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ノンストップギルド  作者: エイ
4/8

これが日常

俺達が遊んでいたVRゲーム≪アポカリプスオンライン≫ではまず始めに人間、エルフ、ドワーフ、獣人、亜人、と五つの種族のうち一つ選ぶことになる。

ここで大多数のプレイヤーが多くの時間を費やすこととなる。

人間ならどこの生まれか、といった基本的なことから獣人ではどの獣をモチーフにするか、そしてキャラの獣度合はどれほどかと、選んだ種族によってキャラクリエイトの方法がまったく違うのだ。

それに加え、ゲーム開始時に一つ職業が選べるが戦闘職や生産職、全部で一〇〇を超えるといった職業の中から選ぶこととなっているのでゲーム初心者にとっては厳しい仕様となっていた。

そしてこのゲームの肝はそんなプレイヤーが選んだ種族がプレイヤーの行動しだいで変化してゆくということだ。

例えば、エルフを選んだプレイヤーがPKしたりするとダークエルフに種族を変える権利を得たりする。

ならばダークエルフは全員PKプレイヤーかといえばそうでもない。

エルフで火属性の魔法を使い続けることでダークエルフになることもできるといった、結果は同じでも手段にいくつものパターンがあるのだ。

ここまでくると俺からしてみれば面倒なことこの上なかった。

目当ての種族になるため、いくつものクエストをこなし、その途中でPKされてクエストやり直しとなったときは心が折れかけた。

このゲームの鬼畜といわれる理由にキャラメイクの複雑さもあるが何よりもクエストの内容である。

例えば≪妖精のお願い≫。

このクエストは対象がレベル1~3のプレイヤーと一見、初心者のためのクエストに見えるがまったく持って違う。

内容はまず、妖精が今妖精の間で流行っている≪虹色の鉱石≫で作られたペンダントが欲しくとのこと。そして木々が生い茂る≪妖精の庭≫にあるからとってきてと頼まれる。

受諾すれば見本として≪虹色の鉱石≫を一つ渡され、そのまま≪妖精の庭≫に転送されるといった親切設計。

と、俺もそう思っていた頃がありました。

このフィールドはとてつもなく広く、木々が生い茂ってその上霧がつねに出ているせいで視界が悪い。

何よりこのフィールドからは死ぬか、五個そろえる、つまり後四個手に入れる以外抜け出せないのだ。

そして――――最初に気付いたのは誰だろうか?

ここにはモンスターがいない(・・・)

採取ポイントがいくつかあるが数も少なく、リポップまでかなり時間がかかる。

ではどうする?

そこで気付く、自分の他にもこのクエストを受けてここに来ているプレイヤーの存在に。

目の前にいるじゃないか(・・・・・・)

視界が悪い中突然背中に突き立てられる刃。

周りから聞こえる悲鳴と怒号。

そう、これは初心者同士が殺し奪い合う、なんとも殺伐とした別名≪世紀末クエスト≫である。

金銭で解決しようとしたプレイヤーもいたがそうもいかない。

≪虹色の鉱石≫は捨てることもましてやトレードもできないアイテムでしかもご丁寧に持ち主の死亡と同時に一〇〇%の確率でドロップするといった説明付き。

これを考え出した製作者はマジキチとしかいえない。

そういったPKを前提としたいくつもの鬼畜なクエストを耐え、努力してやっとの思いで最高レベルの五〇〇に達したとき俺は歓喜の声を上げたのは今では良い思い出だ。

つまりこのゲームはPKが他のゲームに比べてかなり当たり前だったりする。

だからと言ってPKをプレイヤー達が容認するかといえばそうでもない。

むしろかなり嫌われた。

ネット掲示板にはPKの被害者をできるだけ少なくするため、危険なクエストはすぐに書き込まれ――もちろんこれは誰かの尊い犠牲(・・・・)があってのことだが――皆が注意するようになった。

