ボマーはやっぱ最強!
私は別に、人を害したいとかいう気持ちはない。でも、私は爆弾が好きだ。爆弾が爆発した時のスッキリ感が好きだ。初めて携帯ゲームで連鎖爆発を誘発できた時の快感はなかなか忘れられるものではない。
私は、高校生というVR使用規定年齢に達したのをきっかけに、VRゲームに手当り次第手を出した。だけど、爆弾が主役になれるようなゲームはなかった。ある時、過去に発売されたテレビゲームのVR版リメイクが発売された。
あれは、なかなか楽しめた。でも、すぐ飽きてしまった。ゲームシステムが代わり映えしなくてつまらなかった。
そして、新たなVRゲームが発売された。『ナンバアギヴン・タイトル』というMMORPGを題材にしている、結構よくあるやつだ。
販売数が少なくて、市場が荒れ気味だが、私はクラウドファンディングで悠々と手に入れた。
自分でもなんで、よく分からないゲームにお金をつぎ込んだのかは謎ではある。
少しこのゲームをした感想は、買って良かった“かもしれない”だ。『ナンバアギヴン・タイトル』公式サイトで記載してあったのだが、運営に意見メールとして新しい職業の案を送れるらしい。
このゲーム、職業をたくさん選べるのが一番の利点だ。いろんな職業になれる。後でいくらでも変更が出来る。職業ごとにスキルがある。成長の仕方もそれぞれ。
例を挙げよう。
最初に“剣士”を選んだとしよう。職業にはジョブレベルが存在する。それぞれ20レベルまでだ。上限解放して50まで上げられるという話もあるらしいが。
剣士のジョブレベルが20まで上がった。剣士を選んだことで得られたスキルは3つ。
そのまま、職業を“魔法使い”に変更する。スキルは剣士のものが引き継がれている。20まで上げる。魔法使いのスキルが3つ。合計6つになるわけだが、もちろん制限はある訳で。セットできるスキルは5つまでだ。どれかを捨てるか、合成しなければいけないのだ。
最終的なスキルの取捨選択後、巧くやれば職業が魔法剣士になる。
既存の職業で多くあるのに、さらに複合で新しい職業を得られる。
因みに、3回目のジョブチェンジからは、スキルの取捨選択能力がものを言う。
おそらく、検証したがりや廃人、ガチ勢やらが全職業複合したら……をやってくれると思うので、私は爆弾使いになるための準備を整えるのだ。
買って良かったかも、という話に戻るが、私は運営への意見メールを送った。
爆弾使いみたいな職業がほしい、という新職案だ。
それに、運営から“近日アップデートにて追加予定です。”という回答を得られたのだ。
このゲーム最高かよ、と思わないはずがなかった。
私は、生産職を網羅していき、爆弾が作れそうなスキル、材料の調査をしまくっていた。現在の結果としては、爆弾は作れる、だ。しかし、爆弾の材料を落とすというモンスターの生息域が、悪質なPKが闊歩しているという噂の場所なのだ。
他ゲーでは上手くPKを躱してきたが、ここに来て足止めを食らうとは思わなかった。
そして、ゲーム発売開始から1週間後、アップデートが行われた。他職の上方修正はどうでもいいとして。今回のビックニュースは4つだ。
1つはもちろん、新しい職業追加のお知らせだ。これ必要か? という職業も追加されている。
そして、本命は“爆弾魔”として登場した。
おいおい、私のプレイヤーネームと被っちまってるぜベイベー。
でも、爆弾が職業として思いっきり使えるのは、大変喜ばしいのでとっておきのモノをバサーに売ってやろう。ふふふ。
2つ目は、新たにエリアが追加されるらしい。
ナントカ村とか何とか書いてた。
3つ目は、新ストーリーの追加。私はまともにストーリーをやってないので知らないお話だが。
そして、4つ目。プレイヤーキルの制限だ。今まで、パーティーまたはギルド同士でなければ、プレイヤーをキルするのなんて簡単に出来たクソ空間だった。(だがしかし、キルすると弱体化(強)がデバフされるらしい。)
アップデートした今日から、PKのできる区域のみでのプレイヤーキルが許可されるということだ。いや、完全に無くせよ、と思わんでもない。
その区域が2つ目のアップデート追加エリアのナントカ村らしい。
ま、近づかなきゃいいのか。
さらに、これまで悪質なPKをしてきたプレイヤーへの規制みたいなのがかかったらしい。絶対そいつらこのゲーム辞めるかこれまでのセーブデータ消去してやり直すかするでしょ。
まあ、でも今回の神アップデートのお陰で私のボマーへの道が拓ける訳だから何も言うまい。何か問題が起きたらまたアップデート修正入れてくれるだろうし。
さて、PKのいなくなったエリアに怖いものなんてモンスターしかいない!
