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FILE21 夕暮れ

鈍い音がした時、少年は目を閉じとうとう自分も死ぬんだと感じていた。

しかし、一向に痛みがこないのを訝しがり目を開けると、イリャーナがゾンビを押し倒し、首に食らい付いていた。


イリャーナは大型の犬なので、バランス感覚の悪いゾンビ程度など体当たりで転倒させられた。


ゾンビは呻きながらただ首を噛まれている。イリャーナの口の周りは血で真っ赤になっていた。


『まさか‥助けてくれたのか。おい、イリャーナ今のうちに逃げよう!』


少年は尚も食らい付くイリャーナを引き剥がし、集落を駆け抜けた。


『どこ行けばいいか分かんないけど、とにかくしばらくは走ろう。』


額に流れ出る汗を拭いながら少年は犬と一緒に農道を走った。

(まだ春なのになんて暑い日なんだろう‥)

少年は状況とは似ても似つかない事を考えていた。


陽が傾き、少年達を夕焼けが照らしている。こんな状況じゃなければいい画になっていたであろう。


血塗られた町は夕焼けで真っ赤に、真っ赤に彩られていく‥

そこらじゅうで流れている血溜りが、さらに赤く、紅くなっていった‥

『もう陽が暮れる‥とりあえず隠れる場所を探さないと。確かもう少し先にアイツの家があったはず。無事だといいんだけど‥』


少年は迫り来る闇から逃げるように、目的の場所へ向けて走っていった。

周りにはゾンビが多数ふらついていたが、通りぎわに体当たりを食らわして逃げていた。


しかし、足がもつれ少年はゾンビの真前で派手に転んでしまった。

掌が破れ、血が滲んでピリピリとした痛みがする。


中学生ぐらいであろう、あどけない顔をした女の子のゾンビが口から血液を垂らしながら少年に近づいてくる。

首を噛まれていたらしく、破れた首からは様々な気管が飛び出していた。

呻き声をあげる度に、ドク、ドクっと血液が吹き出す。それが地面に落ちて赤い血溜りを作っていく。


『い、嫌だ!来るな!』


少年は倒れた時と同じ腹ばいの体勢で集落から拾ってきた手斧を振り回した。

肉が断ち切られる湿った音がして、女の子の脛が切られた。

白い足から赤い血と、断面から覗く白い骨の切断面や内部の組織が痛々しかった。脛をやられバランスを崩した少女のゾンビは倒れ、少年の上に倒れこんできた。


『や、やめろ!離れろ!』

少年は藻掻き、噛み付こうと掴まってくるゾンビの腹を蹴り飛ばした。

その衝撃で少女の首からボタボタと血が流れ、少年の顔や服に血の染みを作ってしまった。


『うわ!顔に血、血がついた!』


少年は必死に顔に付着した血液を拭っていると、立ち上がったゾンビがまたもや少年に近づいてきた。


『クソ‥こうなったら‥ゴメン!』


少年はゾンビに向かって手斧を振り下ろした。

肩にあたり、ゾンビの肩を骨ごと断ち切る。

血が吹き出し少年にかかると、少年は叫びながら少女のゾンビをメッタ切りにした。少女の肩、腹、首、胸、顔が手斧で破壊され、原型を無くしていく‥


バギャッ!っと嫌な音がして頭蓋が破壊されると、中から赤ピンクの脳が垂れ流れてきた。

そこでようやく少女は動かなくなった。


『ゴメン、ゴメン‥なんでこんな事しなきゃいけないんだよ!!』


少年は涙を流しながら、イリャーナと一緒に住宅街へと走っていった。


またどこかで銃声が聞こえた。前に聞いたのとはまた別の音だった。


『やっぱり生きてる人がまだいるんだ!アイツと合流してから探そう。』


少年は微かな希望を胸に、薄暗い住宅街へと入っていった‥

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