お熱いわね(百合。幼馴染カップル。第三者視点)
放課後。友人に付き合ってもらって、駅前の雑貨屋に来た。
お目当てのものはすぐに見つかって、ちゃちゃっと会計を済ます。
退屈しているだろう友人のもとへ急ぐと、彼女は何かを真剣に見つめていた。
可愛いものに興味なし、出来れば男物とかユニセックスなものが良い。シンプルこそ一番、みたいな奴が、この店で興味を惹かれるとは珍しい。
私は興味本位に、ひょっこりその手元をのぞき込んでみた。
「へえ、アンタにしては可愛いもん気にしてんじゃない」
「ん? ああ。別に、アタシんじゃない。莉音にどうかなって」
彼女が手に取っているのは、リボン付きのヘアゴムだった。
オレンジのレースリボン、真ん中には、にっこり笑ったかぼちゃの飾り。
ハロウィンらしい可愛いひと品だ。
「ああ、確かにあの子好きそうね」
「だろ? けど、どーすっかなー。誕生日でも何でもねーしなー」
莉音は、こいつの一つ下の幼馴染であり、
「ふぅん? いいコイビトやってんだ?」
恋人だ。
可愛い、元気な女の子。
私も、後輩として気に入っている。
「茶化すなよ」
奴が、むっとした顔でこちらを見た。
けど、頬が赤い。
あらまあ照れちゃって。
莉音を恋人にしてから、こいつもなかなか可愛い顔をするようになった。
恋って、面白いほど人を変える。
「ごめんごめん。……いいんじゃないの? 何でも無い日のプレゼントほど、いいものってないのよ」
「そういうもんか」
「そういうもんよ」
「そうか……」
ふむ、と頷くと、彼女は意気揚々とレジに向かった。
その背を見送って、
「お熱いわねぇ」
私は、ふふふ、と微笑んだ。
あとで莉音もからかわないと、などと企みながら。
END.