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第2話 四天王ドラキュラの私室に存在する手記

 この国の獣人差別は根が深い。

 表向きは共存を謡っているが、差別意識は根強く残っている。


 獣人は人間より身体能力が高く、力仕事や荒事に向いているから職業も肉体労働が多くなる。

 そういった区別なら納得できるが、この国における獣人の扱いは不当だ。


 獣人は野蛮だ、獣臭い、獣人とは話す価値もない、獣人は人間の奴隷である。


 こういった侮蔑的な思想が帝国に蔓延っており、揉め事が起きた際も人間と獣人では、無条件で獣人が悪者と見なされてしまう。それを利用して獣人への嫌がらせも多いが、反撃することは許されない。


 誰もが不満を持っている。人間がそんなに偉いのか、と。


 しかし、誰もが拳を振り上げることもできずに己の身を守りながら生きている。

 戦争に負けるとは、そういうことだ。


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 人間にも強靭な肉体を持つ種がいるようだ。

 田舎出身でありながら一兵卒から近衛兵まで成り上がり、とうとう皇女御付きの騎士にまでなってしまった者がいるらしい。


 世間的には名誉なことなのだろうが、一騎当千の騎士を世間知らずな皇女の御付きにするのはもったいない気もする。


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 アルデバラン侯爵は変わったお人だ。

 人間でありながらも、こちらを差別しない。

 

 獣人の立場を回復するために日々粉骨砕身の勢いで働いている彼を見ていると、救われた気持ちになる。


 それに比べて彼の補佐官であるエリダヌスとかいう奴はダメだ。

 小綺麗な理想こそ掲げてはいるが、中身が伴っていない。


 まあ、理想を抱えられるだけマシなのだが。


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 今日は例の騎士と出会った。

 寡黙な人で、ただ淡々と自身の任務に集中していた。 


 どんな思想を持っているかはわからないが、誰にでも平等な対応をすることから分別はついているのだろう。

 人間が皆、彼のような人であれば良かったのに。


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 ルミナ皇女殿下は奇特な人だ。

 曲がったことが嫌いで、獣人差別を真っ向から下賤な行為だと否定してくれた。


 ただやはり世間知らずではある。歴史の勉強だけで帝国の闇を知った気になっているなんてお笑い草だ。御付きの騎士も振り回されて苦労していることだろう。


 でも、彼女なら何かを変えてくれるのではないか。そんな期待をせずにはいられなかった。


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 レグルス大公が殺人罪で投獄された。

 獣人だからという理由で疑われ、弁護することも許されなかった。


 こんな無法がまかり通っていいのか。これが帝国のやり方なのか。


 こんな国、滅びてしまえばいい。



 ※ルミナの聖剣――ラストダンジョン魔王城・四天王ドラキュラの私室に存在する手記より抜粋



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