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義理チョコキングと頑張り屋さん ~心優しい二人が寄り添っていく、幸せに包まれた半同棲生活~  作者: バランスやじろべー
第三章前編 恋の自覚

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第96話 作戦会議

 蓮から桜季への想いを聞きだした翌日の放課後、凜はエクラ・デュ・マタンを訪れていた。

 目的はアルバイト、ではなく目の前にいる友人、美鈴。

 もちろんデート、ではなく意見交換である。


「へー。二人共ここでアルバイトしてるんだ」


 興味深そうに店内を見回す美鈴。

 壁に飾ってある絵や調度品、視線が次々と動く。


「まあ、とにかく注文しようぜ」


「うんっ!」


 とりあえず注文を決め、商品に受け取り席に着く。


「それじゃあ」


「二人がついに自覚したことを祝って」


 そして二人揃ってアイスティーの入ったグラスを軽く掲げた。


「「乾杯!!」」


 グラスの触れ合う音が鳴り、アイスティーを一口。

 暑い外を歩いた後の体に冷たさが染み渡る。

 そしてグラスを置いて美鈴と向かい合うと、美鈴はニコニコとした表情でこちらを見ていた。

 おそらくは自分も同じ顔をしているだろう。


「やったね凜さん!」


「おう!」


 先日、蓮が桜季への好意を自覚したことを聞きだしたのだが、美鈴によると桜季も蓮への好意を自覚したとのこと。

 そんなわけで、本日はエクラ・デュ・マタンでこれからについての打ち合わせだ。

 だがひとまずは、二人がお互いに好意を自覚したことを素直に喜ぶ。


「いやー、長かったなあ」


 感慨深げに呟きながら美鈴がケーキを一口。

 凜もケーキを食べながら、美鈴の言葉に頷く。


「確かになあ」


「ホント、ヤキモキしてたなあ。……このケーキ、美味しっ!」


 美味しそうにケーキに舌鼓を打つ美鈴。

 その表情が笑顔なのは、あの二人が恋を自覚した為か、それともケーキの美味しさか。

 おそらく両方なのだろう。



 ✿



「でさ」


 ケーキを食べ終えアイスティーを一口、美鈴はフォークを置き、少しだけ身を乗り出した。

 凜もフォークを置いて美鈴の言葉を待つ。


「これからどうする?」


「どうするって?」


「いや、だって……二人とも自覚したんだよ? あと一押しじゃん!」


 美鈴は真剣な目でこちらを見てくる。


「今までみたいに何も知らないってか気付いてない状態とは違うっしょ?」


「まあな」


 凜はアイスティーを一口飲む。

 確かに二人が恋心を自覚した以上、ここから先は今までとは少し変わるだろう。

 蓮は自分の気持ちを理解した。

 桜季もまた、蓮への想いを認めた。

 ならば自分達が背中を押せば、あの二人の関係がもっと進むかもしれない。


「なら、やっぱり何か仕掛けた方がいいんじゃない?」


 美鈴が楽しそうに身を乗り出す。


「なんかアイデアあるのか?」


「二人きりになる機会を増やすとか。ほら、今までだって一緒に料理したり、買い物したりしてたじゃん」


「それはそうだけどな……」


 凜は少し考える。

 確かに二人が一緒に過ごす時間を増やすのは悪くない。

 むしろ今の二人なら、そういう何気ない時間の中で少しずつ距離を縮めていく方が自然だろう。

 しかし、現状を考えると――


「ただ、あんまり露骨なのはやめた方がいいと思う」


「なんで?」


「現状、あの二人って放課後は常に一緒にいるようなもんだろ? だからさ、そこで無理するとむしろ不自然になりそうってか」


「あー……」


 美鈴が納得したように頷く。

 すでに放課後は桜季の妹である琴乃を含めた三人で過ごしているのだ。

 であれば、更なる効果はあまり望めないかもしれない。


「どっちかっていうと、ちょっと特別感出させるとか?」


「特別感?」


「デートとか」


「デート!」


 凜のアイデアに美鈴が顔を輝かせる。

 そしてうんうんと何度も首を縦に振った。


「それ賛成! もうすぐ夏休みも始まるし!」


「この前も夏休みに一緒に遊ぼうって話したしな」


