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第18話 喧嘩ばかりの主従

 ソルドが皇女付きの騎士となり、自由時間にレグルス大公の執務室に突撃してくることはなくなった。


 皇女付きの騎士は名誉な役目であるのと同時に、自由時間などは存在しない。

 皇女を守るため四六時中彼女の傍を付いて回らなければならないためだ。

 ソルドが自由に出入りできなくなり、静かになったはずのレグルス大公の執務室では――


「だーかーらー、経験がないのならば積めばいい話ではありませんか!」

「あんたみたいなのを獣人に接触させられるか! 余計話が拗れるわ!」


 やかましく口論する主従の姿があった。


「あー……二人共、そろそろ本題に入ってもよいだろうか?」


 互いに一歩も譲らず延々と口論を繰り広げているソルドとルミナの間に割って入ったのは、このこの部屋の主人であるレグルス大公だった。


「はい、もちろんです」

「けっ」


 対照的な反応を見せる二人の様子に、レグルス大公は大きな溜息をつく。

 ソルドの素の性格を考えれば、ルミナとは反りが合わないとは思っていた。


 しかし、表向きは従順な騎士を演じてくれると思った矢先にこの始末である。

 レグルス大公は目の前で繰り広げられた光景に頭が痛くなる思いだった


「ソルド、お前の態度はどうにかならんのか」

「はっ、皇女殿下より偽りの忠誠を向けられるより、素のままで対応するよう仰せつかっております故、こうしてありのまま思ったことを述べることも騎士としての務めと存じ上げております」

「都合良く騎士らしく振る舞いおって……まあいい」


 頭ごなしに叱りつけてもソルドは反省しないどころか、さらに反発して言い返してくるだろうと諦めると、話を戻すことにした。


「まず、アルデバラン殿の公務の引継ぎについて話しましょう」

「よろしくお願いします」


 先程までの騒々しさはどこへやら。ルミナは姿勢を正すと、真剣な面持ちでレグルス大公の話を聞く体勢を取る。

 その変わり身の早さに感心つつも、レグルス大公はルミナに説明を始めた。


「アルデバラン殿は邦主として帝都を管轄しておられた。ルミナ皇女殿下には、その邦主としての仕事を引き継いでいただきたい」

「なるほど、つまり実際に帝都を見て回り、民の暮らしを知ることから始めれば良いのですね!」


 帝国城の外へ憧れのあるルミナはレグルス大公の言葉に目を輝かせる。


「いえ、まずはこちらの書類に目を通していただきたい」


 そんな脱走癖のある皇女の前に膨大な量の書類が置かれた。


「………………え?」


 まさかこの量の仕事をやれと?


 油が切れた扉のようにルミナがぎこちない動きでレグルス大公を見上げた。

 そこには肉食獣らしい獰猛スマイルを浮かべた巨漢の男が立っていた。



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