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<ぽぽちゃん地球に来る>


※以前にもぽぽちゃんというキャラクターが出てくる作品を書いていますが直接的な関係はありません。



 太陽系の火星と木星の間にある小惑星帯。この大小様々な岩石が浮遊する一帯に1つの黄色い物体が差し掛かった。


 その物体は球体の中心を円盤が貫いた地球人からすれば土星のような形をした物体であり、それは小惑星の一つと衝突すると残骸をまき散らしながら一直線に地球へと向かって進み始める。


 そして徐々に地球へと近づきつつあった物体は地球の衛星軌道上へと差し掛かると、そこでさらに宇宙ゴミと呼ばれる人類が宇宙開発の際に捨て置いた物体とも衝突、こうして物体は急速に地球へと向かって降下をしていったのであった。



 こうして令和7年7月7日の夜。



 この日、日本の上空で一つの火球が目撃された。この七夕の日に観測された天体ショーにネットやテレビではちょっとしたに話題になることとなるが、あくまでそこまでの話。


 だがこの瞬間こそ1人の宇宙人が地球を訪れた歴史的な瞬間だったのである。



・・・・・



 その時、中野なかの人司ひとしは仕事を終えて帰宅し、夕食も風呂も済ませてトイレに入っているところであった。


 だが、しばらくして・・・。


 ドンガラガッシャーン!


 トイレに籠っていても分かるほどの大きな金属音が辺りに響き渡る。


 すぐ外の道路で交通事故でもあったのか。中野はそう考えながらトイレを済ませて部屋へと戻るが、その部屋へ戻った時、中野は目の前に広がる光景に絶句した。


 なんとバランスボールほどの球体と円盤が組み合わさった黄色い物体が部屋の中に転がっており、床には折れ曲がった網戸の残骸が散らばっていたのだ。


 幸いにして物体は開いていた窓の網戸の部分をちょうどよく突き抜けたようでガラスは割れず網戸だけの被害で済んだが、その突き抜けてきたであろう物体は明らかに自然のものではなかった。


 いったいこれは何なのか、なんでこんなものが部屋の中に飛び込んできたのか、こうなった原因を中野は自分なりに考えようとする。


 だが次の瞬間、物体の窮状をした部分の上部に小さな穴が開き、その穴が広がると思いもよらないものがそこから姿を現した。


 「よいしょ、と」


 球体上部の穴から現れたそれは身長50~60センチほどの黄色いフサフサした二足歩行のウサギであった。まるでその姿はテディベアのウサギ版とでもいうような見た目をしており、そいつは中野と目が合うとこう言った。


 「こんにちは『ぽぽちゃん』です」


 謎の物体から現れた謎の相手。


 「・・・な、なんなの」


 そんな奴の挨拶に中野はそう返した。少なくともそう返しても許されるだけの状況と相手である。


 「ぽぽちゃんはここから数十億光年ほど離れた『おほしさま』という場所から来たのですよ。今は宇宙で一番甘くて美味しいものを探す旅をしている途中なのです。・・・でも途中で小惑星に衝突しちゃって、できれば宇宙船の修理が終わるまでの間ここに置いていただけませんか?」


 まるで飛び立つ鳥のように両腕を動かして相手はとてつもなくスケールの大きいことを中野に懸命に伝えてくるが、その様子は可愛らしいと同時に、その姿に中野は思うところがあった。


 かつて中野が中学生であった時、中野はある人形を父方の祖父母の家へと置いてきた。


 それは幼稚園に入る前から大切にしてきたウサギの人形であり、中学生の男子ながら中野にとっては捨てるに捨てられず、田舎で家の広さにも余裕がある祖父母の家にある父親の部屋に少年野球でもらった記念品や捨てられなかった思い出の品などと一緒に衣装ケースに入れて置いてきた人形だった。


 しかし、それが最後の別れだった。


 次の長期休みに祖父母の家に家族で帰省した時には既にウサギの人形はどこかの家に勝手に譲り渡されており、それ以来中野の手に戻ってくることは二度となかったのである。



 そしていま目の前にいる「ぽぽちゃん」の姿は、その人形によく似ていた。



 「うん、まあ、いいよ」

 「ありがとうなのです」


 かつて失ってしまった物によく似たその姿に、中野の宇宙人を受け入れるハードルは低かった。こうしてこの日、二つ返事で遭難した宇宙人は地球での居場所を得ることとなったのであった。





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