表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/40

FILE10 生存者と推論

よかったら評価していただけると嬉しいです。

北川巡査はかなえと供に来ていた道を戻り、曲がり角を曲がった先を進んでいた。今までに通った道だったので、とりあえず今まではゾンビに遭遇していない。

『これからどうしよう?川田君と嶋村君が心配だなぁ‥この街には詳しくないみたいだし‥』


かなえは近くにあった小石を蹴りながら歩いている。

『彼らならたぶん大丈夫さ。特に川田君の戦闘技術や知識には目を見張る物がある。私よりも頼りになるだろうさ。』


苦笑しながら北川巡査はかなえを見る。


『だよね!川田君って何であんなに詳しいんだろ?

趣味だからかなぁ?私はあまり得意な事とかないから羨ましいよ。』


かなえは言い終えるとおもいっきり小石を蹴飛ばした。小石は弧を描き、乾いた音を立て地面に落ちる。


『ほらね、あんま飛ばないよ。私ができる事って言ったら看護ぐらいかなぁ。一応医学部だし。まだ修業の身だけどね。』


かなえは伏し目がちに喋っている。


『怪我や病気を治そうと努力する事は大変な事だよ。頭もいいようだし、人を助けるってのは優しい心があるんだと思うよ。自信持ちなよ。』


北川巡査は優しくかなえに声をかけて励ます。


『ありがとう。なんか私、この状況になってからスゴい足手纏いだなって思っちゃってさ‥川田君や嶋村君や北川さんが必死になって戦ってるのに、私は何もできなくて‥』


『女の子だから仕方ないよ。それに彼らは心構えというか、肝っ玉が据わっているというか‥とにかく生き残る為に躊躇はしないよう決心してるんだと思う…』

『だよね。川田君達もガンバってるんだから私も私ができる事をガンバるよ。』

かなえは軟らかな笑顔を北川巡査に見せた。


『それでいいんだよ。かなえさんはかなえさんのできる事をする。彼らは彼らでかなり辛い想いをしてるんだろうし‥私達が彼らをサポートしなきゃな。』



それから北川巡査とかなえはしばらく住宅街を歩いていた。

すると遠くで乾いた銃声が響いたのが耳に入る。


『あの銃声は川田君と嶋村君達だ!』


北川巡査の額に汗が流れている。

遠くの状況を少しでも知ろうと聞き耳を立てて険しい表情をしていた。


『大丈夫かな?‥あ、また聞こえた!ゾンビが何体もいるのかしら?…』


実際、川田と嶋村は弓矢を使う男(というよりも化け物)と戦闘をしていたのだが、かなえや北川巡査は知る由もない。


『嶋村君達ならたぶん大丈夫だろう。私達は彼らを信じて先に進むしかない。』


北川巡査はときたま遠くから響き渡る銃声を背に歩きだした。


北川巡査の心中では、一刻も早く川田と嶋村の援護に向かいたいのだがそれを押し殺して先に進んだ。かなえは何発も響く銃声に一回一回反応していて表情は不安気である‥

それから10分もしない内に銃声は止み、住宅街を歩く自分達だけの足音しか響かなくなった‥


『銃声が止んだわ‥川田君達は大丈夫かしら?』


かなえは北川巡査に問い掛ける。


北川巡査は警官の帽子を被り直してかなえに言った。

『あぁ、彼らなら心配ないだろう。それよりもこっちが川田君と嶋村君を待たせてはいけない。先を急ごうか。』


北川巡査は足早に先を進む。


『ちょっと待ってよ。早いって。』


かなえが小走りで走ってくる。その時、横のお世辞にも大きいとは言えない民家から中年の男が慌てて出てきた。


『あんたら!ちょうどよかった。俺も助けてくれよお巡りさん!』


中年の男は早口で喋っている。どうやら少ない生存者のようだ。


『生存者ですか!よかった。しかし、警察という組織は機能していないのが現状なんですよ‥我々もこの街から脱出を試みている最中なんです。貴方も一緒に逃げましょう。』


北川巡査が仕事の顔になる。やはり現役警察官だ。

しっかりしている。


『そうなのか‥でもここから逃げ出すにしてもどうやって?』


中年男が不安そうな声を洩らす。

『とにかくこの街から行ける所まで徒歩で移動します。そこらじゅうに事故車や放置された車があってまともに車に乗って移動なんてできませんからね‥』


北川巡査は男に説明をした。ゾンビの発生で人々がパニックになり事故や放置が相次いでいたらしい。


『そうか。車は使えないのか‥仕方ないな。あ、自己紹介が遅れたが俺は上田洋二という者だ。仕事はカメラマンをやってる。これからヨロシク。』


三人は軽く自己紹介をして今までの経緯、これからの事を話し始めた。『そうか、じゃあ君達の他にあと二人一緒に行動していた高校生がいたのか。それでこの近くのT字路にトラックが暴走してきて分断されたと‥さっき聞こえた大きな音はトラックが爆発する音だったのか。』


上田は頷きながらかなえ達から聞いた事をまとめた。

『そういう事です。私達はこれから先にある郵便局で落ち合う事になってるんです。』


かなえが上田に向かって話し掛ける。


『郵便局か。それならここからそう遠くはないからな。俺も一緒に行こう。それよりちょっと確認してほしい事があるんだが‥』


上田は、ちょっとこっちへ来てくれと言うと、二人に手招きをして自宅の玄関を開ける。

ガラガラと古びた金属音が静かな住宅街に響く。


『確認してほしい事って何ですか?』


北川巡査が聞きながら玄関に入り、かなえもその後に続く。内装は和風で古くさい雰囲気がしている。

『ちょっと見てくれ。』


上田はそう言うと、家庭にある一般的な電話のダイヤルを押し始めた。


『今110番に電話をかけた。スピーカーにするから聞いてくれ。』


電話機からは、

「ブツッ、ブツ‥ザーザー‥」

という俗に言う砂嵐状態だった。

『繋がらないの?』


かなえが不思議そうに電話機を見て言う。


『そうだ。それだけじゃない。119番なども繋がらないし、友人に電話をかけてみたが、それさえも繋がらない‥警察や病院などは、この状況だからまだ生存者達が一斉にかけてるってのならわかるんだが、一般の家に繋がらないなんておかしいだろ?』


