FILE29 ひとときの安らぎ
ようやく陸上自衛隊の入隊試験が数日前に完全に完了しました。1ヶ月強更新せずにいてすいませんでした。これからペースも上がると思いますので、今後もよろしくお願いします。
闇の中、雷雨は激しさを増していた。雨に打たれながらもゾンビ達は意に介す事もなく新たな獲物を求めて歩き回っている。
しかし、獲物となる人間は既にほとんどいない。
空腹に耐えられず共食いするゾンビ達もいた。
町中にはびこった血は雨で流され、赤い水がそこらじゅうで溜まっていた。
そして朝日が昇る頃、ベネリM3を持った川田が眩しい朝日に目を細め、二階の見晴らしのいい部屋から外を眺めていた。
「やはり一夜明けて余計状況は悪化したか‥」
テーブルの上のマグカップを取り、先程作ったブラックコーヒーを飲む。
郵便局の周りには昨夜の騒ぎで集まったゾンビが10数体たむろしている。
「とにかくここをどう出るかが先決だな。」
そう考えた時、ドアが開き北川が入ってきた。
「おはよう川田君。一番早く起きたようだね。睡眠時間足りてないんじゃないのか?」
北川も食器棚からマグカップを取り、コーヒーメーカーでコーヒーを入れて飲んだ。
「いえ、自分いつもそんなに寝ないんで大丈夫です。一日不眠でも十分行動できますよ。」
コーヒーをすすり、川田はそう答えた。
「そうか、それならいいよ。しかし‥ここからどう脱出しようか‥」
北川も眼下のゾンビ達を見て顔を渋らせる。唸り声を上げてブラブラしているゾンビ達はこちらには気付いていない。
「今それを考えてるんですよ。」
川田はそう言って目を閉じた。
「突撃は危険性が高いから避けたいな。とりあえずみんなを起こしてこようか?」
北川はドアに向かおうとする。
「いや、眠れる時に眠らせて体力を回復させとかないと。打開策は俺が考えますよ。」
川田は少し笑うと、北川に背を向けコーヒーをすすった。
「了解。私は朝食の準備でもするよ。って言っても、この郵便局にまともな食材があるか分からないんだがね。」
北川も笑いながら階下へと向かっていった。
「さてと、どうするかね。」
川田は遠い目をして朝日を眺めた。
しばらくして、いい匂いが一階からしてきた。
ドアが開き、北川が現れた。その後ろからかなえがひょっこりと現れた。
「あれ?かなえ寝てたんじゃないのか?」
川田はかなえが持ってきた皿を見て腹が鳴った。
かなえと北川が持ってきた皿には、トーストと目玉焼きとウインナーが乗っていた。
「ちょうど起きた時に北川さんが朝ご飯作るって言ったから私も一緒に作ったんだ。これでも料理得意なんだよ?」
かなえは満面の笑みを浮かべながら朝食を差し出す。
「確かに美味いな。ありがとう。って言っても俺も料理は得意だけど。」
川田は目玉焼きとウインナーを頬張りながらかなえの料理を評価する。
「えー!?なんか料理苦手って感じするんだけど!」
かなえが訝しがりながら川田を意地悪そうに見て笑う。
「いや、だって俺の母さん調理師だし、親父も料理好きだから昔から教わったんだよ。」
川田がそう言うとかなえはは驚いていた。
「えー!?そんなの卑怯だよー!」
かなえは、頬を膨らませている。
「なんだよ卑怯って。」
卑屈そうに笑うと川田はトーストをかじった。
「騒がしいと思ったら、飯食ってたのかよ。皆ー!飯だぞー!」
嶋村が入り口から仮眠室へ呼び掛ける。
その後、全員が部屋に集まり朝食を取った。久しぶりの賑やかな時間を川田達は満喫していた。
「さて、そろそろ取り掛かるかな‥」
川田は先程思いついた打開策を全員に打ち明けようとした。