接当たれば殺してしまうと分かっているのか、さっきから地面相手に武器を振るってそこから発生する余波で倒そうとしているがそんなことするくらいなら武器のグレードを落としてもらいたい。
他の29人が可哀想に見えてきた。
見れば何人かが共闘して逆月さんを倒そうとしているがそもそも近づくことさえままならない状態だ。
また、逆月さんが吹き飛ばした地面が岩となって飛んでゆくので遠くにいようが被害は免れない。
あ、一人自分からリタイヤして係りの人に助けを求めている。賢いぞ君、彼はきっと長生きできることだろう。
そして三分くらいがたっただろうか?ついに29人のうち最後の一人が宙を二回転してたおれたところで予選通過の一人は逆月さんとなった。
子供がおもちゃの人形を投げ捨てたようにくるくると回転するのが印象的だった。
観客席からは拍手喝采が送られる。
だが逆に控え室には嫌な沈黙が流れる。
まあこれから戦うかもしれない相手あんなのだったらどうしようもなく思えるだろう。
それを断ち切ったのはイエンさんだった。
「あー成る程。あれは確かに化物だ。」
「なんかほんとすみません。」
「どうして坊主が謝る?」
「なんかこう自責の念が・・・。」
あの人は女性にやさしいが男には容赦がないというのはわかっていたと言うのに。
なんであの人から目を離してしまったのか後悔するが時既に遅しだ。
そもそもこの程度の大会なんぞ逆月さん一人でも十分優勝できる可能性があった、むしろ楽勝だろう。
なのに僕は一応念のためと思い、自身も大会に出場しようとここにいる。
「あの腕力は規格外にも程があるな。あんなのが人間なわけないだろうし・・・・・・亜人、それも上位種か?」
「えっと、ほら魔法で肉体を強化してるかも知れませんよ?」
僕の言葉はもちろん嘘だ。逆月さんは強化系の魔法なんぞ一つも習得していない。
「それはないだろう。魔法なら発動したかどうかは俺くらいになると見ればわかる。あれは単純な腕力だろうに、なあ坊主?」
「なんで僕に聞いてくるのですか?僕はあなたと違ってまだランクEの下っ端ですよ。」
「それで誤魔化せると思ってんのか?さっきあいつの刀の名前も知ってやがった癖して、あいつがどんなのかはお前がこの中で一番知ってるだろう?」
ここでさっき迂闊にも逆月さんの愛刀≪カンガラ≫を口にしてしまったツケが回ってきた。
イエンさんの目には明らかに疑惑の色がある。
「知ってると思いますけどここまですごいとは思いませんでした。」
嘘はついていない。本当に僕は彼女の思考回路があそこまでぶっ飛んでいたとは思ってなかった。
ほんとやってくれたと思う。
「そうか・・・・・・まあいい。誰だって仲間の手の内を晒したくはねえしな。」
そう言ってイエンさんから警戒の雰囲気がなくなる。
この人が物分りの良い人で助かった。
「ただ今回の大会は凄まじいことになりそうだな。本選に出れる予選通過者は二人だけで残りの本選メンバーが全員シードだからな。」
「え、そうなんですか?」
ということは僕はこの人とも戦わなければならないという事か。
「シード選手っていうのは以前の闘技大会で上位まで上り詰めた選手が大体でそういうのは傭兵ギルドが許可しなければなれないものだ。だけどまあ所詮ギルドだからな、皆に公平ってのはあくまで理想であって現実は違う。王家や貴族には頭を下げる。だからレイ将軍みたいな一度も大会に出場してない人でもシード選手となる。ま、レイ将軍みたいに名のある人なら王家の推薦なしでもシート選手となっただろうが。」
「黒いですね。」
どうやらこの世界ではやはりコネとかが重要になってくるらしい。
ならばなんの後ろ盾のない逆月さんは結構危ない立場じゃないだろうか?
裏工作で本選に出場できなかったりとか・・・・・・いやないか。
アレがその程度でどうにかなるはずもなく、ならば心配すべきなのは予選突破を目指す僕自身だ。
この程度なら予選突破は大丈夫だろう、むしろ楽に勝ちをもらえると思わせるように弱そうに、かつ安全に予選を突破しなければならない。
「次!31番~58番は付いてきてください!」
「どうやら予選が始まるらしいぜ。残りの本選出場は一枠のみだからここにいる奴全員なのにあいつも生真面目なもんだ。」
イエンさんの言葉に皮肉が混じっていた。
あの係員と知り合いなのだろうか?
