第78話② 大会出場への打診
本日(2026.08.07 12:00)に第78話を投稿したのですが、コピペミスにより後半部分が抜け落ちていました。
よって、後半部分を第78話②として投稿しています。
申し訳ありませんでした。
他のグループも完成したので皆で感想を言い合っていると、家庭科室の扉が勢いよく開かれる。
そこから姿を現したのは、顧問の久美子だった。
「くみちゃんせんせー、遅いよー」
「そうそう。もう部活終わりですよー」
等と部員達から声が飛ぶ。
「まあまあいいじゃないの。この部活には優秀な先生が居るんだし」
そう蓮の方を見ながらうんうんと頷く久美子。
正直顧問としてはそれでいいのかと思わなくもないが。
「あ、それと光井君と峰岸君、ちょっといい?」
「なんですか?」
「またなんか厄介ごとっすかー?」
若干面倒そうに答える凜。
とはいえこれまでの久美子の言動を考えれば、口には出さずとも蓮も多少なりとも同じことを思ってしまった。
「またって何よ。まるでいつも面倒ごとを持って来てるみたいじゃないの」
「そう言ってるんだよな?」
「ああ。いつもだよな」
久美子の発言に、蓮と凜は顔を合わせて頷き合う。
部員達もそれに同調するかのようにうんうんと頷いていた。
完全アウェーの空気を感じたのか、若干気まずそうに久美子が唸る。
「う……。ま、まあそれはいいとして、ちょっと学校側から言われたの。全国高校スイーツクリエイトグランプリに今年も参加して欲しいって」
「「…………」」
久美子の言葉に、蓮と凜は思わず顔を見合わせた。
渋い顔で蓮を見つめる凜、おそらくは蓮自身も同じ表情だろう。
そして蓮は口を開き、自分の考えを口にする。
「悪いですけど、おれ達は今年は出るつもりありません」
「っすねー。去年は部活存続って理由があったけど、別に今年は出る理由ないし」
「あなた達ならそう言うと思ったけどね……」
「去年だって運が良かっただけです」
「そうそう。別に去年だって参加の実績が欲しかっただけだしな」
昨年は長くまともに活動していなかった家庭科部の存続の為、大会に出るという実績を持つ為に出場したのだ。
目的がそれであった為、特に大会に向けて準備をしたわけではない。
ただ、テーマに沿った作品を作っただけ。
結果として地区予選を勝ち抜き全国準優勝まで進むことが出来た。
その甲斐あって、今年の家庭科部は廃部危機など訪れていないので、蓮としては参加の理由がない。
「でもねぇ……、校長先生や教頭先生にも結構お願いされちゃってるのよ。『去年の準優勝ペアなら今年こそ優勝を』って」
申し訳なさそうに口にする久美子。
付き合いの長い久美子としても、蓮と凜の考えは理解しているのだろう。
しばし沈黙が流れる。
そして蓮は凜と顔を見合わせ、溜息を吐きつつ口にする。
「……分かりました。出場だけは引き受けます」
途端に久美子の表情が明るくなった。
「本当!?」
「ただし条件があります」
蓮は落ち着いた口調で続けた。
「さっきも言った通り、別におれも凜も優勝とかは目指していません。期待するのは勝手ですが、優勝を目指して特別な練習をしたり、生活を大会中心にしたりするつもりはありません」
「そうっすね。普段通り部活動を楽しんで、その延長線上で参加するだけってことなら」
「それで構わないなら、参加します」
久美子は数秒ぽかんとした後、ふっと笑みを浮かべた。
「うん。それで充分よ。ありがとう!」
そう答えると、久美子は蓮と凜の手を取ってブンブンと上下に振る。
こうして昨年に引き続き、蓮と凜は大会へ出場することとなった。




