FILE40 脱出車両
毎度更新が遅くなって申し訳ございません。
一方その頃、川田は残り少ない弾を気にしつつ、研究所内を脱出するため駆け回っていた。
辺りにはゾンビが増えていき、埋め尽くされるのは時間の問題だった。
「そろそろまずいな…数が多くなってやがる。とにかく邪魔な奴だけ撃ち殺してそれ以外はスルーだ。」
川田は娯楽室へ向けて西通路を走る。
娯楽室前にはゾンビが数匹うろつき、邪魔をしていた。
「邪魔だ!どけ!」
ベネリM3から放たれた散弾がゾンビ達を吹き飛ばし、灰色のコンクリートに赤黒い染みを作る。
障害のなくなった娯楽室の通路を開ける為にドアノブを掴んだその時、背後を何気なく振り返った。
奴らは迫っていた。
川田がスルーしてきたゾンビ達は研究所内で唯一生き延びている川田の肉を求め、ゾロゾロと集団で鈍い歩みながらも着実に迫っていた。
嶋村達が脱出した今、狙うは川田のみであり、ゾンビ達にとっては至極当然の結果であった。
「まずいな。早くしないと。」
川田は滑り込むように娯楽室に入る。
唸り声はすぐ近くだ。
「ソファーだったよな。この下に脱出用の車両があるんのか。」
川田がソファーを動かそうと反対側に回り手をかける。
「うおっ!なんだ!」
ソファーの反対側に倒れていたゾンビがいきなり飛び掛かってきた。
川田はもつれるように倒れ、馬乗りに乗られていた。
ゾンビは川田を食おうと顔を近付けるが、川田が喉を掴んでいるので噛み付けないようだ。
「クソ…くたばれ!」
空いている右手で腰のホルスターからM37エアウエイトを取出し眉間を撃ち抜く。
返り血が顔にかかり、川田は服で必死に顔を拭った。
そうこうしている内に廊下の呻き声は更に近くなってきている。
「とりあえずこのソファーをバリケードにしよう。」
川田はソファーを押し、ドアに当ててバリケードにした。
ソファーがあった床には2つの窪んだ丸い穴があり、奥には赤いボタンがある。
「これを同時に押すんだったな。」
川田はボタンを同時に押す。すると、床から機械の作動音がし、隣にあった床が開いた。
手すりがある作業用の小さなエレベーターが現れる。
「よし、後は地下に行って車両に乗ればいいな。」
エレベーターに乗り込んだ川田はボタンを押し、地下へと下りていった。
エレベーターの動きは遅く、苛立ちを募らせる。
ようやく到着し、辺りを見回すと駅のプラットホームのような場所だった。
「ゾンビはいないな。まぁ入り口と出口が隠されてるから入ってこれないから当たり前か。」
ゾンビがいないことを確認した川田は目の前にある黒色のレール式車両に乗り込む。ほぼ電車と言っても過言ではないその車両は、少人数用なのか一両しかない。
内部は左右に座席が並び、ロッカーや簡易トイレ、非常食や着替え等がある。
ロッカーを開けると、中には黒の服がかけてある。
「まるでSWATみたいな服だな。とりあえず着替えたいし、戦闘で使いやすそうだからこれにするか。」
今までの戦闘で血塗れのボロボロになった服を脱ぎ、黒の戦闘服に着替える。
カーゴパンツのように、ポケットが大きく深く、使いやすいのは利点だ。
アサルトベストもあったのでそれも装備し、弾薬も移した。
続いて、ベネリM3とM37エアウエイトをリロードする。
ロッカー内には銃器もあった。
SIG P226が2丁。ご丁寧にP226用の大型ホルスターまでついている。
9ミリ弾もたんまりとある。
「ありがたい。このリボルバーだと5発しか使えないから助かる。ショットガン用の散弾が欲しかったけど仕方ないか。」
川田は足の両側にホルスターを装備し、P226をしまう。右腰にはM37エアウエイト。スリングで肩からベネリM3ショットガンを背負うという重装備だ。
「お?こんな物まで…」
丸いソフトボール状の金属の球体を取り出す。
黒みがかった緑のそれは側面にピンと銀の鉄の板がついている。
紛れもなく手榴弾だった。
数は一つしかない。
川田はアサルトベストに手榴弾をしまった。
「切り札として取っておこう。」
その後、川田はP226の予備マガジンに9mm弾を装填していく。
予備マガジンはアサルトベストに全て収まり、いつでもマガジン交換が可能になった。
「よし、準備は整った。発進しよう。」
川田は運転席と思わしき所へ向かうと、でかでかとした赤いボタンを押した。
鈍い金属音や機械音が始まり、作動したのを感じる。
「脱出用車両起動します。本車両は地下トンネルを走り、研究所から離れた安全な場所まで向かい停車します。到着までの時間は約1時間30分です。安全の為、速度は70Kmがリミットです。それでは発車致します。」
予め録音されていた音声が流れ、車両が動きだす。
「結構時間かかるな。速度もあまり早くないようだし。てゆうか、皆無事に脱出してるのか?安全な場所まで出ても合流しようがないよな。探すしかないか。とにかく1時間半は休めるな…少し疲れた…」
身心共に酷使してきた川田は座席に横になると泥のように眠りについた。
そろそろ週番ですが、今作品が完結したら続編を執筆しようと考えています。
よろしくお願いします。