「うん! 海とかプールでサッキーの水着姿で蓮さんを悩殺しちゃうとか!」


「悩殺かどうかはともかく、自然に意識させるきっかけを作る方がいいよな」


 そんなことを話していると、アンティークベルの音が耳に届く。

 入口の方に目を向ければ、ちょうど琴乃が入って来た所だった。


「あ、こっちこっちーっ!」


 美鈴が大きく手を振って琴乃にアピール。

 琴乃もすぐにこちらに気付き、注文を終えてテーブルへとやって来た。


「美鈴さん、凜さん! お待たせしました!」


 私服姿の琴乃が元気良く挨拶して席に着く。

 琴乃とは前期中間試験の勉強の為、蓮の部屋を訪れた時に顔を合わせ、連絡先を交換。

 それ以来、何度かメッセージのやり取りを行っている。


「琴乃ちゃん、こうして会うのは久しぶりだねー」


「はい。メッセージのやり取りとかは多かったんですけどね」


 美鈴と琴乃が笑いながら言葉を交わす。


「それで、お姉とお兄さん、進展あったんですよね!?」


「うん! サッキーも蓮さんも、二人共相手のことが好きだってさ!」


「やった! なんかこの前から二人共意識してるっぽかったんですよねー!」


 琴乃の言葉に、凜と美鈴はやっぱりなと頷く。

 学校ですらそうなのだから、プライベートではそれ以上に隠しきれていないだろう。


「それで、背中を押してやろうって話になってさ」


「そうそう。もうすぐ夏休みだしね!」


「なるほど!」


 琴乃はアイスティーを飲み、少し首を傾げた。


「でも、この前なんか、あたしがいる目の前でお姉がお兄さんに乗ってマッサージしてましたよ」


「えっ? ちょっとそれ詳しく!」


「ストップ。話が逸れる」


 琴乃の言葉に美鈴が目を輝かせるが、凜は落ち着いて制止する。

 気にならないと言えば嘘になるが、それは今の話が一段落してからでも良いだろう。

 とりあえず今まで二人で話していた内容を琴乃にも伝える。

 話を終えると、琴乃は片手を上げて口を開く。


「それじゃあ、ダブルデートなんてどうですか?」


「「ダブルデート?」」


 琴乃の提案に、凜と美鈴の声がハモった。

 しかし琴乃はうんうんと頷いて説明を始める。


「ほら、まずはお姉とお兄さん、それに美鈴さんと凜さんの四人で遊びに行くってことにするんですよ! 例えば遊園地とかなら乗り物によっては二人ずつに別れたり出来ますし!」


「なるほどな。買い物とかは置いといて、二人でどこかに出掛けさせるよりはハードルが低いか」


「うん。ちょっとずつってことだね!」


「はい!」


 そう三人で頷き笑い合う。

 大切な二人が、恋人同士になるように。

 その未来に向けて、背中を押してあげようと決意する。

「じゃあ、まずは夏休みだな」

「うん!」

「はい!」

 三人の声が重なる。

 蓮と桜季が、いつか自分たちの口から想いを伝え合うその日まで。

 自分たちは、その背中を少しだけ押してやればいい。



 ✿



「とまあ、話は一段落したところで――」


 そう言ってニヤリと笑う美鈴。


「琴乃ちゃん、さっきのマッサージの話、聞かせて?」


「一応、今日の目的は二人の作戦会議だったんだけどな」


 凜は呆れたように美鈴を見る。


「もちろん覚えてるって!」


 美鈴は笑いながら答える。


「ちゃんと二人がもっと仲良くなれるようにするんでしょ?」


「そうですよ。お姉とお兄さんには、ちゃんと幸せになってもらわないと」


「そうそう。だからこそさ、二人の現状がどんな感じか、アタシ達も知ってた方がいいじゃん?」


 うんうんと頷く美鈴。

 とはいえ全くの嘘ではないのだろうが、自分が聞きたいであろうことは想像がつく。


「凜さんは聞かないでおく?」


「まさか。そんな面白そうな話、聞かないわけないだろ」


「やっぱり聞くんじゃん!」


 美鈴が楽しそうに笑う。

 それはそれ、これはこれ。

 凜としても二人が何をしていたのかは気になるところだ。

 どうやら今日の会議はまだ終わりそうになかった。

すみません

体調不良の為、おそらく水曜日は更新できません

ご了承ください

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