FILE28 プラン
なんとか郵便局で合流した一行たちは、準備と作戦を錬る事も兼ねて休息していた。
「君たちが待ってたのはこれで全部なんだな。俺は上田洋二。フリーのカメラマンをしてる。これからよろしくな。」
帽子を被った上田は人懐こそうな笑顔を見せた。
「川田頼人です。よろしく。」
「嶋村裕也、川田とタメです。よろしくお願いします。」
「西野涼です。」
「岡本じゃ。よろしくの。」
一通り挨拶が終わった後、これからどうするか決めるため、一行は二階の休憩室の机の周りに椅子を並べ、地図を広げていた。
川田はかなえに包帯を巻いてもらいながら地図を見ていた。
「今はここ、郵便局だ。街の中央に近い。」
北川巡査が郵便局の場所をボールペンで丸く円を書いた。
「そして、川田君たちの辿ったルートを地図上で見ると、東側はもう特に何もなく、街から出る手段もない…」
北川が川田が通ったルートも地図上に書き記す。
「ああ、事故起こして道塞いでる車が多数あった。」
「私たちが行ってた道も街から出るルートはなかったよね。あったとしてもゾンビだらけで通れないはず。」
かなえが包帯を結び終わり、川田地図を見ながら言った。
「確かに、大通りはゾンビの大群にうめつくされてる。二人と会う前に俺も確認した。」
上田が神妙そうな顔で地図を見る。
「だとしたら、脱出するには北か南を探すしかないんじゃな。」
岡本が地図を示して言う。
「そもそも連絡できないってのがおかしくないか?俺はまずそこをどうにかして、通信できるようにして救助求めた方がいいと思う。」
嶋村が意見を出すと、川田も同意した。
「俺も同感だ。多分これは妨害電波が流れてるんだと思う。おかしなヤツらもいるしな。それを潰せばなんとかなるだろう。」
川田がベネリM3を掲げる。
「でもさ、どこから妨害電波流れてるかなんて分かるの?」
さっきまで犬のイリャーナと遊んでいた西野が顔を上げて言った。
「そこなんだよなあ。」
川田が苦笑して眉をひそめた。
「いいや、俺にはどから妨害電波か出てるのかアテがあるぞ。」
ニヤリと笑った上田がみんなを見渡す。
「俺はフリーのカメラマンだ。だからネタには鼻が効くんだ。最近この街のとある研究所から不穏な噂が流れててな。
ほら、南の方にテクノロジーかなんかの研究所が数年前にできただろ?
あそこ、夜中になると警備付きのトラックが何台も移送されてるって噂だ。」
「ああ、確か細胞の研究をしてるとかの…」
北川が思い出したように呟いた。
「そう。それがこの事件と関係してるんじゃないかと踏んでな。それ以前に、変な噂が出てたから調査しようとしてたらコレだ。
こりゃいい写真撮るしかないと思ってな。しかも、あの研究所はいつも異常な程の警備員を配備していた。ヤツらの力ならこんな小さな街を封鎖する事も簡単だろうな。」
真面目な顔になって上田が語る。
「えー、じゃああの研究所‥名前なんだっけ?」
「徒使波バイオテクノロジー研究所だ。」
上田が付け足す。
「そう、徒使波バイオテクノロジー研究所がこのゾンビ騒動を引き起こしたって事!?」
かなえは驚いた表情で答えた。
「可能性は高い。ヤツら、人体実験をしてるって噂も聞いた事がある。」
上田が地図上の徒使波バイオテクノロジー研究所を指差す。
「じゃあこいつらが事の発端である可能性が高いな。多分妨害電波もここからだろう。俺はとりあえず妨害電波を潰して、外部に連絡を取れるようにした方がいいと思う。」
川田が真剣な表情で話した。
「じゃがそんな事せずに逃げた方がいいんじゃないか?」
岡本が言うと、西野がそれに答えた。
「ムリだよ。少なくとも北は行けない。僕は北から来たけど、かなりの数のゾンビがいたからね。妨害電波を潰す、逃げる、どちらにしても南に向かわないと。」
西野も川田たちに同意したようだ。
「じゃあとりあえず南下するのがこれからの行動だな。」
そう言った時、外で雷鳴がした。
「雨もキツくなってきたみたいね。今日は移動するなんてムリよ。」
かなえが雷に怯え、川田にしがみつく。
「そうじゃな。ワシも今日はちと疲れた。休みたいもんじゃ。」
岡本も疲労を訴えていた。
「じゃあとりあえず今日はここで休もう。徹夜用にこの郵便局には仮眠する場所もあるし、簡易だがシャワーも浴びれるようだ。さっき調べた時に見つけた。食料もある。」
全員からおおー!という歓声が漏れる。
「私早くシャワー浴びたい!!」
かなえは真っ先にシャワーを浴びにいってしまった。
それから、順に各員がシャワーを浴びたが、川田は最後にシャワーを浴びた。
脱衣場で服とタクティカルベストを脱ぎ、壁にベネリM3を立て掛ける。温かいシャワーを浴び、体中についた血や汗を洗い流す。
(今日は色々あったな‥一生分の恐怖と死を味わったようだ‥‥
とにかく今日は無事に生き延びれたが、明日も生き延びれるかというと保証はない‥
生き延びる‥なんとしても全員を生還させて生き延びるぞ‥‥)
川田はシャワーを浴びながら考えていた。
シャワーから出た後、各員が夜食を取り、仮眠室で雑魚寝をした。
外では激しくなった雨や雷鳴が響いていた。
九月中に、陸上自衛隊の入隊試験があるので更新頻度が遅れる可能性がありますがご了承ください。