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第56話 心強い友人

 レグルス大公と合流したルミナ一行は地下用水路から逃げることはせず、城内に沸いた異形の怪物と戦いながらルミナの私室を目指していた。ルミナの私室は緊急用に隠し部屋がいくつも存在している。他の場所よりは安全度は高いはずである。

 城下町で何が起こったかは移動しながらでも窺うことができた。今や地下用水路から脱出したところで安全な場所に出られるとは限らないだろう。


「で、なんでおっちゃんはここにいるんだよ。俺はてっきり日蝕の魔王になっちまったもんだと思ってたぞ」

「うむ、魔の者となったクレアに眠らされておったようでな。地下牢に閉じ込められておったから力づくで破って出てきたのだ」

「蝕みの宝珠には触れてないのか?」

「……そもそも余は蝕みの宝珠についてすら知らなかったのだが」


 ソルドが尋ねるが、レグルスは知らないと答えた。エリーン遺跡での報告もままならぬままにクレアが騒動を起こしたため、レグルス大公が何も知らないというものいたし方がないことだった。


「それよりも、こいつら斬っても斬っても復活しやがる。何とかならないのか!」


 ソルドは剣を振る手を止めずに毒づく。

 城内に溢れた異形の怪物は闇に溶け込むように真っ黒い見た目をしている。それをソルドが剣で斬りつけ、レグルス大公が爪で切り裂く。そうやって無理に押し通っていたのだ。


「埒が明かぬが仕方あるまい。こやつらの正体も我らは碌にわかっておらんのだ」

「マジでこれ俺とおっちゃんじゃなかったらもたなかったぞ」


 ソルドもレグルス大公も、ルミナとヴァルゴ大公を守りながら敵を倒さなければならない。思ったよりも体力のあるルミナはまだいいが、普段からあまり動くことのないヴァルゴ大公は紛れもない足手纏いだった。


「……私を置いてゆけ」

「何を言われますか、ヴァルゴ大公!」

「元より、私の行動が今回の件を引き起こしたのだ。これ以上、私が生きる意味など――」

「逃げないでください!」


 ヴァルゴ大公から零れ落ちた弱音を大きな声でルミナが遮る。


「自分の罪から逃げないでください、ヴァルゴ大公。生きて罪を償って、お孫さんに会ってあげてください」

「皇女殿下……」


 真っ直ぐに自分を見つめる瞳に射抜かれ、ヴァルゴ大公はそれ以上言葉を紡ぐことができなかった。

 そんなやりとりを横目に見ていたソルドが声をかける。


「話は終わったか? こっちはバケモノの相手で精一杯なんだから手短に頼む!」

「すみません、もう大丈夫です!」


 異形の怪物は絶え間なく押し寄せてきており、力押しのレグルスと冴えわたる技のソルドでなんとかしている状況だ。

 そんなとき、暗闇の中より飛来した何かが異形の怪物に突き刺さる。


「なっ、バケモノが消えていく!?」

「これは一体……」


 異形の怪物は闇に溶けるように消え失せ、床には射られたであろう矢だけが取り残されていた。


「大丈夫ッスか!」


「「トリス!」」


 現れたのは弓を構えたトリスだった。彼女は帝国城の異変を察知するや否やルミナとソルドの安否が気になって駆けつけていたのだ。



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