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FILE3 狂気

『そういえば、警察署知らないって事は君達はここらへんの人達じゃないの?』かなえが歩きながら俺達に問い掛けた。

『あぁ。今日は電車で遊びに来たんだがとんだ災難にあっちまったよ。』

周囲を警戒しながら返事をし、路地を歩く。

路地には先程よりかはゾンビが少なくなり多少安全になったが油断はできない。

『なぁ、そろそろ着くんじゃないのか?』

嶋村が包丁片手に前方を目を細めて見ながら言う。

かなえと合流して出発してからすでに10分程歩いている。それにしても生存者をほとんど見かけないな‥

ゾンビになったのならともかく、ここらにはゾンビも少ない‥いったいどうなってるんだ?

一人で考えているとかなえが大きな声で言った。

『あったわ!ここが警察署よ!』

警察署までの距離は約70メートル。

そこまでにはゾンビが7体いる事が視認できる。

しかもかなえが大きな声を出したのでゾンビの何体かがこちらの存在に気付いてしまった。

『大きな声出すなよ!ゾンビに気付かれちまったじゃねぇか!』

嶋村が声を殺してかなえを非難した。

『ご、ごめん‥警察署見つけたからつい‥』

かなえが申し訳なさそうに謝る。


『俺も怒鳴ったりしてすまん‥とにかくアイツらどうにかしなきゃ。』

嶋村がそう言い、ゾンビ達に近づく。

ゾンビ達は接近する嶋村に空腹を満たそうと頼りない足取りで近づいていく。

『川田!さっさと片付けようぜ!』

言うやいなや、接近するゾンビの腹部に前蹴りを食らわせる。

転倒するゾンビの顔面を全体重をかけて踏み潰す。

ベジャァ!という音と共に熟れた果実を押し潰したような赤黒い血液と脳が吹き出る。

『クソ野郎が!どうやったらこんなに腐るんだよ!』嶋村が大声を出す。

それに呼応するかのように周囲のゾンビ達のうめき声も大きくなる。

接近してきたもう一体の顔面にに嶋村は鉄拳制裁を食らわせた。

ゾンビの脆い鼻骨はカンタンにへしゃげ血が吹き出す。嶋村の拳が赤く染まり、それを視認した嶋村の顔が嫌悪に歪んだ。


『おい、嶋村!おまえ落ち着けよ!』

接近してくるゾンビの膝に蹴りを食らわせバランスを崩し片膝を付いたところで顎を右足で蹴り上げる。

顎が上がり切ったゾンビに、左足で頬に回し蹴りを食らわせる。

蹴りのコンボを食らったゾンビは横にすっ飛び絶命した。

『こいつらうっとうしいんだよ!』

嶋村が右からやってきたゾンビの頭部に包丁を突き立てた。

崩れ落ちるゾンビを尻目に別のゾンビを包丁で攻撃する。

『だから冷静になれって!おまえいつか食われちまうぞ!』

ゾンビの頭部を棒で殴打する。

かなえは怯えた表情で事の行方を見ている。

しばらくしてゾンビを全滅させると嶋村はまだ興奮して動かなくなったゾンビを蹴っている。


『おい!落ち着け!!』

俺は嶋村の頬をビンタした。嶋村はハッっと我に帰り呆然とする。

『スマン川田‥なんだかゾンビに近づいたらよく自分が分からなくなってさ‥もう落ち着いたから大丈夫だ。ホントスマン。』


嶋村は近くにあった水道で血液の付着した手や顔を何度も洗っている。

『ホントさっきはビックリしたよ。いきなり嶋村君が変になったんだもん。やっぱりこんな状況だから気もおかしくなっちゃうのかな‥』

かなえが憂欝な顔をして嶋村を見つめる。

『それはあるだろうな。ゾンビが大勢で自分を襲ってくるんだからな‥知り合いだっているかもしれないんだし‥』

俺はクラスのヤツらの事を思い出した。

ここは学校がある地区からかなり遠くにあるから学校のヤツらは遊びに来ている以外、たぶん大丈夫だ。

でも安心はできない。

被害が大きくなればいづれ学校のある町にも被害が及ぶだろう‥そうなれば友人達もゾンビになるヤツがでてくるはずだ‥

それに、俺はゾンビになった友人を殺せるのか!?

安らかな眠りに就かせてやれるのか!?‥

ここにいる嶋村やかなえ‥ゾンビになった時に躊躇なくトドメを刺せるのか!?

俺はイヤな考えを頭から振り払い、警察署を眺める。

ここに俺達が生き残る為の武器があってくれ‥

この最悪の状況から抜け出せる為の武器を‥

暗黒の闇を照らす為の明かりを俺達に与えてくれ‥‥

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