受話器を下ろして諦めたように上田が言った。


『じゃあ私の携帯でやってみるわ。』


かなえがポケットからピンクの携帯電話を取り出して電話をかける。


『無駄だよ‥俺も最初試したけどどこにも連絡は取れなかった‥それにメールもムリだ。しばらくしてから圏外にまでなっちまったしな。』


上田が首を横に振ってかなえにムリだと伝える。


『じゃあ私の無線機なら大丈夫なハズだ。一般の回線とは違うからな。川田君達に連絡してみよう。』


北川巡査は腰に付けた無線機から川田に連絡を取ろうとする。

しかし、無線機からは砂嵐の精神を逆撫でする雑音しか発されなかった。

『何故だ?一般回線じゃないのにどうして?』

北川が驚きの表情を浮かべ無線機を何度も操作する。

『ここら一帯‥規模はわからんが電話回線や無線などは使えないらしい。どうしてそうなっちまったんだかそれもわからん。』


上田が椅子に腰掛けて困ったように言った。

かなえが何かをブツブツと喋っている。


『電話自体に破損は見られない‥それに携帯は圏外‥一般回線とは違う無線も使用不可‥普通じゃこんな事ならないわね‥

という事は‥規模は不明だけどここら一帯に何らかの障害がある訳ね。

家庭電話、携帯電話、無線機‥この三つで共通していて重要な事は?‥』


『お、おい。さっきから何ブツブツ言ってるんだ?』

北川が苦笑いしながらかなえの肩を叩く。


『共通していて重要な事‥それは電波ね。その電波が使えない状態だという事は電波を発生させる装置自体が使用不可の状態、もしくは何らかの妨害を受けてるんだわ。上田さん、この街で電波塔ってどこにありますか?』


『お嬢ちゃんなんか考えたらしいけどなんか分かったのかい?電波塔ならこの街の長也川の近くにあるよ。なんでも数年前にこの街の主要な電波塔を大々的に集めてそこに一挙集中させるって計画があって、分散していた電波塔が長也川付近に集められて電波集合塔になったんだよ。というよりも電波研究所みたいになっちまってるけどな。』


かなえは上田の話を聞いてうーん、と唸りながら人差し指で額をトントンと叩いている。

『たぶんそこだわ。その集められた電波塔に妨害電波か、そのような類の物が使われてるんだと思う。ゾンビの襲撃等の理由で、電波塔の機器が破壊されたってのもあるかもしれないけど、私は人為的に妨害電波発生装置みたいな機械を使って外部と接触させないようにしてるんだと思う。』

『スゴいな‥そこまで考える事ができるなんて。かなえさんは探偵にでもなった方がいいんじゃないか?それはともかく、無線機が使えない事からたぶんその考えで当たってると思う。』

北川がかなえの推論に同意した。


『妨害電波か‥でもいったい誰がそんな事を?何の理由で?』


上田が腕組みをしながらかなえに質問する。


『うーん‥それは私にもわかんないなぁ。理由に妨害電波を発生させた人物か。とにかくそんな事より先に進もうよ。妨害電波の事は後々考えるよ。休憩もできた事だしね。』


かなえが靴を履いて玄関から出ようとする。


『お嬢ちゃん、名推理にプレゼントだ。って言っても缶コーヒーだけどね。ホラ、お巡りさんもどうぞ。』

かなえと北川はお礼を言うと缶コーヒーをもらい、蓋を開けて飲んだ。

飲み物なんてゾンビが街を襲撃してから何も飲んでなかったし、食物も口にしていなかった。

というよりも凄惨な現場を幾度も目撃して、そのせいで喉を通らなかった。

(でも私は生き残る。ここからみんなで脱出してみせる。その為にも少しでも栄養つけて体力上げなきゃね。)


かなえは心の中でそう思い、ほろ苦いコーヒーを飲み干した。体中に水分が染み渡ったような気がした。


『よし、じゃあそろそろ行こうか。』


北川も靴を履いて玄関へ向かう。


『俺もさっさとこの街から逃げよう。実家に泊まりに行った妻と娘に会いたいよ。妻と娘は泊まりに行って正解だったよ。』


『奥さんと娘さんはこの街を出てたんですか。不幸中の幸いですね。じゃあ娘さん達に会う為にも一緒に脱出しましょうね!』


かなえがニコッっと笑って上田に親指を立てた。


ありがとうと言いながら、上田はポケットに妻と幼い娘と自分が写った写真を入れた。そして、机の上にあったカメラを取って靴を履いた。

そろそろ夕方だ。だが夏も近く陽は長い。時計は16時30分を回った所だ。


上田家の庭を歩いて、北川が住宅街の道路に出る。

その後ろにはかなえと上田がいる。そして北川は何かの気配を感じ道路に出た瞬間にホルスターからニューナンブを取り出して、気配に向かって構えた。

新たな生存者、上田洋二が現れました。なんだか登場キャラが少ないですよね(^o^;これからはほどよくキャラを登場させたいと思います。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