だがどこの時代でも善人いれば悪人ありといって、そんなゲーム内の事情も雰囲気も無視して己の欲望にしたがってPKだろうがなんだろうがやらかすプレイヤー達もいた。

その中でも特別、他の同レベルのプレイヤーより数倍強い、最後にはチーター呼ばわりされたプレイヤーがいた。

それが俺達である。

そもそもギルド結成のきっかけはギルド規模でしか受けることのできないクエストを受けるため、どのギルドからも爪弾きにされた者同士が臨時で作っただけのギルドなのだが皆ここは居心地がいいと居座ってくれている。

いやはや、ギルドマスターとして嬉しいこと限りない。

だけどだ。


「なんでほとんどの奴がマイホームに引き篭もってんだ・・・・・・・・・。」


協調性なさすぎだろう。

あれから二日、俺は自分のホームに戻って今ある状況を少しでも理解しようと丸一日かけて実験を繰り返した。

失敗もあったが色々なことが分かったから別に構わない。

だがこれでは皆に伝えることもできない。


「そりゃ、いつ話し合うかは決めてなかったけどさぁ。」


二日だよ、二日たってんだよ?

他のメンバーは何してんの?


「マイさんは絶賛配下の獣をモフモフ中で逆月さんはハーレムでウッハウッハで最強さんは逆月さんのホームで酒盛り、ムーさんは自身のホームにある倉庫に保管してた楽器の点検中らしいです。アキさんはわかりません。」


「アキさんならムーさんと同じく自分とこの倉庫を点検してる。・・・・・・あっちは武器だけど。」


武器というか兵器だけどな。


「そうしょぼくれたって何もありませんよ?みんな戦闘とかは別にして基本コミュ障ですから。マイさんとか今でもみんなを前に喋るとどもっちゃいますし、獣話は別ですけど。」


「あーそう言えばマイさんはあの後どうよ?色々あったけど暗い話ぶっちゃけてんのには変わりないし、そこんとこフォローとかどうよ?」


「逆月さんが大丈夫と言ってましたよ。あの人は性癖は別として女性に対するフォローは完璧ですから。なんでも両親云々は自分がまだ物心つくかつかないかの頃であまり実感がなく、本人はどうでもいいと思ってるらしいです。」


「それはどうも。シトさんはなんか収穫あった?」


「んー。NPCは僕等と同じく感情も知性もあるってことがわかったことぐらいです。ああ、後は僕がゲームの頃に使えたスキルに魔法は何の問題もなく使えることがわかりました。」


「シトさんみたいな真面目がいてくれとほんとよかった!」


あいつら基本自分優先なんだもん!

なぜにモフモフ!なぜにハーレム!なぜに酒盛り!

お前等この世界に順応し過ぎだろう!


「僕もホームに篭もりたいという欲求はありましたけどね。でもことがことですから皆のようにはできません。まあ、ただの小心者なだけなんですけど。」


「いやいや、ほんとシトさんには感謝だ。一応外に俺のところのNPCを偵察に行かせたんだがこの城を中心にして半径一kmの森には1~4、強くて7レベル相当のモンスターがいるってのがわかった。けどそれで安心するのは早い、最悪俺達以上に強い存在がいるかも知れんしな。戦闘要員のシトさんが戦えるってのは僥倖だよ。」


「それを聞くと照れますね。というかもう城の外のこと調べたんですか。にーさんはいつもながらそういうことに関しては抜け目がありませんね。」


「俺はそこまで戦闘に向いてるとはいえないからな。こういった所でがんばらんとな。」


「がんばりますねー。それとシトで結構ですよ?どう見たってにーさんのほうが年上ですし、ここはゲームの世界ではないんですから。」


「うん?そのほうがいいならそうするが?」


只埜使途(ただのしと)≫皆からシトさんと呼ばれているこの人は≪堕天使≫という稀有な種族になった人でその前の種族≪天使≫の飛行能力を失ったものの魔法も物理もばっちこいなオールラウンドな万能型である。

