FILE2 救出
通りを曲がると若い女性が中年男のゾンビに腕を掴まれ噛み付かれそうになっていた。俺はそのままスピードを落とさず接近する。
足音に気付いたのか女性がゾンビを押し返そうとしながら振り向く。
走りながら棒を腰溜めに構える。
『くたばれ!!』
腰から一気にゾンビの頭部に突き出す。
スピードのついた棒は難なくゾンビの眼窩を貫く。
脳まで到達した棒は脳髄を裂き、ゾンビを絶命させた。ゾンビは掴んでいた腕を放し、力なく崩れ落ちた。『あ、ありがとう。あなたが助けてくれなかったら私は今頃食べられてたわ。』ヘナヘナと座りながら女性は言った。
その時、女性の鼻先にゾンビの血液が付着した棒が向けられた。
『え?何するの?‥』
女性は意味が分からず純粋に疑問を投げ掛けた。
『噛まれたか?‥‥』
俺は冷淡に言う。
『ゾンビに?』
女性が不安な表情で言う。その時嶋村がようやく到着した。
『大丈夫か!?ってオイ!何やってんだよ!?』
女性の鼻先に向けられた棒を視認すると嶋村が動揺する。
『噛まれてたら映画同様数時間後に発病する。おまえだってさっき見たろ?』
目線を嶋村に向けて言い放つ。
『確かにそうだけど‥その人噛まれたのか?』
嶋村が訝しげに女性を舐め回すように見る。
『それを今聞いてるとこだ。』
女性は交互に俺と嶋村を見ながら怯えている。
『で、噛まれたのか?』
女性に再度問う。
『噛まれてないわ。噛まれそうになった時にあなたに助けられたのよ。』
女性は必死に弁明する。
見た所、噛まれた傷などはないようだ。
『そうか。ならよかった。怖がらせてスマン。』
俺は棒を下ろして詫びた。『よかったぁ。殺されるのかと思ったわよ。何故そこまでしたの?』
女性は砕けた話し方で言う。先程の事はあまり気にしてないようだ。
『ゾンビに噛まれると、映画同様にゾンビ化するんだよ。俺達はそれをさっき見てきたからね。』
嶋村が真剣な表情で女性に教える。
『だからちょっと神経質になりすぎたよ。』
『気にしてないからいいよ。そういえば自己紹介してなかったわね。私は長田かなえ。19歳の大学一年よ。あなた達は?』
外見は童顔でまだ高校生にも見えるかなえは、ストレートの髪を肩下まで伸ばし、ミニスカートにピンクのカーディガンを着ている。『俺は嶋村裕也。高校二年だけどまだ16歳。ヨロシク。』
嶋村が笑いながら手を差し出す。かなえも握手し白い歯を見せて笑う。
『俺は川田頼人。同じく高校二年の16歳。ヨロシクな。』
同じように手を差し出し握手する。
『じゃあ今までのお互いの経緯を教え合わない?』
かなえの提案に一同が賛成し、双方の経緯を教えあう事にした。
『って、訳なんだよ。』
嶋村がカンタンな説明をかなえに教えた。『そうなんだぁ‥私はね、デパートで買い物してたんだけどいきなり店内が騒がしくなってパニックになったの‥何事かなって思ってたら近くにいたオバサン達が人に噛まれてたの。泣きながら逃げ回ってここに辿り着いて今の状況になったって感じかな。』
先程襲われた恐怖を思い出したのだろう。顔を歪めながらかなえは言った。
『それでこれからどうするかは決まってるの?』
かなえが髪を整えながら言った。
『プランは大方決まってるよ。最終目標はこの街からの脱出だけど、その前に警察署にでも寄って銃を拝借しようと思ってな。 そういえばかなえさんは警察署知ってるか?』
俺は棒に付着した血をコンクリートに擦り付けながら聞く。
『かなえでいいよ。そうねぇ、ここからだとすぐ近くにあるわよ。大体歩いて15分ぐらいかしら。』
かなえが腕を組んで考える仕草をして答える。
『じゃあ今からでも出発しようぜ。てか俺銃なんて撃ち方わかんねぇぞ?』
嶋村が肩を竦めて言う。
『大丈夫だ。俺が全て知ってるから懇切丁寧に教えてやるよ。』
ニヤリと笑いながら俺は嶋村に答える。
『ったくホントに危険人物だなぁ。』
嶋村も皮肉っぽく笑う。
『じゃあ今から警察署に出発ね。私も銃なんて知らないから教えてね。』
三人は警察署へ向けて歩きだした。
かなえは近くに転がっていた鉄パイプを手に取り一度振って感度を確かめる。
この後、さらなる恐怖が襲うとは知らずに三人は確実に警察署へと近づいていった‥‥
これが自分の携帯小説初の作品です。未熟ですが楽しんでいただければ幸いです。