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②-最終話『伝わる想い、伝わった想い』

※世界線②「奇跡を待つより捨て身の努力」です※

 


 〇通勤路・朝



 あたたかくなってきた風が春の訪れを告げる。

 だが、風など感じなくても目の前に広がる桜色に溢れた景色は、今が春だと声高に伝えてきているのだった。


「大分温かくなってきたなぁ。それにしても、この学校は桜がほんと綺麗だな。異動してきて半年、あっという間だったが、ようやく慣れてきたなぁ」


 燦々県の高校へと転勤してきた雄二は、バタバタ続きだったこの半年間を思い出していた。

 冬の寒さも相まって落ち込みそうになる気持ちをなんとか懸命に支えながら、土台を整えてこの春からリスタートを切ろうとしていた。


 そんな決意をしながら歩く雄二の耳に、バタバタとかけてくる足音が聞こえてきた。


 それは雄二に向ってきているようで、遠かった音はあっという間に近くに迫ってきていた。


「ん?あ、あぶない!?!?」


 雄二がはっと振り向いてその姿を目にした瞬間、さっと横に避けた。


 そのおかげもあってぶつからずに済み、その人影は急ブレーキをかけてなんとか1歩2歩で止まるのだった。



「おまえ、きをつけろ!ぶつかったら危ないだろ」



 雄二は思わず声を荒げて注意する。


 だが、雄二も感じていたのだ。


 とてつもないデジャブ感を。


 今回はお互い転んではいないし、スーツと学生服ではないが。



「ごめんなさい。でも、なんというか、先生との再会は、ぶつかっとかないといけないかなぁと思いまして」


「は?え……って……なんで?!」



 そう言って、スーツを着た女性がぱっと雄二へ振り返った。


 目の前を通り過ぎて揺れるのはポニーテールのしっぽ。



「せーんせい、きちゃったw」



 顔にどっきり大成功と書いてあるくらいの満面の笑みのまなとだった。



「まなと!?どうしてここに??」



 そんなまなとと対照的に、いきなりのことに頭がまったくついていかない雄二。


 ここにいるはずがないまなとを見て、まるで幽霊にでも出会ったかのように驚いて叫んだ。



「それは、今日から私が、ここの先生だからです!非常勤だけどね」


「嘘……だろ……。だってお前、地元の学校で就職するって言ってたじゃないか」



 そんな雄二を見て更に満足したまなとは、ちゃんと理由を伝えるのだった。


 その理由にもう一度驚いてしまい、雄二はポカンとした声でまなとに尋ねる。



「まぁ、そうだったんですけどぉ……先生に絶対についてくって言っちゃいましたし。教授に無理言って話を通してもらって、はるか先生に先生の異動先聞いて、ついてきちゃいました!」


「おまえ……」


「何よ先生?嬉しくないの?」



 あの電話のときに決意したことを、その後の行動で実現したまなとであった。


 まだ現実に戻ってきていない雄二にやきもきして、きつめの口調で問いただしてしまったのも無理はないだろう。



「いや、まぁ……うん、めっちゃ嬉しい。まなとありがとな」


「ってことで、これからは先生と生徒じゃなくて、先輩と後輩だからね!」


「まぁ、それはそうなんだが……うん、やっぱり、それはちょっと違うかな……」


「え、どういうこと?合ってるでしょ?」



 ようやく雄二も実感できてきて、じんわりと笑みが浮かんでいく。


 そんな雄二を見て満足げなまなとだったが、何かを言い淀む雄二の姿を見て眉をひそめる。



「まぁたしかに学校ではそうなんだけどさ。……なぁまなと?」

「ん?なに?」



 いきなり真剣な眼差しで雄二に見つめられて、びっくりしてしまうまなと。


 雄二はそんなまなとから少しも目線をそらさない。



「俺にとってな、桜は別れの象徴だったんだよ。あのときを思い出すからな……。でもそれも今日までだ。まなとから手紙もらって、俺と同じ気持ちだったって知って、それから、ずっとまなとのことを想ってた。……まなと、俺と、付き合ってくれないか?」



 そう言い切ってまなとを見つめる雄二の目は、嘘偽りのない真剣な目だった。



「……うん、よろしくお願いします。私の気持ちも、ずっと変わってないから」



 そう言って雄二に想いをようやく伝えられたまなとの目は、喜びと幸せに徐々に潤みだしていた。



「雄二先生にずっとついていくもん。勢いで先に言っちゃったけど。もし先生どっかにいっても、地の果てまでおっかけていくから」


「ははは、それはそれで怖いな」



 その潤みがこぼれてしまわないように、力強く自分の意思を告げるのであった。


 その言葉が比喩的な意味でないことは、雄二にもちゃんと伝わっている。



「でもまなと、外では彼氏と彼女、だよな」


「え……うん。そう、だよね」


「だったら、先生、はないんじゃないかな」



 可愛い想い人をからかうように。



「え……あー……うん……。ゆうじ、さん……」



 恥ずかしいと照れながらもなんとか声をしぼりだして。



「っぷ…ははははは!」


「んもう、恥ずかしい!これから慣れていくからいいんだもん」



 2人の間には、もう2人だけの時間と空気が流れだしているのだった。



「そうだな、時間はたっぷりあるもんな。いくらでも。……だいすきだよ、まなと」


「わたしも大好きだよ、ゆうじさん」






 Fin


ベタ恋の世界線②ルート!最後までお読みいただき、ありがとうございました!


まなとの決断力と行動力にあふれた世界線でした!

世界線名を考えるときに、このセリフ以外出てきませんでしたねw

よければ世界線①ルートもお読みください!


少しでも面白い!楽しかった!と思っていただけましたら、

『いいねで応援』『ブックマークに追加』『【★★★★★】』をいただけると嬉しいです!

いつも応援ありがとうございます!


次回作も何卒よろしくお願いいたします!

出会えた運と素敵な縁に感謝です!!


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