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<非常識系宇宙人>

 「とりあえず、ぽぽちゃんはこの壊してしまった物を修理しましょうかね。ギリギリ床は傷つけずに止まれましたが、これだけはどうしようのなかったのです」


 そして地球で居候をすることになった宇宙人が最初に始めたこと、それは網戸の修理であった。だが、拾い集めているその残骸はすでに原型を留めないほど破壊されており、曲がった部分をまっすぐに戻したところでただの鉄くずである。


 「そこまで壊れたらもう無理だろうから、管理会社の方には適当に連絡して―――」

 「大丈夫なのです」


 中野はすでに網戸のことを諦めていたためそう発言したが、その言葉にかぶせるように言った宇宙人の言葉は自信満々であった。


 「このスペクル。スペースクルーザーは宇宙のどこからでも生きて帰ってこられる宇宙船をコンセプトに開発されていて宇宙船本体の自動修復機能だけでなく修復装置も備わっているのですよ」


 中野からすれば大手自動車会社が開発・命名したといわれても違和感がない感じのネーミングセンスである。ちなみにこの数日後、スペースクルーザーのことを中野が土星型宇宙船といったところ言葉の響きがカッコ悪いと言われたのはまた別の話。


 さて、こうして自信満々に修理できるといった宇宙人であるが一つだけ大きな問題があった。それは宇宙船の大きさに対して網戸の残骸が細長いということである。宇宙船の直径を考えれば残骸となったアルミの枠の半分が入ればいいという状況であり、宇宙船に対しても宇宙人に対しても長すぎる。


 だが・・・。


 「よいしょと」


 拾い集めた網戸の残骸の前に立った宇宙人が両手を前に出し、それから両手の間を狭めるようにして内側に寄せると網戸の残骸は一瞬にして形をそのまま縮小されるかのように小さくなる。


 そしてその残骸をハンドパワーで持ち上げるかのように触れずに持ち上げ、宇宙船の側面に開いた穴の中に網戸の残骸を全部入れ終えると、十数秒後には元々の形をした小さな網戸が穴から出てくる。


 「確か、ここにありましたよね」


 そうして完成した小さな網戸を窓際まで持っていって元々網戸があった場所に置き、再び両腕を前に出して間を広げるように外側へと開くと網戸はそのままの形で拡大されいく。


 それはまるでスマホの画像を指二本で拡大縮小するピンチアウトやピンチインのようであり、こうして残骸となっていた網戸は最初からあった場所ですっかり元通りとなる。


 しかも、宇宙人の驚くべき行動はそれだけにとどまらない。


 「ここに宇宙船があっても邪魔ですよね・・・」


 そう言って小さな宇宙人は宇宙船を頭の上に抱え上げて宇宙船のちょうどいい置き場所を探し始める。


 それから部屋の中を一周して床にちょうどいい置き場所がないことを理解すると部屋の隅へ行って何をするのかと思ったら垂直の壁を歩き、天井に到達すると次は真っ逆さまの天井をまるで地面のように歩いて地球の重力に反してそのまま天井に宇宙船を置く。


 「さっきからどうなってるの・・・」

 「はい?」


 中野は目の前で起こる地球の常識では考えられない出来事にそうつぶやいたが、当の常識では考えられないことをやっている宇宙人には何のことだかまったく分からない様子である。


 「地球の物理法則とかって知ってる?」

 「さあ?ぽぽちゃんにこの惑星のことわりは関係ないのですから」

 「ああ、そう」


 物理的には不可能であるはずだが実際に目の前でそれが出来てしまっている。それをいまさら否定はできないし説明されたところで分からないだろうと中野は天井を歩く宇宙人を見ながら自分では理解できないことを理解した。


 こうしてこの時から中野は宇宙人が巻き起こす摩訶不思議なこと、地球での常識について考えるのをやめたのであった。





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