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<月からやってきた宇宙人>

 ブイチューバーとして活動し始めた宇宙人の動画撮影はある決まったお約束の挨拶から始まる。


 「こんにちは。地球の衛星『おつきさま』から来た宇宙人のぽぽちゃんです」


 本物の宇宙人が演じる宇宙人ブイチューバーとしての設定、それは月からやってきたウサギの宇宙人というものだ。


 この設定は中野によって考え出されたものであり『おほしさま』という本来の生まれた惑星ではなく『おつきさま』つまり地球になじみのある月からやってきたということにしているのだ。


 そしてその動画に映るその姿はなんと宇宙人としての姿そのままである。これは本人の希望であり、宇宙人としてのそのままの姿を地球の人に見てもらい宇宙人である自分の姿に慣れてもらいたいのだという。


 どうやらこれは宇宙人としての自分の存在が世間にバレてしまった時のことを考えているようで、もしバレてしまっても事前に自分の姿を知ってもらっていた方が世間も受け入れやすいのではないかと考えているようだ。


 とにかくこうして本物の宇宙人ブイチューバーによる活動が開始され、すでに2か月で2本の動画を投稿している。


 8月初旬に行なわれた初めての活動となる動画投稿では新人ブイチューバーとしての自己紹介と中野によって考えられた事実とファンタジーを織り交ぜた設定の説明が行なわれ、動画のコメント欄は実写の宇宙人だと気づかれず毛並みや動きが実写のぬいぐるみのようなリアルなアバターだというコメントでいっぱいであった。


 そしてそれに続いた9月の動画。


 「1番カステラ 2番は電話 おやつ食べるの午後3時」


 中野がダンボールで作った舞台で踊りながら歌う宇宙人。それは人形たちのダンスで有名な老舗菓子店のコマーシャルを模した動画であり、その動画は短いながらも人形のような見た目も相まってこちらも少しながらに話題になることとなる。


 今ではその姿からテディベアならぬテディバニーともコメント欄ではいわれており、今はお約束の挨拶を経て10月に公開予定の『ウサギの十五夜、餅つき体験』を撮影中である。


 「よっこいしょう」


 ペタン!


 「どっこいしょう」


 ペタン!


 「ここでお餅をコネコネとして」


 1人で餅つきに励む宇宙人。今はまだ、ひと月に1回動画を投稿するだけといった状態だが、それでもチャンネルの登録者は引退する前の中野を超えてすでに4桁にまでなっている。


 それに今までの動画で「リアルな」キャラクターとしての認識が広まると同時に本人も宇宙人という自らの異質な存在を恐れずにブイチューバーとして励んでいるといったところだ。


 特に地球人でありながら宇宙人を自称する人々の存在の多さに安心しているところがあるようであり先日には・・・。


 「中野さん!」

 「ん?どうしたの?」

 「日本ってすごいですね。今インターネットで色々と調べていたんですけど日本の総理大臣の人にも自分は宇宙人だと言っている人がいたんですよ」


 そういえば記憶を思い返せばそんなこともあった。海外の新聞に間抜けとまで言われたあの総理である。


 「総理大臣まで自分のことを宇宙人だといって演じていたのであれば、ぽぽちゃんが宇宙人だと本当のことを言っていてもバレることはきっとないですね。まさか日本ではここまで自分のことを宇宙人だと自称することが広く浸透しているとは思わなかったのです」


 といった具合に宇宙人はさらに自信をつけるのであるが、中野としては日本の恥といってもいい存在を蒸し返され、それどころか本当の宇宙人にそんなことを言われるなどまったく地球人として恥ずかしいものであった。


 だが、そうした存在のおかげもあって本物の宇宙人でありながらこの地球でそのことに不安を感じずにブイチューバーとして活動することができており、年末を迎えるにあたって、それから中野は本格的な配信活動についても検討を進めていくこととなる。





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