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第35話 ギャラパゴスのじっちゃん

 遺跡での調査も終わり、成果も上々。

 ルミナはホクホク顔で馬車に揺られていた。


「うふふふ……まさか遺跡でお宝を発見するなんて思ってもみませんでした」

「素手でベタベタ触んな」


 金色の球体を宝物だと認識したのか、先程からルミナは金色の球体を撫でたり、握ったり、持ち上げてみたりしていた。


「不思議ッスよねぇ。動物をバケモノに変える玉なんて聞いたことないッス」


 トリスも興味津々といった様子で金色の球体を見つめている。

 結局、金色の球体の正体は不明のままだ。

 しかし、それがただのお飾りの遺物でないことは明らかだった。


「先輩は剣になってみてどうッスか?」

「力がみなぎってきた感覚はあったな。その玉に込められた力が人智を超える力なのは間違いないだろ」

「人間卒業おめでとうッス」

「うるさい」


 トリスの言葉にソルドは眉間にシワを寄せた。


「とにもかくにも、おっちゃんには報告が必須だ。ただ、こんな重要な遺物を一度預けたらそうそう持ち出せない」

「ソルド、ネコババはダメですよ」

「違う! 一回、有識者に鑑定してもらうんだよ。俺の身体も込みでな」


 金色の球体のことも気がかりだが、自身の肉体が剣へと変化した件も謎に包まれている。

 ソルドは一度剣になったあと人間に戻った。

 その影響なのか、浴びたはずの鼠の返り血が綺麗さっぱり消えていたのだ。


「人間と違って獣人には長命な種族もいる。文献に残されていないようなことだって知っている可能性はある」

「もしかして先輩、ギャラパゴスのじっちゃんに見てもらうつもりッスか?」

「ギャラパゴスのじっちゃん?」

「ギャラパゴス。亀の獣人で、今年で三百歳になるこの国の生き字引みたいな人だ」


 少なくとも歴史の知識において彼の右に出る者はいない。

 何せ、文献で学んだ者と違い彼はまさに歴史の生き証人なのだ。


「三百歳って帝国ができるより前から生きていることになりませんか?」

「ああ、当時はバリバリの戦士で、人間との戦争のときは前線に出てたらしいぞ」

「……わたくしがお会いしても大丈夫なのですか?」


 ルミナは皇族の血を引く者。つまり、ギャラパゴスにとっては仇の代表者もいいところなのだ。

 そんな存在がいきなり訪ねてきて良い気はしないだろう。

 不安そうな顔をしているルミナに対して、ソルドはあっけらかんと告げる。


「大丈夫だろ。あの人、美少女大好きだし」

「種族問わず、女の子大好きなスケベジジイッス」

「えぇ……」


 予想外のソルドとトリスの反応に、ルミナはただただ困惑していた。



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