ただそのことについて考える時間はない。
「・・・うし。」
気合は十分。
こういった争い事は人生初だがそこはこの身体の性能でカバーするしかない。
こうして僕は闘技場内へと足を進めたのだった。
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闘技場内は昔歴史の教科書で見たローマのコロッセウムによく似た構造となっている。
よく似たというのはこちらの方が大きく、場内から観客席までの高さがアパート三階建てに匹敵する。
おそらく魔法などでどんぱちすることを想定しての高さだろう。
見れば観客席の最前列には係員と同じ服装をした人達が等間隔で配置されており、観戦というより監視している感じがする。
思っていた以上に監視が厳しいことにこれでは魔法も秘密裏に使って勝つという手段が取れないな、と考えていたら一人男がこちらに飛んできた。
音も無く回避すると同時に男は壁に激突し、そのまま動かなくなった。
・・・・・・うん、生きてはいるな。
男はそのまま観客席にいる係員の一人の魔法で一瞬にして消えてしまった。おそらく転移の魔法だろう。
逆月さんのときは戦闘シーンしか見えなかったがどうやら力尽きて戦闘続行不可能と係員に判断されると強制的に転移されるようだ。
そして今や闘技場内で立っている者は僕とイエンさん、それと3人の剣士――僕からすれば装備が似たり寄ったりで見分けが付かない――を残すのみとなった。
その中でもイエンさんの強さは別格で彼が振り回すクレイモアは逆月さんに劣るものの、豪快の一言である。
で、僕はというとそれをずっと観戦してたりする。
スキル≪隠密≫。
このスキルは≪暗殺者≫や≪盗賊≫などの職業を習得すると同時に得るスキルでプレイヤーのレベルに応じて敵から見つかりにくくなるといったそのまんまなスキルである。
ただし、一度でも攻撃したり、または攻撃を受けたりすると効果は無効となってしまうので戦闘中に何度も使えるスキルではない。
これを開戦と同時に発動し、さっきからずっと闘技場の壁を背に観戦していたのである。
正々堂々戦うなんて真っ平ごめんだ。
楽して安全にそして素早く勝つのが僕の方針である。
と、ここに来てイエンさんが一気に二人剣を一振りするだけで倒してしまった。
このままイエンさんがあと一人を倒してしまうとおそらく僕の存在を知覚できていない審判はイエンさんを勝者と決めてしまう。
あの弱った二人ならと思って手加減をしながら走りそのままイエンさんの背中に――
「来やがれ!!」
「――なっ!」
突然イエンさんが咆哮したと思ったら僕の隠密は解除された。
おそらくあの咆哮は≪戦士≫のスキル≪挑発≫だ。
半径10mの敵に対して大ダメージを与えたように錯覚させるといったものでこれによって僕の隠密が破られたということか。
「もう一人いただと!?」
「お前は黙ってな!」
僕の出現に隙をつかれたのか、剣士はイエンさんのクレイモアを防ぐこともできず隙だらけの横腹に打ち込まれた。
「がは・・・・・・。」
どさり、と力尽きる剣士。
そしてイエンさんはそんな崩れ落ちる剣士なんぞ無視して僕の方を睨んでいる。
「・・・どうしてわかったか聞いてもいいですかね?」
「なに、てめえみたいな奴はここぞというときに不意打ちしてくると思ってな。試しにやってみたら見事大当たりだったわけだ。」
うわ、この人は僕が一番苦手とするタイプだ。
そう思いながらもじりじりと距離をあけようと下がってゆく。
イエンさんは動いてはいないものの警戒を高めてゆくのがわかる。
「ほんとやめてくださいよ。僕はそういう直感とか勘で動く人が苦手なんですよ。」
話しながらも次のアクションへと身体は準備を整える。
イエンさんも同じようだが向こうは動かず、ただ迎撃の準備する。
「そりゃどうも。だがこっちだって驚いてんだ。まさかこうも簡単に後ろを取られるとはな。その身なりからして盗賊くずれか?」
