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リナが息を呑む。
「ひ、人型魔物!? これは、分類不能種! に・・・逃げた方が良いです」
バルドは斧を構えたが、その手がわずかに震えていた。
「クソッ。なんて圧だ!」
黒い“何か”が、ゆっくりとシンタローたちを見回し、その視線が、シンタローに止まる。
「アァァ・・・タァ・・・タス・・・ケッ」
かすれた声。だがそれは、悲鳴のようでもあり、呪いのようでもあった。
次の瞬間。
バシュッ!!
黒い影が弾丸のように飛び出し、シンタローの目前に迫る。
「ッ!!」
反射で槍を突き出すが、火花のような黒い魔力を纏った腕とぶつかり、周囲の空気が爆ぜた。
衝撃で石床が砕けるが、砕けた地面を蹴った影が、爆風で吹き飛んだ俺に追い付き、押し込んでくる。
「っぐ!」
俺を掴んだ腕から流れ込む魔力は冷たく、痛みを伴う悪意そのものだ。
「は、なれ、ろぉ!!」
全魔力を槍に集中させた槍の穂先は白く光り、振り抜くと雷鳴のような衝撃が走った。
ドガァァァン!!
黒い影は壁に叩きつけられ、洞窟の岩壁が崩れ落ちる。
だが“何か”はすぐに立ち上がった。
歪んだ口を開き、今までより明確に、言葉を発した。
「タス・・・ケ・・・テ・・・」
リナの顔が曇る。
「もしかして、誰かに変異させられた?」
バルドが歯を食いしばった。
「だろうな! だからこそ、止めねぇと!」
俺は槍を握り直す。
「お前が誰なのか知らないが、苦しいなら俺が・・・救う!」
黒い影は咆哮し、俺たちに襲いかかる。
魔力の奔流がぶつかり合い、洞窟が揺れる。
幾度となく繰り返される魔力のぶつかり合いの中、俺の胸の奥で何かが燃え上がるように熱くなるのを感じる。
ドクンッ。
視界に、淡い光の粒子が舞う。
次の瞬間、シンタローの腕から何かが“溢れ出した”。
光の糸?
それは空中に広がり、まるで意思を持つかのように奔流を描く。
「な、なんですか。シンタローさんから出てるその光は!」
「魔力が、形になってやがるのか!?」
黒い影が迫る。
俺は反射的に右腕を突き出していた。
「うおおおおおおおっっ!!」
光の糸が一斉に収束し、右腕が巨大な槍の形を成す。
《光 纏 槍》
見た事も聞いた事も無い武器が、俺の意思に呼応するように輝いた。
ドガァァァァンッ!!!
光纏槍が黒い影の胸を貫き、その衝撃波は洞窟を吹き抜けていった。
人型の黒い影は断末魔をあげるように身体を震わせ、そのまま黒い霧となって消滅した。
「はぁっ、はぁっ・・・っ・・・」
リナが駆け寄り、俺の腕を取る。
「い、生きて、ますか!? う、腕は、着いてますか?」
バルドも傷だらけの体で立ち上がる。
「オッサン。今のは魔法か? いや、まぁ、今は、良いか」
俺は自分の右手を見つめた。光はすでに消え、ただの手に戻っている。
「わからない。けど・・・たぶん、俺に“新しく生まれた力”だ。と思う」
「マジで規格外だな」
しかし、勝利の余韻に浸る時間はなかった。
洞窟の奥から、ひとつの“影”がゆっくりと現れた。
輪郭は人のようでいて、人ではない。形が一定せず、霧散しそうなほど儚い。
《目覚めたのかい?》
声が、直接俺の“心”に響く。
「誰だ、お前は?」
影はふわりと浮き、俺の目前に現れた。
《名はもう必要ない。私は、“観測者”。この世界を外側から見る者》
リナとバルドが息を呑む。
どうやらこの声は、二人にも聞こえているようだ。そして二人とも“観測者”?という存在を知ってる様子だ。
《君の存在値は異常だ。この世界の“枠”を壊しうる力を宿している》
「存在? 値?」
《そう。君は“こちら側”の生命ではない。だが、ただの転移者でもない。君の力は、本来この世界で扱えるものではない》
いや、そんな事を言われても、俺だって来たくて来た訳じゃねぇよ。
俺自身、異世界に来た理由も原因も全く知らされてねぇんだよ。
《君の力は“外界式”。この世界の理とは異なる法則で動く。ゆえに、魔物の変異も・・・君が来たことで、始まった》
「・・・・・・」
「そんな。シンタローさんは悪くなんて・・・」
「ふざけんじゃねぇ! 全部オッサンのせいって言いたいのかよ!」
影は静かに首を振る。
《違う。彼は“引き金”にすぎない。原因はもっと単純。この世界そのものが崩れかけているだけだ》
「世界が、崩れる?」
《君は選ばれた。この世界の崩壊を食い止めるために。“外界の力”を扱える唯一の者として》
そして影は、ふっと薄く笑ったように見えた。
《だが安心しろ。“戦い”はまだ始まってもいない》
影の身体が霧のように薄れ始める。
《世界の来訪者よ。君の力は、世界の境界を揺るがす》
そして、完全に消える直前。
《次に会う時、君は“選択”を迫られるだろう》
影は完全に消え、空洞には再び静寂が戻った。
「シンタローさん・・・」
「どうするよ、オッサン」
世界の崩壊?
俺が選ばれた?
なんだそりゃ。そんな物を俺に押し付けるんじゃねぇ。
俺は洞窟内を見渡し、ゆっくりと息を整えた。
「そんなの決まってる」
俺は二人に振り返り、力強く言った。
「クエスト完了だ。これでやっと、宿屋に泊まれるぞ!」
- 第一章 完 -
この作品は90%をAIが執筆した文章です。
シンタロー、頑張れ!




