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断罪劇のその後で

     ◇


 先程の人騒がせなお話で、場はざわついておりました。ですが、おっしゃった相手が、第二王子殿下です。

 しばらくすると落ち着きました。落ち着かざるを得ないとも言えるのかもしれません。


 劇と言いましてもおかしいことこの上なかったことでしょう。

 

 これから中断していたパーティーが始まります。わたくし達は、そっとホールを出ました。



 整えられた薔薇の庭園に花々が美しく咲き乱れ、よい香りが漂います。



 庭園内の整えられた四阿にいざなわれました。薔薇のよく見える素敵な場所でした。



「シナリシア、話を聞いてくれるか?」

「はい」

 そう言って、わたくしは首肯しました。


 エクセレス様は、一旦宙を見つめ、そしてわたくしに視線を向けられました。


「私はどうやっても、手紙を書いても、魔法を使ってもいつからかシナリシアに愛を伝えることは出来なくなった。まともに話すことさえ出来ないため、呪いかと思い、解呪を試みたが、それも空振りだった。どうしても、自分であるにもかかわらず、止められない。もうどうにもならなくて……いっそ、君達の姿を互いに変えてみたらどうだろうかと思いこうした。すまない。馬鹿みたいだが、もう他に何も思いつかなかった……」


 エクセレス様はゆっくりとわたくしに話しかけて下さいます。


 恐らく物語の強制力かと思いますとも言えず、ただ沈黙しておきました。


「巻き込んでしまった令嬢へは、補填は考えてある。悪いとは思ったがどうしても、どうしても私はシナリシアがよかった。シナリシア以外の他の誰かの手を取りたくはなかったんだ」

 先程は、君とおっしゃって、宣言の時も名を呼ばれなかったことに気づきました。




「シナリシア……」

 切なげに私の名を呼び、その場にすっと跪かれました。

「シナリシア、私は君が好きだ。何故かこんなふうになってしまったが、婚約破棄なんてとんでもない。とりあえずあんなふうに話を濁せるかも賭けだった。どうしても、どうしても嫌だったんだ」

 空色の双眸で、ひたむきにわたくしを見つめられるエクセレス様。


「何故か、今枷がやっと外されたように自由な気がする。こんな私でも……私は、許されるだろうか?」


 わたくしはエクセレス様の不安げな眼差し。


「わたくしも、エクセレス様のことをお慕いしております」

 とお伝えします。



 声にすると、恥ずかしさに顔が少し赤面しました。


 とりつくろおうとしても、顔がほてりましたが、破顔し、喜色をたたえる表情を見せて下さるエクセレス様にわたくしも、つい嬉しくなり笑みがもれました。



 ──断罪劇、そして物語の終わりのその先が、幸せの始まりでほっとしました。


 この後にはもう物語の強制力はないと思います。後はわたくしたち次第でしょう。


「好きだ。何度でも言いたい。シナリシア、君だけを」

 そう言われて、わたくしは赤面が止められませんでした。







         end



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