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これ、僕が知ってる異世界転生と違うんですけど!  作者: 千鶴
第一章 良い事してもヘンタイはヘンタイ
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第四話 ‐ 出会い×2

――――――私を、麗華さんのメイドにしてください


朝食の場、二人の前で僕は意思を告げる。

旦那様は快諾してくれ、麗華様は「覚悟しておきなさい」なんて言ってたけど、顔は笑顔だった。




ここから、僕たちの新しい未来が始まる――――――んだけど。

僕は今、危機に直面していた。


お付きのメイドとして学園への編入が決まり、麗華さまと同じように学園の寮へ入ることになったのだが…。


元々パンツしか荷物のない僕だ。

引っ越しの準備に対して時間はかからなかった。


だけどなんだ?目の前のコレは。

頑張って模様替えした家具が………。


「あああああああああああああ!!!!!!!!!」


僕の部屋が!!!!!!目の前で爆散した!!!!!!!

放心………。何だこれ………。

え?僕部屋の模様替えしてただけだよね?

人間は…理解を超える出来事があると固まるんだなあ…。

煙の中で僕は放心しながら突っ立ていた…。


「ゲホッゲホッ」


その時、煙の中から咳が聞こえた。

人の部屋がぶっ飛ぶほどの爆発だ。僕の他に巻き込まれててもおかしくない。

急いで声のした方へと駆け寄る。


「大丈夫ですか?!」

徐々に煙が晴れ、人影が見えてくる。

そこには、白衣を着てメガネをかけた女の子が…。



一瞬で察する。

絶対。原因この子だろ…。


「だ、大丈夫ですか~」

恐る恐る声をかける。

メガネの女の子はこちらに気づいたみたいだ。

立ち上がり、こちらへ寄ってくる。

「…あちゃー。ごめんなさい。失敗しちゃいました」

ビンゴ!


「ケガはないですか?」

「まあ…ケガはないよ…」

「ふむ。アナタが噂の麗華さんのメイドさんですか」

「あれ…知ってるの?」

驚いた。やっぱり有名人なんだな。

「そりゃそうですよ!お父様がメイドを付けては一日で解雇を繰り返すあの麗華さんが直々にスカウトしたって話ですから」

一日で?!旦那様、苦労してるんだなあ…。しみじみとした感情になる。


「それより…この爆発は…」

「ああ!これはですね。最近不眠症なんですよ。私」

ん?

「なので睡眠薬を作ってたんですよ」

「睡眠薬?!睡眠策って爆発するようなものだっけ?!」

意味が分からなすぎる。本当かよ。

「まあ細かいことはいいじゃないですか」

「よくないよ…」



「ちょっと何の騒ぎ…って爆発してる!」

「あ、寮長さん」

「聖良さん!またあなたですか!」

「はい!私です!」

またってことはいつもこんなことしてるんだ…。


「いい加減にしなさい!今月だけで何回部屋が吹っ飛んだと思ってるんです!」

「18回ですね」

憶えてるんだ…。


「まあその内慣れますって」

凄いヘラヘラしてる。その言葉は君が言っちゃだめだと思うよ…。

「そういう問題じゃありません!」


「大体あなたはいつも…!」

説教が始まった。

どうしよう、この場から離れるタイミングを失った…。





結局僕は一緒に説教を聞かされる羽目になった。

被害者なのに…。


「わかりましたね!次は無いですよ!」

「はーい」

全然わかってなさそうだ。


寮長が去って、僕は聖良、と呼ばれていた女の子と二人になった。

何を話せばいいんだ?私の部屋返してよ!とか?

睡眠薬作っててどうやって爆発したの?とか……。


「あの」

「ひゃい?!」

急に声をかけられて変な声出ちゃった。


「名前聞いていいですか?メイドさん」

「あ…千秋です。天川千秋って言います」

「千秋さん…学年は?」

「2年です」

「2年!一緒ですね!よろしくお願いします!」

同じ学年なんだ。もしかしてクラスも一緒なのかな?


「いやー面白そうな人と隣の部屋なんて嬉しいですね!」

君の方が百倍面白いと思うよ…。

苦笑いで誤魔化す。というか、隣の部屋で大丈夫かな…。


「私、睡眠薬の研究があるのでこれで失礼しますね!それじゃあ!」

「あ、うん…またね」

それだけ言うと、彼女は手を振り走り去っていった。

台風みたいな子だったな…。

でも、面白い子だったな。


「…………ん?」


何か重要なことを忘れてるような…。


「あ!」


僕の部屋!これどうすんの?!


