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FILE5 警官

新たな人物が現れます。

勢いよく開いたドアの先には人影が‥

俺はその人影に向けてM37を構えた。


『おいッ!ちょっと待て!私は人間だ!』

その人影はそう叫び中に入ってくる。

その男は交番でよく見かけるような制服を着た警官だった。


『お前ら何やってるんだ!?勝手に拳銃なんて盗もうとしてるのか!?』

まだ30歳にもなってないであろう若い警官は大きな声で俺達に迫ってくる。


『だって仕方ないだろ!町がこんな風になってる今、自分達でどうにかしなきゃなんねぇんだから生き残る為にはこうでもしないとよ!!』


嶋村が珍しく警官に食って掛かる。


『大体、あんな状況になってるのに警察なんてどこにもいなかったじゃないの!何やってたの!?』

嶋村とかなえに逆に責められて警察は苦虫を噛み潰したような表情をした。


『すまない‥我々もこの死人が生き返る奇病が発生してから全員パトカーで出動したんだ‥発生地域はこの隣町だ。最近猟奇殺人が隣町であっただろ?

今朝、隣の警察署じゃ手が回らないという事で異例の出動がこっちに入った。

本官も同僚と共に隣町に向かったのだが‥到着した時には既に警官隊は全滅‥‥先に到着していた同僚達も次々に食われていったよ‥我々はゾンビ達に発砲したが死なないんだよ‥』


『ゾンビは頭部破壊しないと死なないからな‥』

俺はぼそりと呟いた。


『弾丸を撃ち尽くした我々は逃げるしかなかった。

もう一般人も全滅してたからな‥‥助ける事ができなくてすまなかった‥

しばらくしたらゾンビの集団もこの町にやってきて次々に一般人を‥』

警官は暗い表情で語る。


『じゃあ丁度俺達がファミレスで襲われた時だな‥』

嶋村が耳打ちをする。


『我々は生存している一般人を警察署に避難させバリケードを作り籠城している所に窓ガラスが割れる音が聞こえ、本官が調べに来た所に君達がいた訳だ。

もう警察という組織はほとんど機能していない。

生き残る為なら銃を渡そう。でも君達使えるのか?』

警官が俺達を見て言った。

『心配ご無用。俺は銃器の扱いなら独学で学んできたんで使いこなせますよ。』ニヤリと笑ってM37を見せる。


『危険なヤツだな‥事情聴取したいとこだがこんな状況じゃな。』

警官が苦笑している。


『あ、そうだ!自己紹介。俺は嶋村裕也です。』

嶋村がヒョコっとお辞儀をしながら言った。

『私は長田かなえです。大学に通ってます。』

会釈をしながらかなえも自己紹介をした。


『俺は川田頼人です。高校二年で、こっちの嶋村も同じです。』

警官に自己紹介をする。


『本官は北川利樹巡査であります!』

北川巡査は敬礼をして挨拶した。


全員の挨拶が終わった所で聞いてみたい事があったので聞いてみた。


『あの、聞きたいんですけど、さっき一般人を警察署に避難させたって言ってましたよね?

この警察署にはまだ生存者がいるんですか?』

俺は北川巡査に聞いてみた。


『あぁ、ここにいる警官は同僚の中谷巡査と笹川巡査部長の三人だけだ。後の警官はゾンビに殺されたか、我先に逃げ出してしまったよ。一般人は未成年が6名、成人が8名、老人を3名保護して、今は怪我の手当てや休養を二階でさせている。』


俺と嶋村は顔を見合わせた。お互い嫌な予感がしたのだろう。

『怪我人ってまさかゾンビに噛まれたんじゃ?‥‥』

誰かがゴクリと唾を飲み込む音がした。


『あぁ、ヤツらに噛み付かれた人達は弱ってたから優先的に巡査部長が応急手当てしてるよ。それがどうかしたのか?』


北川巡査はきょとんとした表情で聞き返してきた。


『おい!ヤバいぞ!北川巡査!ゾンビへの感染経路は噛み傷なんですよ!噛まれたら数時間後にはゾンビ化するんです!』


俺は一気にまくしたてた。『ならここも危ないんじゃないの!?』

かなえが不安気な表情でオドオドしている。


『そ、そんな‥感染経路が噛み傷なんて!早く巡査部長に伝えなければ!』

そう言うや刹那、二階から女の絶叫が響いた。


『な、なんだ!?‥』

その後に発砲音が二発聞こえた。

パァン!パァン!

その後にも男女それぞれの絶叫が聞こえる。

階段から誰か駆け足で降りてきた。

『おーい!北川ぁ!救助した一般人がいきなりヤツらみたいになっちまったぞ!巡査部長もヤラれた!』


中谷巡査と思われる警官がリボルバーのニューナンブを持って部屋に入ってきた。

『だ、誰だこいつら!?北川!こいつら何で銃持ってるんだ!?』

中谷巡査はパニックに陥っていた。


『中谷、落ち着け。さっき窓ガラスが割れた音は彼らが侵入したんだよ。

彼らはゾンビじゃない。銃は生き残る為に渡したんだ!そんな事より二階はどうなってるんだ!?』


北川巡査は中谷巡査の肩を掴んで言った。


『わかったよ。今はこんな事言ってる場合じゃないな。そう、巡査部長が怪我人に応急手当てしていたらいきなり数人がヤツらみたいに暴れ出して周りのヤツに噛み付いたんだ‥それを止めようと巡査部長が取り押さえたら首を噛まれて死んじまった!俺はそいつに向けて二発発砲したがやはり死なないんだよ!援護が必要だから北川を呼びにきた。早く助けないと!』


『そうか‥巡査部長が‥クッ…わかった。俺も二階へ行こう。』

北川巡査は腰のホルスターからニューナンブを取り出す。中谷巡査は.38スペシャル弾をリロードした。


『君達は待っていてくれ。我々が見てくる。20分経っても戻らなかったらここから脱出してくれ。』

二人は部屋を出ようとする。


『俺も行きます。ゾンビは頭部破壊をしないと死なない。俺達は鈍器や刃物で何体も殺してきた。警官より慣れてますよ。

拒否はさせません。』

睨み付けるように言ってM37を両手で持つ。


『わかったよ。川田君がいれば心強い、ついてきてくれ。』

北川巡査は頷きながら真剣な目で言った。


『じゃあ俺も行くぜ。』

嶋村が立ち上がろうとする。

『いや、嶋村はここで待機していてくれ。いざという時かなえを頼む。頼りにしてるぜ、相棒。』

嶋村の肩を軽く叩きニヤリと笑ってみせた。


『チッ、仕方ねぇな!早めに帰ってこねぇとおいてくからな!』

嶋村も笑顔で笑い返す。


『じゃ、行ってくる‥』

俺はそう言い残し部屋を出た。かなえの、

『気を付けて。無事に帰ってきてね‥』

という言葉を背負って‥‥

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