第66話 ウサギとの交流
「ご馳走様」
「ご馳走様。美味かったぞ」
「ご馳走様でした」
「ご馳走様。はーっ、楽しかった!」
「ワンッ!」
弁当を食べ終えて、四人と一匹で食後の挨拶。
皆美味しく食べてくれて、笑顔を浮かべている。
作った蓮としても大満足だ。
ケリーも満足したのか、地面へ伏せながら尻尾を振っていた。
「結構食べたなあ」
「だな。ケリーを含めても」
「ワンッ!」
名前を呼ばれたケリーが元気よく返事をする。
「ケリー、可愛いねえ」
そんなケリーを美鈴は優しく撫でていく。
それを見ながら、蓮はふと思い出した。
「そういや凜」
「ん?」
「ウサギ達には会えるか?」
「ん? ああ、そういうことか」
凜がすぐに意味を察したように頷く。
チラリと視線を桜季へと向け、そして再び蓮の方を向き親指をグッ、と立てる。
「いるぞ。今日もいつも通り飼育スペースにな」
「飼育スペース?」
会話が聞こえたのか、ケリーを撫でていた美鈴が首を傾げる。
隣では桜季もきょとんとしていた。
「この幼稚園、昔からウサギ飼ってるんだよ」
「えっ?」
途端に桜季が驚いたように声を上げた。
「う、ウサギですか……?」
「あ、サッキー食いついた」
美鈴が笑うと、桜季は少し恥ずかしそうに頬を染めた。
チラリと蓮を見て、恥ずかしそうに視線を逸らす。
「だ、だって好きだから……」
「知ってる知ってる」
桜季がウサギ好きなのは三人共知っている。
それこそ昨日の話題で出たばかりだ。
「見に行くか?」
凜がそう言うと、桜季の目が期待に揺れた。
「……いいんですか?」
「もちろん。むしろ喜ぶと思うぞ」
「喜ぶ?」
「人懐っこいからな」
凜は笑いながら立ち上がる。
桜季も嬉しそうに立ち上がった。
「よし、それじゃ移動するか」
「ウサギかあ! アタシも見たい!」
美鈴も元気よく立ち上がった。
そしてケリーもまた、自分も行くと言わんばかりに立ち上がる。
「ワンッ!」
当然のように凜の横へ並ぶケリー。
揃って室内の飼育スペースへと移動する。
中へ入ると、木の香りと干し草の匂い、が鼻へと届く。
室内には柵で区切られた広めの飼育スペースがあり、その中では何匹ものウサギ達が思い思いに過ごしている。
真っ白な毛並みの子がぴょんぴょんと跳ね回っているかと思えば、茶色い子は隅で丸くなってうとうとしており、灰色の子は牧草をもぐもぐと食べ続けている。
耳の垂れた子もいて、それぞれ顔つきや仕草も違い、見ているだけで自然と頬が緩んでしまう。
「わぁ……」
桜季が思わず声を漏らす。
その目は完全にウサギ達に釘付けになっていた。
「か、可愛い……!」
普段より少し高い声。
どうやら完全にテンションが上がっているらしい。
「気に入ったか?」
「はい。とても可愛いです……」
思わず本音が漏れたのだろう。
そんな桜季を見て、美鈴が楽しそうに笑う。
「あははっ、こんな分かりやすいサッキー初めて見たかも」
「そんなに?」
「うん。かなり」
それを聞いて蓮も小さく頷く。
普段は落ち着いていてどちらかと言えば控えめな桜季が、ここまで感情を表へ出すのは珍しい。
「近づいてみるか?」
「いいんですか?」
「おれもここに来たら触れてるからな。なあ?」
「ああ、いいぞ」
凜へと視線を向けると、凜はもちろんだと頷く。
蓮は桜季を案内するように飼育スペースへと近づいていく。
するとその時、白いウサギが一匹、ぴょん、と桜季の近くまで跳ねて来た。
「……!」
桜季の顔が更に明るくなる。
そっとしゃがみ込み、蓮の方をちらりと向く。
「あの、触れても大丈夫でしょうか?」
「ああ。ゆっくりとな」
「はい」
怖がらせないよう静かに手を差し出す桜季。
「こんにちは……」
優しくウサギへと語り掛ける。
ウサギは警戒する様子もなく、桜季の指先へ鼻を近付けていく。
そっと触れると、桜季の顔がぱあっと明るくなった。
「わっ……ふふっ」
くすぐったそうに笑う桜季。
その柔らかな笑顔を見ていると、蓮までなんとなく頬が緩んでしまう。
「完全に懐かれてるな」
「動物って優しい人分かるからねー」
美鈴がそう言う。
その一方で、ケリーもウサギの方へと近づいていく。
「あっ、ケリーが近づいていくよ?」
「大丈夫だ。犬とウサギは相性が良いし、もう何度も触れ合ってるからな」
心配そうに問いかける美鈴に凜が説明する。
「ワフ……」
凜の言葉通りケリーがウサギの傍でうつ伏せになると、何匹かのウサギがケリーの背中へと乗った。
それをケリーは嫌がることなく、ゆったりと目を閉じた。
「凄いですね……」
ウサギを撫でながら、桜季が感心したように呟く。
「仲良く出来るんですね」
「ケリー、基本優しいからな」
「小さい頃から慣らしてるしな」
凜と蓮が説明する。
その間にも、ケリーはウサギを驚かせないよう静かに尻尾を揺らしていた。
「えへへ……なんか癒やされますね」
桜季が嬉しそうに呟く。
そんな桜季の横顔を見ながら、蓮はふとスマホを取り出した。
「桜季」
「え? あっ……」
「チーズ」
「……えへへ」
ウサギを抱えたまま、カメラ目線で優しく笑った。
(ほんと、好きなんだな)
そう思いながら、蓮は桜季の写真を何枚か撮る。
「後で送るよ」
「はい。ありがとうございます」
そう言って桜季は再びウサギを抱えたまま微笑む。
すると蓮の横に美鈴が寄って来た。
「ねね。蓮さんもサッキーと並んで撮らない?」
「「え?」」
突然の提案に、蓮と桜季の声がハモる。
「ねえ、サッキーも撮って欲しいよね?」
「え、ええっと……その……蓮さん、せっかくの思い出ですし……いいでしょうか……?」
上目遣いの視線を蓮に向けながら頼む桜季。
「ああ、分かった」
蓮も桜季の隣にしゃがむと、そこへちょうどもう一羽のウサギがやって来た」
それを見て蓮と桜季はクスリと笑い合い、美鈴の方へと視線を向ける。
「それじゃあ撮るよーっ! はい、チーズッ!」