私は早速“ボムの実”を落とすというボムボム討伐へ、走るのだった。アイテムドロップしやすいように、ステータスの幸運値やれるだけ上げておいた。
はい、サクッと大量ゲット。いやぁ、モンスターを呼び寄せるお香を作っておいて良かったよ。ボムボムの狩場が簡単に出来てしまった。
私はホクホク顔で、ジョブ選定所へ急いだ。
ジョブ選定所は、職業変更が出来る場所だ。そのまんま。
今日はアップデートで追加があったから、選定所が人で溢れるのを予想して時差を狙って来たんだけど、まだ結構人がいた。
やっぱりみんな新しいものに惹き付けられるんだなぁ。
別にいくらでも職業を選択したって、スキルをずっと固定しておけばいろんな職業が体験できるのだ。スキルの取捨選択という楽しさを一切捨てて1時の楽しさを求めるやり方だ。
さて、待ち時間が長そうなので、その間に爆弾を量産しようと思う。
ぱっぱっぱーぱっぱっぱー
「ねぇ、君も選定所待ち?」
黒髪ロングヘアの、美人さんが話しかけてきた。
因みにゲームの性別だとか顔の醜美はリアルに準ずることはないので、直結厨にならないよう気をつけよう。
「はい。お姉さんもですかね?」
「うん。__そういえば、今回のアップデート良かったよね。PK怖かったし」
「ですよねぇ……神アプデとしか言えませんね。欲を言えば、というのはいくらでもありますけど。お姉さんは、職業何に変えるおつもりで?」
結構親しげに話しているが、知り合いとかでは一切ない。
お姉さんのプレイヤーネームをチラッと確認すると『ミサト』と言うらしい。なるほど。リアルネームっぽい名前だな。
「んー、僕は“魔導士”かなって」
“僕”!?
ぼ、ボクっ娘か……罪深い。いや、中身男という可能性があるけども。
それにしても魔導士とは……私、それが追加されたって文字見た時は“魔法使い”あるから要らねえだろとは思ったけど、やろうとする人はやっぱいるんだなぁ。
「私は__」
「ねえ、僕当てていい?」
「? いいですよ。へーい、当ててみせてください? オネーサン!」
私が爆弾魔と言おうとする前にミサトさんに止められた。
私は当てられるモンなら当ててみろ、と軽い悪ふざけな挑発をしてみた。ほぼ棒読みなのは、言い慣れてないからだ。察してほしい。
「__爆弾魔でしょ?」
「え、当たってるすげぇ。オネーサンエスパー?」
驚いた。素直に驚いた。そんな様子の私を見て、ミサトさんは耐えられないというように、吹き出した。
「っははは! 名前にしっかり書いてるよ“ボマー”ちゃん?」
そういえば、そうだった!
私は間抜け面を晒した。私の名前は“ぼまー”。平仮名で可愛さを出しているが、意味は爆弾魔である。
名前から答えを導き出せるなんて、このお姉さんなかなかの手練だな……?
「いやぁ、お恥ずかしながら……名前がジョブ名と被っちゃったのを忘れてました……」
「ふふふ……ぼまーちゃんは可愛いなぁ」
「ふへへ……あざす、ミサトさんの方が100倍可愛くて美しいっス」
媚びを売ることは忘れない底辺根性である。
おまいらも習って、自分より強そうなプレイヤーには低姿勢で行くことを忘れんじゃねぇぞ。ごめんテキトーに言った。
だがミサトさんが可愛いことは忘れんな。
そうして雑談をして時間を過ごしていると、選定所が空いた。中に1人2人居るくらいだった。ちょっとミサトさんと話しすぎたかも。
『変更先の職業を選択してください』
うぃーっす。
informationことインフォくんの指示に従い、“爆弾魔”を選択した。おお、『職業:爆弾魔』になってる。これ、ジョブレベル20まで上げたら名前どんな風に変わるんだろうか。生産職と爆弾魔だからな……自給自足爆弾魔、とか?
なっが。
「終わった?」
「はい」
ミサトさんも無事変更が終わったみたいだ。
「ねぇ、一緒に新しいジョブの試し打ちしにいかない?」
「!!!!」
私はミサトさんのお誘いに喜んで飛びついた。
うへへ……この出会いに感謝だぜ……私も爆弾魔としての力を知りたかったんだよね。
爆弾魔のジョブスキルは“ワンポイントボム”、“いっぱい爆発!”、“時限爆弾”というものがある。
このスキルを見て私はなるほど、と頷けた。爆弾収集をしているとき、爆弾の種類が一つしかないことに疑問を持っていたのだが、これで謎は解かれた。
ジョブスキルを駆使して爆弾を扱うことが最低条件なんだろうな。
やっぱり、ボマーと爆弾は切っても切り離せない、かたーーーい絆で結ばれてるってわけなんだよなあ!
