<初コラボ>
ようやくチャンネルの収益化にも成功し、稼げるようになった宇宙人はその日あるチャンネルの雑談配信へと招かれていた。
「こんにちわー紅猫タルトです」
「白犬大福です。今回はこの犬猫倶楽部にお客さんが来てくれてます」
「こんにちわ。お月さまからやって来たぽぽちゃんです」
この日の配信は同じように事務所には所属しないでそれぞれ個人で女性ブイチューバーとして活動し、たまにコンビを組んで配信している二人組とのコラボ配信であり、これは『ぽぽちゃん』どころか中野にとっても初めてのコラボ配信であった。
コラボ配信の誘いがあった時、中野としてはコラボなんてして大丈夫かと思うところあったがコラボする本人が「(アバターが)紅白で縁起がいいおめでたいコンビなのです」と言って前向きだったこともあり、いつもは2人で音声を繋げてどちらかの画面を共有しながらそれぞれ配信をするというものに宇宙人が加わるという配信が実現することとなったのである。
そして2人のアバターはその名の通り犬と猫であり、出身が沖縄の紅猫タルトはイリオモテヤマネコをモチーフにして紅芋タルトの色を基調にしたキャラクターで、出身が北海道の白犬大福は真っ白な北海道犬をモチーフにして尻尾が中の人の好物である大福になっているというキャラクターだ。
そんなこともあり、このコラボ配信の終了後『甘くて美味しいもの』を探し求める宇宙人が紅芋タルトと大福に興味を持つのは当然の話であったが、この初コラボとなった雑談配信の方は何の問題もなく順調に進んでいく。
・・・・・
「―――というわけで、ぽぽちゃんが地球で居候しているところの中野さんはですね、ぽぽちゃんがコウノトリさんに運んできてもらうと知るまでは単細胞分裂みたいに増えるんじゃないかと勘違いしてたそうなんですよ」
中野からすれば懐かしいぐらいの話であるが、際限なく分裂して部屋を埋め尽くすまでに増える夢を見た側からすればそれなりに怖さを感じる夢であった。だが、それもコラボ相手からしてみれば設定を考えていた時の裏話のようなものに過ぎない。
「じゃあ、ぽぽちゃんもそうやって増える可能性があったのか」
「いや、ないですよ」
「今はちゃんとコウノトリが運んでくるっていう設定なんだもんね」
「設定ではなく生態と言ってください」
設定との声を否定する姿も今まで1人でやってきた配信でもはやお約束であり、あくまで宇宙人という設定を守るための言動として多くの人に認識をされている。
中野も最初はこれを宇宙人が狙ってやっているものと思っていたが、よくよく考えればそのような小細工はできないのが『ぽぽちゃん』という宇宙人である。実際、配信の時に宇宙人という設定から宇宙オタクかどうなのか聞かれたときには・・・。
「ぽぽちゃんもオタクと言ってしまえばオタクですけど、あらゆることを中途半端にしか知らないオタクなのです。広く浅くがぽぽちゃんのモットーですので、ニワカどころかそれこそ薄っぺらオタクなのですよ。『非常に薄く広く知っている。その薄さは金箔のごとし』と言っていいかもしれません」
といった具合で思っていることをそのまま言っているという感じである。その他にも・・・。
「そういえば、ぽぽちゃんの中の人って男なの?女なの?」
「男?女?・・・ああ、あのコウノトリがいない惑星によくあるアレですか。中野さんには聞いたこともないですね。まあ、ぽぽちゃんには関係のないことですしどっちでもいいんじゃないですか」
というように、どうやら宇宙人としての興味や無関心が絶妙に合わさっており、それがある意味ブイチューバーとしてちょうどいいものとなっているようなのだ。
もしもこの時に「中野さんは男ですよ」などと言ってしまっていたら世間的には『ぽぽちゃん』は男性ブイチューバーということになりファンの構成も変わることになるかもしれない。実際には宇宙人だからどちらでもないのだが、こうして明らかになりそうでならないのが『ぽぽちゃん』の人気の一つだと中野は思っている。
こうして初めてのコラボとなった配信は宇宙人としてのキャラクター生かして無事に終えることとなり、初めてコラボというものをした宇宙人自身も「とても楽しかったのです」と言えるほど配信を楽しんだのであった。




