『妹の幽霊の声と速記』
掲載日:2025/11/21
三太郎という男の妹というのが、隣村に嫁に行っていたが、産後の肥立ちが悪くて死んでしまった。三太郎は、妹の嫁ぎ先に駆けつけて、葬儀やら埋葬やらを済ませて、帰り道をぶらぶら歩いていると、後ろのほうから女の泣き声が聞こえる。何だろうと思っていると、だんだん近づいてくる。さっき埋葬したばかりの妹の声に間違いない。三太郎は足を速めたが、妹の声はどんどん近づいてきて、三太郎の後頭部に張りついたように思えた。こうなると、走っても木に登っても逃げられない。妹の声だと思えば、怖いということではないのだが、何か妙な感じがするので、もとへ戻ってほしいと思っていた。
いろいろなことを試したが、妹の声は昼となく夜となく聞こえ続けている。三太郎はどうしようもないので、妹の声を消そうとするのではなく、むしろ妹の声に耳を傾けてみようと思って、妹の声を速記してみたところ、感じ入るところがあったものか、鼻をすする音がした後、聞こえなくなった。
今まで聞こえていたものが聞こえなくなった違和感に、しばらく悩まされることになるかと予想したが、一日でなれた。
教訓:頭の中に声が聞こえたら、速記の練習に便利、と考えるのがポジティブシンキングである。