前途多難だ…。




♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢




結局。あの後メイドさんがやってきて僕の部屋を修復中だ。

恐ろしい速度で直ってたけどなんだあの技術力…。

もう考えちゃだめだ。ここはファンタジー。


「こっちは何があるんだろ…」

幸いにも今日は休日。

今の間に学内の施設でも見て回ったらどう?と寮長に言われて、敷地内をウロウロしている所だ。

校舎の脇に道が続いてる。整備されてるけど、こんな所に何が…?

僕は気になって道を進んでいく。

数分歩いたところで、開けた場所に出た。

「わぁ…」

そこは、しっかり手入れのされた花が花壇に並んでいた。

圧巻の一言だ。

丁寧に手入れをされていることが素人目でもわかる。

その花に囲まれた中央にちょこん、とテーブルとイスが置いてある。


「―――――あら、先客?珍しいわね」

「!?」

びっくりした。背後から声をかけられつい飛び上がる。

「あら、ごめんなさい。びっくりさせちゃったかしら」

背後を振り返る。そこにいたのは……………。


「女神………あっ」

何を言っているんだ僕は。急にこんなこと言って不審者みたいじゃないか!不審者だけど!

僕に声をかけたその人はポカーンとしている。そうだよね、ごめんなさい。

その人は驚いた顔をしていたが、僕を数秒見つめてから笑顔を浮かべた。


「ふふ…いえ。私は女神なんかじゃないですよ」

うおっ眩しっ。

ヤバい、美人過ぎて最早後光すらさして見える。

めちゃくちゃスタイルいいな…。

170…はギリギリなさそうだけど、女性の中では高身長の部類だろう。


「そこのテーブルで一緒にお話でもしませんか?」

「あ…はい」

前世だったら絶対美人局を疑うレベルだ。


ドキドキしながら席へ着く。先に口を開いたのはお姉さんだった。

「私は宮前久遠。3年です。あなたは?」

「天川千秋です。2年生です…。」

3年生…思った通りだ。

同い年って言われても納得できない…。

いや別に僕は可愛い女の子を目指してるわけじゃないからいいんだけどね?!


「2年生…見ない顔ね…」

久遠さんは顎に手をあて考えている。

「あ…私転校してきたんです」

すると、なるほど。と言わんばかりの表情で答えた。

「どおりで…という事は麗華さんの?」

お嬢様の知り合いなのか。なら話は早い。

「そうです。先日からお世話になってます」

「そう…あの麗華さんがね…」

久遠さんにまじまじと見つめられる。

てかこの人ホント美人だな…。

理想の美人の顔を作成して3Dプリンターで作ったんじゃないかって思えてくるくらいだ。

しっとりした黒髪もサラサラで……きっと和服とか着たら似合うんだろうな…。


「私、ここで本を読むのが好きなの。普段誰も来ないものだから、今日はアナタがいて驚いたわ」

「あ…それはすいません。お邪魔しちゃったみたいで」

「ああ、そう意味で言ったんじゃないの。ごめんなさい。私、こう見えてもお喋りするのが好きなの。だから千秋ちゃんが来てくれて嬉しかったわ」

女神の如く笑顔を向けられる。あまりの美しさに失神しそうだ…。

頑張れ僕!

「いつもここで読書を?」

「そうね…。雨の日以外はここで読書をしていることが多いかしら」

「この花も久遠先輩が…?」

ずっと気になっていたことを尋ねてみる。

「ええ。ここにある花たちは私が育てたものよ。花、好きなの」

花に水を上げてる姿を想像する。サイコーだな!


「千秋ちゃんはいつから学園に?」

「休み明けからです」

「そうなの…学園でも会えるといいわね」

そう言ってニコッと笑う。アカン、惚れてまう…。


その後、他愛もない会話に花を咲かせ、僕たちは解散した。


「千秋ちゃん、また学園でね」


「はい。また」


久遠先輩…凄い人だったな…。

昼に会った聖良ちゃんもそうだけど、この学園可愛い子しかいないなあ…。

前世の僕が通っていたのは男子校だった。

あいつら、絶対彼女たちを見たら泡拭いて倒れるだろうな…。


くだらない妄想をしながら僕は寮への帰路に就いた。





♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢




寮に戻ってくる頃にはもう空は茜色に染まっていた。


「結構話し込んじゃったな…」

久遠さん、大人しい人なのかと思ったら結構フランクだし、冗談も言ってくるし絶対人気あるだろうなあ…。


なんてことを考えながら寮へ戻る。

僕の部屋はすっかり元通りになっていた。


「どんな技術力してるんだ…」





明日の準備を済ませベッドに潜る。


明日は初登校だ。気を引き締めないと。


目覚まし時計をセットしする。

明日は何が起こるかな。

きっと、楽しいことがありそうな気がする……。

そんなことを考えてるうちに、僕は眠りについた…。




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