それに加え、職業に生産職がないものの、魔法も剣も使えるように職業のレベルを調整してるのでパーティー戦でもかなり役に立ってくれる。

≪アポカリプスオンライン≫は職業もレベル制でプレイヤー自身のレベルが一上がることに一つレベルアップできるまたは新たな職業を得ることができるといった仕様だ。

そして職業レベルの上限は五〇。

つまり単純計算でプレイヤーは職業レベルが五〇のを一〇もてると言うことになるが誰もがそうなるとは限りらない。

あるクエストで得ることができる≪限界突破≫というスキルは職業レベルが五〇に達した職業をさらにレベルアップできるようになる。

だがそれで新たなスキルを得ることはできず、ただその職業に関連するステータスの上がり幅が普段のレベルアップより多く上がるだけだ。

何人かはステータス底上げのために使うがそれでも複数の職業をもっているものだ。

たった一つの職業でレベル五〇〇に達したプレイヤーはムーさん以外誰もいないだろう。

そう、彼は『音楽に関連する職がこれしかないから』とかいって吟遊詩人(バード)をレベル五〇〇まで上げた猛者である。

彼の支援を受ければただのレベル一でもレベル三〇程度のモンスターを余裕で倒せるといえばそのすごさが分かるだろうか?

そしてその逆ともいえるのがシトさんである。

彼はレベル五〇の職業を四、あとはつまみ食いといったように仕上げていてそれこそどんな敵でも対応できるといった感じだ。


「でもこのギルド色々とがんばってくれた奴を突然呼び捨てるのも気が引けるし・・・・・・・・・うん、シト君でどうよ?」


「にーさんがそれで構わないのなら異論はありません。」


「そうか。なら、俺が分かったことを話そうか・・・・・・よっと。」


俺の右腕の肘から先が消える。

別に切られたとかそんなわけではない。


「これがこの世界のアイテムボックスだ。使い方は念じればどうにかなる。後は慣れだな、上手く行けばゲームのときより使えるかもしれん。」


「なんか見ていて不思議ですね。ですがありがたいです。アイテムボックスには食料も保管してましたし、これで食べ物の心配は当分なさそうです。」


「逆月さんのホームはロールプレイの一環として米栽培とかしてたから飢え死にはないだろうがな。それと注意点が一つ、魔法で作った食べ物は駄目だ。見た目はいいが味がまったくない。」


というかあれは食べ物ではない。

食料サンプルを有機物に変化させた何かだ。


「それは勘弁してもらいたいですね。僕だってどちらかと言えば味があるほうがいいですし。」


「それとNPCだ。さっきも言ってたようにNPCは知性もあって感情もある。そして何より命令の自由度の高さだ。以前は層を守護するだけの存在だったが今では料理や給仕、外の偵察などなんでもやってくれる。・・・・・・もちろん、その、シト君にはまだ早いかもしれんが、夜の生活の相手とか、そういった十八歳以上のみ対象といった行為もできると思う。」


「うわーそれを言わないでくださいよ。薄々そうかなーって思ってたのは事実ですけど知らないままでいたかったんですよ。こちとら大学生ですよ。性欲とか普通にありますから、なんでNPCに女性キャラとか作ったんだろう僕。自分好みのカスタマだからドストライクですよ、どうしろ?」


「あーそうだったな。『メイドこそ嗜好』だっけ?それはきついなぁ。」


あと大学生だったんだ。

顔から判断して高校生くらいと思ってたんだが。

俺も大学生だから歳はそんなに変わんないと思うがどうなのだろう?