「それは言え――」
ませんと言い切る前に突進する。
僕から見れば遅いが彼にとっては十分過ぎる速さだ。
「なっ、この!」
彼はクレイモアを振ろうとするが遅い、既に僕は彼の懐、ほぼ密着したような形になる。
そしてそのままスキル≪拳――気絶≫を打ち込む。
「――しっ」
腹にめり込んだ拳は僕に確かな感触を伝え、同時にイエンさんからは力が抜けてゆくのが感じる。
≪拳闘士≫の技スキルの一つ≪拳――気絶≫。
クリティカルヒットすれば確実に相手を気絶させると言ったスキルである。
ゲーム時代、PvPでここに拳を打ち込めば絶対に相手はクリティカルになるといったポイントひたすら研究した僕にとっては現実となった今でもクリティカルなんぞ容易いことだ。
むしろ身体どころか運動神経、動体視力も強化している今ではさらに狙いやすい。
「し、勝者シト!!」
審判の声に湧き上がる歓声。
少しばかり照れるものもあるがなんにせよ予選突破である。僕は堂々と門をくぐって闘技場を後にした。
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「やあ、目が覚めたかい?」
「・・・・・・最悪の目覚めだ。」
イエンが目を覚ました場所は闘技場の医務室だった。
ただ彼と目の前にいる闘技場内の係員の服装をした彼以外誰もいない。
「なんで目を覚まして一番にてめえの顔を見ることになんだよ。」
「僕としては君がああもぼろぼろになったことで落ち込んでいると思ったんだけど?」
「死んでねえからそんなので落ち込むかってんだ。」
「死んだら落ち込むも何もできやしないと思うよ。・・・・・・で、どうだった。」
イエンの目の前にいる彼は細い目をさらに細くした。
「・・・てめえも見てたろ。まさかああも簡単に不意打ちされるとは思ってもみなかった。というかそもそもあの坊主、あれだけの実力なら正面切っても戦えると思うんだが・・・・・・。」
「それは僕はわからないな。僕は魔術専門だから。ただあの逆月って言う人とはまた別の化物ってことはわかるよ。しかし・・・くくく。」
そして唐突に彼は肩を震わせ、大きな声で笑い始めた。
「あーはっはっはっは!で、どうんなだい!?あんな少年に負けた感想は!?傭兵ギルド≪黎明≫の三番隊隊長イエンさん!?」
「てめえ・・・・・・。」
「おやおや、事実を言ったまでだよ。いやぁ少年には感謝感謝だね。あんなのなかなか見ることができないよ。会話の途中でぼこられて一発で沈むとか・・・・・・ぷぷ。」
「おーしわかった。死にたいんだな?自殺志願なんだな?ちょっとそこに座れ今その首をねじ切ってやる。」
「まあ落ち着きなよ。それで彼または彼女はこちらに来てくれるかな?」
「あー勧誘する暇が無かった。言う前に坊主が仕掛けて来たからな。というかあの女の勧誘は俺じゃねえだろ?」
「そうなんだけどね。彼女を勧誘するのは君とは別だったんだけど・・・・・・。」
「だけど?」
「勧誘する前に岩に直撃していま治療の真っ最中だよ。」
「嫌だからな。あんなのと正面から話し合うなんざごめんだからな。」
「そうかい。まあ話によると女性にはとても親切らしいしうちの女団員にやらせるとしよう。」
「それがいい。・・・・・・しかしなんだな、今回はあまり実りが少ないな。」
「シード選手のほとんどは貴族や王族の息がかかった者だからね。ただあの二人はフリーだし今回は数より質ってことで。」
「そう言ったってよ。六番隊が全滅した今やっぱ数は必要だろうに。」
「あれは痛かった。エルフもあなどれないものだ。だがそのおかげで景品も豪華になったことだし彼等の犠牲も無駄じゃないよ。」
「作戦を聞いたときはへどがでそうだったがま、しょうがねえか。」
「儲け話には裏がつき物だよ。それにもう既に――」
彼はその細い目に決意を灯しながら言う。
「――優勝者は決まっていることだしね。」