ちなみに今解放されているスキルは、“ワンポイントボム”だ。
いい感じにジョブスキルをセットして、私の職業は“クラフタボマー”となった。
そして、私とミサトさんはモンスター洞窟に来ていた。
おどろしい洞窟という名前のついたここは、奥に行くほどモンスターが強くなる。さらに、広さも様々なので、爆弾魔的にもいい練習になるんじゃないかな。
「準備いい?」
「はい!」
「確認するね。ぼまーちゃんが先手攻撃で、残ったのを僕が殺る、でいいんだよね」
「はい! 頑張りましょうね! いっそ最奥行くのもアリです」
「いいね。僕ここあんまり来ないからさ、もしかしたらぼまーちゃんに頼りっきりになるかも……」
「全然、頼りにしてください!!!」
「ふふ、お願い」
最後の装備確認を終えた私達は、おどろしい洞窟に一歩踏み入れた。
すると、フワリと少し浮遊感があった後、ぼんやりとしか視認できなかった洞窟内が(暗闇のデバフがかかっているものの)はっきりと見えるようになった。
この感覚は、ダンジョンや洞窟、いくつかのモンスターエリアなどでよく起きる。これは、同じ場所にいる他プレイヤーと存在する空間を分けた、というシステムの動作の表れもあるが、プレイヤー側へそれを知らせる目的が主らしい。
そんな感じで、周りを警戒しながら洞窟を探索していく。
少し先で足音が聞こえた。私とミサトさんは目を合わせて戦闘体制に入る。半透明なウィンドウの選択からアイテム一覧を選んで、爆弾を取り出した。
「っいっきまぁーーす!!!!」
大きく振りかぶってジョブスキル"ワンポイントボム"を発動させた。
"ワンポイントボム"というスキルは狙ったところに爆弾を投げることができるという、爆弾魔初心者に優しいスキルだ。
……いや、いらねー……
と、思いきや多少の爆弾の強化がされている。
その結果はすぐ現れる。
ゴブリンとオークの群れが木っ端微塵に吹き飛んでいく。いくらかの追撃爆弾が映像を派手にする。ものの、ちびゴブリンどもはちょこまかと逃げ回りやがった。
「じゃ、いくよっ」
ミサトさんは、どこからか取り出した魔法の杖を、生き残りモンスターに向けると魔法を解き放った。
魔法の雨が降る。雨は見事にモンスターを避けていく。
そう、避けていくのだ。一切モンスターに雨が当たることはない。
ノーコン……?
「もう一回ー!!」
そう叫ぶと、ミサトさんは息を吐いて目を閉じた。
ミサトさんの額には脂汗が浮かんでいた。VR空間でここまでなるのは相当だ。この魔法にどれだけの神経を使っているのか。
強く閉じていた瞼を緩め、目を大きく開くと、魔法の杖を力強く振り下ろした。
再び魔法の雨が降る。
見事に雨たちはモンスターの脳天を貫いた。
「やっば……」
思わず声がでた。
「あああぁ……」
ミサトさんは情けない声を出しながら、膝から崩れていった。私は慌てて支える。
荒い息をするミサトさんは、焦点の合わない瞳をしながら言う。
「ジョブチェンジでインフォくんから忠告受けた時、大げさだなって、思ってたんだけど……これきっついなぁ……」
「攻略一旦止めます? これ以上やったら運営から警告来そうですよ」
こういう、VRゲームは、利用者に大きな異常反応があると、ゲーム中断の警告が出てくる。最悪の場合、強制終了なんてのもある。利用者が安全に使えるように、という"安全処置"と呼ばれる自動システムだ。
「うん……そうする……ごめんね、僕のせいで中断させちゃって……」
「ぜんっぜん、大丈夫ッス! 美人の体に触れてラッキーみたいな気持ちなんで、気にしないでもらって!」
「あははっ」
鼻の下を伸ばしながら言った私に笑うと、支えていた私の腕に抱きつきふらふらと立ち上がった。
ミサトさんは私の洞窟攻略を気にしているみたいだが、自分にとってゲームでの攻略は二の次で、他プレイヤーと話したりセクハラさせてもらったりする方が楽しいと思っている。私が爆弾大好きとか言いながらいろんなゲームをしてきた理由でもある。
のんびりプレイ大好きなのは、生産職を結構やってるのもあるかもだけど。
つまり、今ミサトさんに抱きつかれているこの状況は、とても最高だということだ。
あ、いま甘い良い匂いした。もしかして、ミサトさん香水使っていらっしゃる……?
なんかエッ…………
この後フレンドになった