そこら辺の歳とかについてもも皆に聞いてみるべきなのか迷うな。


「というかホームにもどったら彼女達がずっとついて来るんですよ。昨日なんか自分の煩悩を押さえ込むのに必死でしたしこれから僕がどうなるかわかりません。」


「そうなんだよ。NPC達はやたら忠誠心が高いだろ?ほんとあなたのために死ねるなら本望って感じで、見栄はるのが疲れるの何の。シト君の場合はもうやっちゃえば(・・・・・・)?歳も俺が思ってる以上だったし法律的には問題ないだろ?」


「勘弁してください。自分で作ったNPCが初とか僕は無理です。基本チキンなんですよ。そりゃ彼女いない暦=自分の年齢ですけど男としてそれはどうかと。それに言えば彼女達と僕の関係って父と娘みたいなもんですよ、そんなの無理です。」


「ならうちの所に来る?あそこなら野郎一人に残りはアンデットだからそういう心配はないと思う。」


「ありがとうございます。」


ほんと大変だな。

そして自分の幸運に内心安堵の息を漏らす。

俺だって初体験は自分の作ったNPCとはやりたくない。

作った者としてそれはどうよ?と思ったりするだろう。

俺の場合、城を作ったせいで自分のホームのあまり金をかけることができず、その層の守護者たるボス級モンスターを一体、あとは自動でモンスターが湧き出てくるように設定するのが精一杯だった。

そのおかげで俺のホーム女性キャラは一人もいない。


「でもにーさんの言うことが本当ならNPCがここに来る可能性もあるってことですよね?今はあまり彼女等と顔を合わせたくないんですが。」


「そんなに大変だったのか?でもそれなら安心しろ。ここはどうやらNPCの中では聖域と考えられているらしく、ここには命令なしでは入ってこない。」


この談話室はメンバー同士で話し合うだけの場所なので誰もNPCを配置しなかっただけなのだがNPCにとってはどうも違うらしい。

彼等の認識では我々を生み出した至高の存在である方々のみは入れる場所であり、聖域とかなんとか。

本人達からすればただのお喋りするためだけの空間なのだが。


「それは安心しました。ならここで過ごすというもの手ですね。寝具さえあればどうとにでもなりますし。」


「NPC達から至高の存在とか呼ばれている奴がそれでいいのか?」


NPCが見たら失望必須だと思うが。

とそのときに、頭の中で聞いたことのある音が鳴り響く。

ベルが鳴り響くようなこの音は確か、そう、ギルドメンバー間でのチャットの呼び出し音である。

しかし今はそれに応対するためのコンソールがない。

もしかしてと思いつつ、アイテムボックスを開いた感覚でギルドチャットと念じてみる。

すると何かと何かが繋がる、パイプを接合するような感覚があってそこから声が聞こえてくる。


『もしもし、聞こえますか?PKしていいですか?あと三秒で返事してくださいね。沈黙は了解とみなしますから三、二――』


『聞こえてる、聞こえてるからアキさん。』


『あれ?私ってことがばれましたか。というかこれ、口は動いてないのに声だけがでていますね。気持ち悪い。』


『そっちからかけてきて言いたい放題言ってるけどなんかあった?』


『む。なんか色々とスルーされているのは気のせいですかね?だとしたら私の新作の試し切りなどに使いますよ?』


『この状況でいつも通り武器を製作するその神経に拍手を送るが俺を標的にするな。この世界でのダメージには痛覚が伴うんだ。死ぬことはないかもしれないが痛いのは御免だ。で、どうした?』


『すぐに結論を求めるのは感心しませんね。余裕を持って行動しましょうよ。それでもギルドマスターですか?』


『最近のアキさんは俺をなじるのに手段を選ばなくなってきたな。でもこのまま話すのもまずい。目の前でシト君が俺を不思議そうな目で見てる。』


『それくらい自分でなんとかしてください。馬鹿ですか?』


『無理だから。むしろ初めてでここまでできたんだから賞賛ぐらいしてくれ。』


『おめでとうございます、あなたは馬鹿です。これでいいですか?無駄話はやめにしてさっさと本件に入りたいのですが?』


『・・・・・・うん。いいから。もういいから。どうぞその本件とやらを語ってください。』


この人自由にも程がある。


『なに。大したことではありません。』


そこで俺の頭に響いた声はなんでもないといった風に。


『森の中で人間とエルフが殺し合っているのですがどうしましょう?』


とんでもないことを口にした。

ストックがなくなって更新がおそくならなければいいなと思ったり。

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