第2話『早すぎる再会』
〇学校・教室
「まなとおはよー。今日もぎりぎりのご到着で!っていつもか」
「あ、にかち!おはよー。今日は違うの。朝イチでおじさんとぶつかってさ。そのせいで朝練遅刻しちゃったから、斉藤コーチからぎりぎりまで追加練習くらっちゃった……。しかも転んだ時にパンツ見られたのほんと最悪……」
くたくたに疲れたまなとは、友達に一気に愚痴る。
「あらそれは災難だったけど、まぁどうせまなとのことだから、パン食わえながら、全力疾走で交差点突っ込んでぶつかったとかでしょ。だとしたら、まなとが悪いよ」
「うっ……全部バレてる……」
だが、まなとの親友である和奏 二華には、そんな親友に起こった出来事の真相なんてまるっとお見通しなのであった。
「まぁ、それはおいといて。今日新しい先生が来るんだって!産休の加藤先生の代わりに。イケメンだといいなぁ」
にかには親友の災難より、イケメン先生が来るかどうかが大事だった。
キーンコーンカーンコーンー……カーンコーンキーンコーン……
毎日聞き飽きるほどなるチャイム音。
思い思いに話していたクラスメイトもいそいそと自席へと戻りだす。
ガラッとドアが開いて、担任教師の角田 友香が入ってきた。
「はい、ホームルームを始めますよ。早く座りなさい」
新しい先生に期待が高まり、まだざわついている生徒に少しため息をつきながら、注意を引くために手をたたく。
「はい!静かにする!前にも伝えたけど、産休に入った加藤先生の代わりに、臨時の先生に来ていただきました。私の大学時代の先輩なんです。では、高屋先生。入ってきてください」
ガラガラガラとドアを開け、歩いてくる男性。
身長は180cmないくらいか。
高校生からするとかなりな高身長に見えるその男性は、大人っぽいとも言えなくもない老け顔だが整っていた。
細身のスタイルと相まって、売れていない芸能人といっても通じるくらいであった。
「産休の加藤先生の代わりに来ました、高屋 雄二です。担当科目は国語。難関大学専門の塾講師をしていたので、教えるのは得意です。まぁよろしく」
ちょっと低めのバリトンボイスで自己紹介をすると、クラスの女子陣からはおおよそ悪くない反応が返ってきた。
にかはあごに手を添えながら、値踏みするような視線で雄二を頭から足の先までチェックしている。
「うーん……ちょっと老け顔だけどそこそこか。74点!ねぇまなとはどう思う?……ってまなと?どしたの?」
この世の終わりかというくらいに呆然自失のまなとがいた。
ぎょっと驚きながらも、にかは必死にまなとの肩を揺らす。
「……え……うそ……。さっきぶつかったおじさんじゃん!なんで!?」
それもそのはず。
教室に入ってきた高屋雄二は、まなとが朝にぶつかった男性だったからである。
まなとのつぶやきが大きかったのか、その声に気づいた雄二がまなとの方を向いた
「ん?あぁ君か。交差点で、パンをくわえながら、全力疾走でぶつかってきた小野まなとさん。さて、落とし物ですよ、取りに来なさい」
「え!?あ、私の生徒手帳!!」
雄二の手の中にあるのが自分の生徒手帳だと気づき、駆け足で教壇まで向かった。
クラスメイトから注目された恥ずかしさで身体から火が出そうなくらい。
だがそれも序の口だった。手渡されるときに、雄二がまなとに告げた言葉を聞くまでは。
「曲がり角には気を付けましょう。そして……今どき、くまさん、はないよね」
クラスメイトには聞こえない音量で告げられた内容は”乙女の秘密”。
顔が一気に真っ赤になったのは当たり前だろう。
だがそれ以上に、まなとは雄二に叫びたい気持ちをなんとか抑えるのに必死だった。
叫んでしまったらそれこそ一巻の終わり。
「しっかり見てたんじゃない!!ほんっと最悪!早く忘れなさい!」
自制に自制を重ねて、なんとか雄二にだけに届く声でこれでもかと怒りをぶつけ、なんとか平静を保ちながら自席へと戻った。
雄二はからかいが上手くいったことに満足したような笑みでその後ろ姿を見送ったのであった。
『はい、呼ばれて飛び出て天の声!』
『さてさて、2人の出会いは最悪もいいところ』
『それにしても、ほんとデリカシーがないわねこの男。女の敵だわ』
『ふぅ……。ここから2人はどうなっていくのか……。はたして……』
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