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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
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短編ホラー『剃刀』前編

作者: モモモタ
掲載日:2022/05/23

 大学生になったことをきっかけに、私は寮に入った。少し古い1kの部屋。ずっと実家暮らしだった若者からしたら、どんなところでも一人暮らしは魅力的に思えるものだ。



「よし、こんなもんかな」



 荷ほどきを終えたところに、丁度友人から連絡が来る。食事の誘いだ。断る理由もないし、何より大学に入ってからの友人なので、始めは特に肝心だ。しっかり交友関係を広げていかなくては、これからのキャンパスライフに響く。



「え、あの部屋って……」



 新入生が集まり、いつのまにか10人くらいになった食事の席。誰がどの寮のどの部屋に入ったかを話していると、一人の女の子が私の部屋の話になった途端、口ごもる。



「え、何その反応。怖いからやめてよ」


「あ、ごめん。ただ、お姉ちゃんが同じ大学でさ。色々話を聞いてるんだけど……」



 その子曰く、私の部屋で自殺があったらしい。お風呂で手首を切って出血死してしまったそうだ。



「あ、でも違う寮だと思うよ。ごめんね、テキトーなこと言って」



 何がテキトーなものか。寮の名前、外観、設備、部屋番号、間取りまで一緒じゃないか。私が動揺していると。



「大丈夫大丈夫、何なら私が泊まりに行ってあげるよ。ていうか隣の部屋だしね」



 私をこの食事の席に誘ってくれた子だ。その子はにっこりとほほ笑み、私は何だか安心して表情を緩める。



「うん。頼りにしてる」



 食事を終え、部屋に戻る。まだ慣れてない部屋は自分のテリトリーという感覚は薄く、少し落ち着かない。さっきの話もそうだけど、なんだか怖くなってきた。お風呂、今日はやめとこうかな……と。



「……ふふ」



 両親から実家で飼っている猫の動画が送られてきた。寂しくないか心配してくれてるようだ。少し元気が出たな。入学式はまだ数日後だし、今日は夜更かししようかな。誰にも怒られないんだし。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 これは夢だ。確証はないけど、なぜかわかった。私は寮の部屋の玄関を開け、中に入る。ゆっくりとキッチンやトイレ、脱衣所、浴室を確認するかのように見て回り、部屋の扉を開く。そこには、私の持ってきたテレビや机。大学入学祝いに買ってもらったノートPCや化粧品。そして、ベッドで寝ている私。あれ? じゃあ、今こうして私を見下ろしているのは……誰?



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「ん……」



 気が付くと、部屋の中は明るかった。スマホを見るともう正午を回っている。そっか、昨日の夜、漫画をずっと読んでたのは覚えてるけど、そのまま寝てしまったようだ。



「変な夢……ていうかすごい汗……」



 気持ち悪い。シャワーでも浴びよう。脱衣所で服を脱ぎ、シャワーを浴びる。この時、私はもう昨日の話を忘れていた。この浴室で、自殺した人がいたことを。



「え?」



 突然、シャワーが止まってしまう。おかしい。蛇口は捻ったままだ。何か詰まってるのかな。シャワーヘッドを捻り、外すと。



「っきゃああああああ!!!?」



 その中には、びっしりと髪の毛が詰まっていた。思わずそれを放り投げ、浴室を飛び出る。



「な、なんなのよあれ……!」



 足に力が入らない。ここから離れたい。急いでタオルで体を拭き、服を着て、髪を乾かすこともせずに部屋を飛び出す。すると。



「だ、大丈夫!?」



 同じタイミングで、隣の部屋からあの子が飛び出してくる。私は思わずその子に抱き着き。



「や、やっぱりこの部屋変だよ!」


「ちょ、ちょっと落ち着いて! 何があったの?」



 その子の部屋に入り、状況を話す。



「シャワーが出なくなって、髪が詰まってた……それは確かに嫌だね。それに急にでなくなったんだよね?」


「う、うん」


「……よし、大家さんに言おう」



 その子はすぐに連絡し、大家さんは私に謝りながらもう一度ハウスクリーニングを入れると言ってくれた。けど、手配してから掃除が終わるまでに数日かかるという。



「終わるまで私の部屋にいるといいよ」



 好意に甘え、私はその子の部屋に泊まらせてもらうことにした。



「あ、でも着替え……」



 怖いので、一緒に部屋に戻り、準備をしている時だった。



「……?」



 その子は一緒に部屋に来ていたんだけど、途中でどこかに行ってしまう。どこに行ったんだろう。名前を呼んでも、返事はない。なんだか怖くなって様子を見に行くと。



「な、なにしてるの!?」



 その子は、浴室にいた。こちらに背を向け、しゃがんでいる。



「あ、う、ううん。やっぱりあんな話があったら気になっちゃって」



 そう言って立ち上がり、私の方を向き直る。



「………?」



 何かを隠したかのようにも見えた。けど、気にせずに準備を終わらせ、その子の部屋にお邪魔させてもらう。


続く


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