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1分程度で読める、掌編小説集です。「こちら」から、他の掌編小説を読みにいけます。

自分の命と世界の命

作者: 行世長旅

世界は200年後に滅ぶ。と、神様が私に宣告した。

それと同時に、世界を救う方法も提示された。


その方法とは、私が生け贄となることだった。


考える期間は3日しか無い。

そしてすでに、2日経っていた。


私は考えた。


この話は私しか知らない。

私が神様の提案を蹴っても、誰も私を恨まない。

また、200年後ならどのみち私は死んでいるだろう。

ならば200年後の世界なんて私には関係無いし、そのために残りの人生を手放す必要も無い。


それに……、私が犠牲になっても、誰も私に感謝なんてしない。

さらに付け加えるならば、今生きている人間も200年後には全員死んでいる。

滅びの時を迎えることすらない。


全員がいつも通りの日常を送り、当たり前に寿命を全うする。


なら、私だってそうしてもいいじゃないか。


文明は滅びると相場が決まっている。

ほんの少し先で滅びるか、いつかの未来で滅びるかの差でしかない……。


同じことを何度も考えながら2日が過ぎ、ついに3日目の朝を迎える。


結論は出ましたか?


神様は私に問いかけます。


はい。


私は迷うことなく返事をし、簡潔に選択を述べる。


私を生け贄に使ってください。


そう聞いた神様は、少し驚き気味に言葉を返した。


あなたにとってはデメリットしかない選択ではありませんか?

残りの人生を、放棄するのですか?


そう言われることは分かっていた。

だから私は、ここでも迷わずに返答する。


そうです。救える多くのものを捨てて生きても、どうせ失う命で救わなかったことを後悔するだけです。

私は、苦悩の人生を送りたくないので命を捧げるだけです。


それを聞いた神様は、ふむと返事をして申し出を受け入れた。


分かりました。

では今から魂を分解します。何か言い残すことはありますか?


神様は最後に、私に言葉を残す権利をくれた。


そうですね……。


私は迷いながら言葉を選び、1つの結論にたどり着く。


私はここにいた。


……と、そう言い終えて、私の人生は幕を下ろした。

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