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FILE24 新たな遭遇

川田がリロードし終わった後、三人は急いで車から出ようとした。

横転した車からは、上と下にドアがあった。そして、自己を見付け、中に生きた人間がいると察知したヤツらは、ジリジリとにじり寄ってきていた‥


『早く脱出しなければ。』


川田は先程ゾンビを殺した時に窓越しに発砲した為、落下してきたガラスの破片で額と頬を少し切ってしまい、血がジワジワと滲んでいた。


『OK。出るぞ。』


せえの!っとタイミングを合わせて川田が嶋村を押し上げる。

嶋村は車外に出ると周りを確認する。周りはゾロゾロとゾンビが集まってきている。


『おい川田ヤバいぞ!集まってきてる!』


嶋村は車内から取り出したウリカで接近するゾンビに発砲した。散弾が腹部にあたり幾つもの穴を開け、どす黒い血をボタボタと流した。


『焦るな、今行く。岡本さん、大丈夫ですか?』


川田はシートベルトを外している岡本に声をかけた。


『足を挫いたようだ。少し痛む‥』


岡本は顔をしかめて足首を押さえた。


『大丈夫ですか?何とか歩かないと危険だ。』


外では嶋村の発砲するショットガンの轟音が町に響いている。


『足手纏いになる‥わしを置いて先に行け。』


岡本は白髪の混じった頭をかきながら川田にそう言った。


『何映画みたいな事言ってんですか。そんなおいしい役柄あげませんよ。』


川田はニヤリと笑うとベネリM3を杖に立ち上がった。

『さぁ、俺達が時間稼ぐから早く車から出て。』


『川田君‥』


惚けたように岡本が言った。


『これ以上目の前で犠牲を作るのは御免だ‥もう、二度と‥』


ベネリM3を持つ川田の手がブルブルと震え、圧迫された指が白くなっていた。

勢いを付けて川田はワゴンから飛び出すと、なんとか防衛していた嶋村の横に並んで愛銃ベネリM3を発砲した。

嶋村は経験不足に焦りも加わり、完全に黙らせれたゾンビはそこまで多くなかった。上半身と下半身を真っ二つにされ、腸をゾロゾロと引き摺りながらも這ってくるゾンビもいた。


しかし、川田は慣れがあった。そして、天性の射撃術を持っているのであろう。正に一発必中。狙いも正確に目標の頭部に集弾している。

川田は自衛隊にでも入隊すれば立派なスナイパーになれるであろう。


『死に損いめが!さっさとくたばれ!』


瞬く間ににじり寄るゾンビどもを川田は黙らせる。

後ろから忍び寄って来ていた川田達と同じ年ごろであろう少年のゾンビに後ろ回し蹴りを顎へ突き上げるように叩き込むと、格闘ゲームよろしく派手に吹き飛んで動かなくなった。


『さて、岡本さん。周りはほとんど片付けました。行きましょうか。』


ようやく車外に出てきた岡本は近くに落ちていた手ごろな木の棒を杖に、二人の元へと来た。

『待たせてすまなかった。どうやらわしはカッコよく犠牲にはなれんようだ。』

苦笑しながら岡本は頭をかいた。


『そりゃそうだ。仲間は死んでほしくねぇもんな!』

嶋村が笑いながら岡本さんに握りこぶしに親指をあげた。


『そーゆー事。ま、とにかく大した事にならなくてよかったわ。』


川田も笑みを浮かべながらベネリM3にショットシェルを装填した。

その時、パラパラと雨が降ってきた。


『っと、急がねぇとヤバいな。大降りになられたらキツいぞ。』


三人は小雨が降る夜道を郵便局に向かって歩いていった。

すると、突然曲がり角から何かが走りだしてきた。


『!?』


三人は一斉にそれに向かってショットガンを構える。ジャキィッ!というポンピングの音が頼もしくこだました。


『う、撃つな!お願いだから撃たないで!!』


なんと現れたのは、小柄な少年だった。歳は川田と同じくらいだろうか。


『なんだよ人間か。脅かすな‥』


川田を始め、三人はショットガンを下ろした。


『昼間と似たような銃声が聞こえたから探してたんだ。昼間集落を爆発させたのは君達なのかい?』


少年は口早に話しだした。

『あぁそうだ。あそこ通ってきたのか。悲惨だったろうな。』


川田は唇の片方の端を上げてニヤリと笑う。


『ホントあそこは悲惨だったよ‥バラバラになった部分とか一杯あったし‥思い出しただけでも気持ち悪くなってきた。』


少年が顔をしかめて口に手をあてる。


『それでいい。それが普通の反応だ。』


川田はまたも不適に笑う。

するとまた物陰から何かが飛び出してきた。

川田は素早く反応して、ベネリM3を構えた。


『待って!こいつは一緒に行動してる犬だよ!』


黒のラブラドールレトリバーが尻尾を振って近づいてきた。


『んだよ、心臓に悪い。』

『ゴメンゴメン。警戒して出てこなかったんだよ。あっ!‥』


少年はある一方を見つめて目を見開く。


『健二!健二!なんでだよ健二ぃ!!』


少年は倒れているゾンビに向かって走っていくと、動かないゾンビを揺さ振った。ガクガクと首が揺れ、踊っているようにも見える。

『ん?まさか、知り合いか?‥』


川田の表情が固くなる。


『そうだよ!俺の親友だよ!健二!死ぬなよ!健二ぃぃぃぃぃ!!』


少年は号泣しながら泣き崩れるる。


三人は気まずい空気の中、黙っていた。


『なんで殺したんだよ!?なんで‥』


『お前の親友を殺したのはすまないと思う。だがな、そいつはもうお前の知っている健二とやらではなかったんだ。俺達を食おうとしたんだ。』


そう、川田の後ろから忍び寄って後ろ回し蹴りで吹き飛ばされたゾンビだ。『でも健二だ!』


『分かってる!だが死にたくなければ割り切れ!!』


川田が一喝すると少年は黙った。


『ゴメン‥そうだね‥君の言う通りだ。』


少年は健二の亡骸から手を放そうとした。

その時、健二の目がカッ!っと見開き、少年と目が合う。


『え?あれ?健二?‥』


少年が混乱した途端、健二は少年の首に向かって歯わ突き立てようと飛び掛かろうとする。




ドォォン!!

と言う轟音が響き、健二の頭部が木っ端微塵になって半分程消え去った。


『スラッグ弾だ。確実に死んだ。あの蹴りじゃダメだったらしいな。おい、お前。こいつの代わりにお前がこいつの分まで生きろ‥』

川田は真剣な表情で少年に言った。


少年は深く頷くと、健二の本当の亡骸に小さく、さよならと呟いた。


『分かった。俺は健二の分まで生きる!俺の名前は西野涼。君達の名前は?』


『岡本じゃ。年齢は秘密にしといてくれ。』


岡本が冗談を言いながら優しく話し掛ける。


『嶋村裕也。16歳だよ。ヨロシク。』


『川田。川田頼人だ。同じく16。ヨロシクな。』


『同い年だね。改めてヨロシク。』


涼はそう言うと、健二の亡骸からリストバンドを外し自分につけた。


『よし、じゃあそろそろ行こうか‥』


小雨の降る中、4人と1匹は暗闇の道を歩いていった。

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