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FILE23 事故

低いエンジン音が響きアスファルトの道へワゴン車が躍り出た。

前方にゾンビが三体程うろついていて、ライトに反応しこちらに向かってきた。


『岡本さん!止まらずに突っ切るんだ!』


川田の声に呼応し、岡本の運転するワゴン車はゾンビに突撃した。


『しっかり掴まってろよぉ!!』


岡本が速度を上げてゾンビに向けて疾走する。

あたった瞬間、肉が裂け、骨が砕ける感触が車越しに伝わり、フロントガラスに血が飛び散る。


『うわ!血で前が見えない!』


嶋村が血で真っ赤に染まったフロントガラスを指差して言う。


すかさず岡本がワイパーで血を流した。闇を切り裂くハイビームが進むべき道を照らしだした。


『どこに移動する?』


岡本が巧みなハンドル捌きでゾンビを避けながら道を進む。


『郵便局へ!そこで合流予定の仲間が二人いるんです。待っててくれるか分かりませんが、とにかく合流しなければ。』


川田はベネリM3の安全装置をかけると、前方の道を見ながら言った。

『分かった。郵便局はそこまで遠くない距離じゃ。多分何もなければ15分程度で到着する。』


岡本はタバコをポケットから取出し、車載されているシガーライターで着火した。薄い紫煙が車内に漂い、匂いが充満した。


『ゲホッ!ちょっ、副流煙‥体に悪いッスよ!』


嶋村が煙たそうにむせ、手で煙を払っている。


『おぉ、すまんな。今窓を開ける。じゃが体に悪いと言われてもやめれんわい。それに下手すれば近い内に食われて死ぬかもしれんのに不健康なんて気にならんわ!』


岡本は窓を開けながら豪快に笑った。それを見た川田は、言えてる。っと一言言って鼻で笑った。

『まだラジオも何かやらんのか?』


岡本がタバコ片手にラジオをいじるが、流れるのはノイズだけだった。


『やはりまだ‥外部と連絡も取れないか。』


川田は弱々しい光を放ち、ノイズだけを吐き出すラジオを見て呟いた。


しばらく三人を乗せたワゴン車はゾンビを避けながら走っていた。

岡本曰く、郵便局までは後数キロだそうだ。

『そうだ。郵便局で待ってる連中と合流したらどこから脱出するんじゃ?』


岡本が後ろを向いて川田達に質問する。


『あんまこの町の地理に詳しくないからまだそこま‥岡本さん前ッ!!!!』


話の途中で川田は大声を上げた。岡本が前方を見直すと、目の前にゾンビが6体固まって向かってきていた。あれだけの数に突っ込んだらこっちだって無傷では済まない。


『うおおおぉぉぉ!!!』


岡本は渾身の力でハンドルを横に切るが、曲がるのが急すぎた。

三人を乗せたワゴン車は、片輪が派手に浮き、固いアスファルトへと火花を散らして横転した…


そして、10メートル程滑った所でようやく停止した。その車に向って、どこからかゾロゾロとヤツらが集まってきていた…

『痛ぅ…横転したのか?クソ、頭が痛い‥嶋村、岡本さん生きてるか?』


川田は痛む頭を押さえて周りを見回す。どうやら二人は気を失っているようだ。


『早く起きるんだ!この状態はかなり危険だぞ!起きろ二人とも!』


川田は二人を叩いた。嶋村は横転した時に川田の方向に倒れたので、川田がクッションになって衝撃だけ受けて気絶していたらしい。川田は額をガラスで切ったらしく、額から真っ赤な血が流れ出ていた。


岡本はシートベルトで止められたが、同じく衝撃で気を失っている。

川田はより一層激しく叩くと二人は目を覚ました。

『痛ぇ‥事故っちまったのか。みんな大丈夫か?』


頭を押さえて嶋村が言う。岡本も唸りながら目を覚ました。


『すまん、事故っちまった。大丈夫か?すまない。』


岡本は謝りながら周りを見渡す。するといきなり、横転したドアの上からゾンビが現れた。


『うおぉぉ!!ヤベェ!』

川田はホルスターからM37エアウエイトを素早く取り出すとゾンビの眉間に発砲した。血と頭が弧を描きながらゾンビは頭から車の横へと落下していった。

ショットガンでは大きすぎて車内では扱えない。川田は咄嗟に判断してリボルバーに変えたのだった。


『おい嶋村。こいつは思ったよりヤバいかもしれん。早く態勢を立て直すぞ‥』


川田はシリンダーから薬筴を一発抜き取り、コンバットベストの中から38スペシャル弾を取ってリロードした。

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