FILE18 分析
ベネリM3の銃口の先には、店の入り口に迫ったゾンビの集団がいた。
数をざっと数えても、10体以上は軽くいるだろう。
『いつの間にコイツら集まってきたんだ!?』
慌てて嶋村もウリカをゾンビに向ける。
店とゾンビの距離は50メートルもない。この銃砲店にヤツらが押し寄せたらひとたまりもないだろう。
『二人とも手伝え!シャッターを閉めるぞ!!』
奥から現れた岡本が急いで入り口に向かう。
二人もそれに倣って入り口へと移動した。
『クソ!邪魔だ!!』
川田は入り口に辿り着いた一体をベネリM3で射殺する。轟音が響き、ゾンビの頭部が吹き飛ばされる。
続け様に川田が周辺のゾンビに発砲した。
しかし、いくら撃ってもキリがない。
『もういい川田!早く店内に戻れ!』
嶋村が背後から援護してくれている。川田はその隙に店内へと戻った。
続いて嶋村も戻り、シャッターを完全に下ろす。
『クッソ!あんなに集まってやがる。これからどうすんだ?』
『裏口があるからそこから抜けれるが、ひとまずほとぼりが冷めるまで待つとしよう。』
岡本が嶋村にそう言い、椅子に腰を下ろした。
しばらく店内で休息を兼ねて様子を伺っていたが、シャッターを叩く音や唸り声は止みそうになかった‥
『あーもう、結局出られねぇじゃん!』
嶋村が愚痴を漏らして携帯を開ける。
相変わらず圏外だった。
時刻は6時を過ぎ、闇が迫っている。
『暗い中移動するのは危険だな。ヤツらも視界が悪くなるが、誰が誰だかわからなくなる‥』
川田がブツブツと独り言を発していると、岡本が相づちを打った。
『そうだ。夜間は出歩かん方がいいだろう。発砲した時のマズルフラッシュも目立つからな。』
三人は協議した結果、今夜は岡本銃砲店で一夜を明かす事にした。
夜は、交替で見張りを立てる事にした。
と言っても、出入口は一階だけなので一人が一階で待機し、後の二人は二階で仮眠を取る事にした。
相変わらず、外ではゾンビ達が呻いているようだ。
時折シャッターを引っ掻く音も聞こえる。
『ウルサいヤツらじゃのう‥ちっとは黙れんのか?』
岡本は上下二連を抱え、今はバリケードとなっているシャッターをボーっと見て呟く。
所変わってある施設の中、白衣を着た男が手術台に縛られたゾンビを観察している。
ゾンビは大した知恵を持たず、極めて原始的な行動しか起こさない。
第一に食欲を満たす為、常に新鮮な人肉を求める。
いくら食そうがゾンビの食欲は満たされないが‥
物の使用もサル並みである。しかし、ゾンビ化すると極端に腕力が強くなる。
その点では野性が戻ったとでも言うのだろうか?‥
これまでゾンビと接触したが川田達はなんとか退けてきた。だが大部分は川田が日頃鍛えていて、年令の割に筋骨隆々だったから抵抗できたのだ。
次に、ゾンビ達はどうやって獲物を選定するかだが、視力は極端に低くなる。
視力が悪い人間ならわかるだろうが、形や輪郭は認識できるのだが詳細な形状まではぼやけてよく見えていない。
それと、聴力は変わらず機能する。音には敏感に反応するのだ。
次に選定するに至って決定的な器官が嗅覚だ。
ゾンビ化すると腕力同様嗅覚が発達する。
視力が使えないとなると、嗅覚で新鮮な肉か死肉か判断する。
ただ、発達といえども犬レベルまで急激に発達する訳ではなく、漂ってくる臭いに敏感になる。
噛まれると否応無く数時間後、重傷ならば数秒で発症し、ゾンビ化する。
発生源はいまだに分かっていない‥