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①-最終話『伝わる想い、伝わった想い』

※世界線①「奇跡も魔法もあるんだよ」です※

 


 〇病院・中庭


「今日もリハビリおつかれさま、先生。大分歩けるようになったじゃん」


 雄二が乗った車いすを押すまなと。

 病院に設けられた中庭は、ここが病院だということを忘れさせるくらいの緑に溢れている。

 少し汗ばむくらいの気温だが、エアコンが効きすぎているくらいの院内に長時間いた2人にとっては、身体を温めるのにちょうどよいくらいだ。


「ありがとうな、まなと。毎日来てくれてるけど、大学はいいのか?」

「大丈夫、全部単位取り切ってるから、あとは卒論だけでOKw」


 毎日のようにリハビリに付き合ってくれるまなとを雄二は心配していた。

 しかし、そこは天才まなとである。

 やることはちゃんとやって、雄二の元にずっと一緒にいれるようにしていたことを胸を張って答えた。


「相変わらず優秀だな。……なぁまなと。俺が目覚めたときの話って、してないよな」


 そんなまなとに微笑みながら、雄二がおもむろに話を切り出した。


「うん、聞いてないかも」

「俺が意識なかったとき、夢の中っていうか、真っ暗なところに1人でいたんだ。そしたら、まなとの声が聞こえてきてな」

「え?私の?」


 予想外の雄二の言葉に、車いすを押すまなとの足が止まる。

 雄二はそばにあったベンチに座るようにまなとを促し、座ったまなとと向き合った。


「うん、せんせいせんせいって呼ぶ声が聞こえて、まなとの声のおかげで戻ってこれたんだ。本当にありがとう」

「せんせい……よかったよほんとうに……」


 まなとの目を見ながら、雄二は真剣に感謝を伝える。

 雄二を死への暗闇からひきづり出してくれたのは、まぎれもなくまなとの声。

 まなとの声が、雄二を救ってくれたのだ。


 それを知ったまなとの目に涙が溢れる。

 自分の声が、自分の想いが、愛しい人にちゃんと届いた。

 愛しい人をちゃんと助けることができた。

 嬉しさと達成感と、一抹の恥ずかしさと。

 自分の顔が赤くなっていることもはっきりとわかり、雄二と目をそらしてしまったのも無理はない。


 そんなまなとを見つめながら、雄二はさらに言葉をつづけた。


「なぁ、まなと、手だして」

「え?これって」


 そっとまなとの手に乗せられたのは、おしゃれなアクセサリー。


「お揃いのペンダント。二つ合わせると、クマが♡を作ってる感じになるだろ」

 長方形のシンプルなペンダント。

 可愛いクマさんが向かい合わせになっているデザインで、2つ合わせると正方形のイラストができた。


「めっちゃ可愛い……。もらっていいの?」


 まなとはそうは言いながらも手に載せられたペンダントをそっとぎゅっと握りしめた。

 もう誰にも渡さない、私のモノだというように。


「ばか。お前以外の誰に渡すんだよ」


 雄二はそう言いながら、まなとの手をそっと握った。

 いきなり手を握られてビクッとなるまなとを可愛いなと思いながら、まなとの目を真剣に見つめる。

 雄二も、一大決心をするかのように深呼吸をして言葉を続けた。


「なぁ、まなと。俺はまなとが好きだ。お前が生徒のころは、まだ若すぎるって気持ちを押さえてたけど、あのときから、ずっとまなとのことが好きだ。まなとがいやじゃなければ、これからもずっと一緒にいてほしい」


 まなとから目を一切そらさず、雄二は自分の想いの丈を言い切った。

 真っ赤な熱がこもったその言葉は、雄二の身を焦がすように熱くする。

 だが、雄二は絶対にまなとから目をそらさず、まなとの次の言葉をただ待つのであった。


 雄二の言葉を聞いたまなとはというと、今まで身に着けてきた言葉という言葉をすべて失いながら、どうしようもなく言葉にできない圧倒的な幸せに包まれていた。

 我慢しなければ顔がにやけて溶けてしまいそうになる。

 なんとか必死に耐えながら、どこかに行ってしまった言葉をなんとか絞り出す。


「……いやなわけないでしょ!ばか!私だってずっと先生のこと好きだったもん。これからもずっと一緒にいてね、先生。大好き」


 恥ずかしさを隠すようにそうは言ったが、言葉と表情はまったくリンクしていなかった。

 自分の想いが叶ったことに、とろけてしまいそうな自分を何とか律する。

 だって、自分の想いをちゃんと伝える最大のチャンスが訪れたのだから。

 そうしてまなとも、まっすぐと雄二を見つめながら想いを伝えたのだった。






 Fin?






「ねぇ先生、でもなんでクマなの?」


 ふと気になったまなとは雄二に尋ねる。


「俺たちの最初の思い出って言ったらあれだろ?ほら、くまさんパンツ」


 雄二は思い出し笑いをしながらまなとにその理由を告げた。


「は?ばか!!」

「なっ!?痛いだろっ!?……お前!怪我悪化したらどうするんだよ!?」


 デリカシーがない言葉に顔が真っ赤になり、反射的にまなとの足が動いていた。

 まなとの足は雄二の包帯が巻かれた足にクリーンヒット!

 ……それにしてもまぁ、雄二が蹴られるのは当たり前だ。


「ああもうほんとデリカシーがない!それにずっと面倒見るんだから一緒でしょ」

「お前それって……」


 そんな雄二を横目に、まなとは早口で言い切った。

 聞き取れるか難しいくらいの早口をちゃんと聞き取った雄二は、その言葉の意味に照れてしまう。

 雄二に気づかれたと気付いたまなとも、雄二に負けず劣らず照れてしまった。


「言わせないでよばーか」


 照れ隠しで出た言葉は、緑と光があふれる2人の空間に柔らかく響いた。

 2人の想いは一緒だと、2人はちゃんと気づいている。

 そして、どちらからともなく、お互いの顔を見ながら笑い出してしまう。


 その幸せな笑い声は、いつまで続くのだろうか。

 そんな幸せな時間は、いつまで続くのだろうか。


 いつまで、じゃない。

 いつまでも、続けていくんだ。


 そう決意して、2人はお互いに同じ想いで歩んでいくのであった。





 Fin


ベタ恋の世界線①ルート!最後までお読みいただき、ありがとうございました!


ベタな結末ってなんだろうって考えたときに出てきたルートでした!

こういう奇跡とか魔法的な結末はなんだかんだ好きですw

よければ世界線②ルートもお読みください!


少しでも面白い!楽しかった!と思っていただけましたら、

『いいねで応援』『ブックマークに追加』『【★★★★★】』をいただけると嬉しいです!

いつも応援ありがとうございます!


次回作も何卒よろしくお願いいたします!

出会えた運と素敵な縁に感謝です!!

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