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竹取もし語  作者: 黒銘菓
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1話

 かぐや姫のIfストーリーです。読んでください。そして、感想や評価も下さい。

「久々に見たな。かぐや姫。ってか、竹取物語?」

 俺の手の中には本があった。本、と言っても、子供の頃に読んでいた、絵本。というのが正しい代物だ。

 「かぐやひめ」まぁ、それっぽく言えば「竹取物語」かな?

 竹取の翁という爺さんが光る竹を見つけて割ると中から女の子が出て来て、その子が成長して、金持ちから求婚されて振って、紆余曲折あって、実は月の人間だったので帰らなくちゃいけません。となって月の人達に連行される。ある意味バッドエンドストーリー。

 「全く、コレ、どうにか出来なかったかな?翁とか帝。もう少し頑張ればイケただろうに。かぐや姫守れただろうに。」

 最後の最後。かぐや姫が月に帰る際、かぐや姫の育ての親は彼女を守るべく兵を集めた。しかし、月の人々が来ると兵たちは戦意を喪失。呆気無く攫われてしまった。

 「あーぁ。当時の世には俺の様な、奇妙奇天烈極まりない奇抜で奇怪な策士は、居なかったのかねぇ。」

 フローリングの床に寝ころび頭の上に掲げた絵本を見る。この本にハッピーエンドは無かったのだろうか………………。

 「全く、よぅ、作者も……救済措置…………くらい……」

 寝ころんでいる内に眠くなってきた。フリーリングの冷たさ、吹く風、昼過ぎの陽。全てが瞼を重くしていく。

 「あって…………zzz」

 くれてもよかった。のになあ。




「んさま、ういんさま、賢匠院殿!起きてください!賢匠院殿!お時間ですぞ!」

 知らない声に起こされた。誰だ?俺の親父はそんな声じゃない。家に居る男なんて他に居ないし………。

 「!」

 目をカッと見開き飛び起きる。

 そうだ。俺と親父以外に男の声が聞こえるなんておかしい!強盗!

 「ぐぎゃ!」

 「うわっ!」

 額を何かに打ち付けた。しかも、しこたま。

 「失礼しました。賢匠院様。瞑想の邪魔をしてしまい。ですが、翁殿と帝が集まり対策会議をするとのことでしたので失礼ながら邪魔をさせて頂きました。」

 目の前の男はそう言って頭を下げる。俺は額を押さえながら男を見る。頭を下げているが、どうにも変だ。何が変かと言えば。

 「………。コスプレ?」

 目の前の男は着物を着ていた。少し変わった感じもするが、和服を着ていたのだ。

 「……。アレ?ここ……、何処だ?」

 目の前の男もそうだが、それ以上におかしい事が有った。周りに見覚えが無かった。

 家の天井は電球と白い壁紙。フローリングと家具。しかし、今俺が居るのは木造の綺麗な純和風建築。神社の様な……、なんだコレ?

 「ハハハハハ、賢匠院殿、寝惚けておられるのか?ここは翁の家。貴方の借りた部屋でございますぞ。」

 え?翁?アレ?俺って確か…………。

 あぁ、そうか。

 俺は確か家でかぐや姫を本棚の奥から発掘して読んでいた。その後床に寝っ転がってから記憶が無い。矢鱈眠かったので寝てしまったのだろう。つまり。


 『夢』だ。

 おそらく竹取物語。かぐや姫のストーリーが俺に見せた夢なのだろう。成程。確かに周囲の景色は絵本に出てきたような気がしないでもない。

 「賢匠院殿?如何された?」

 目の前の男が顔を上げて不安そうに訊いてくる。

 髭面で中々男らしさのある感じの益荒男だ。

 ………。そうだな。どうせ夢だ。もう少し遊ぶとしよう。

 「あぁ、大丈夫だ。心配ない。少しうたた寝してただけだ。瞑想なんて大したもんじゃない。」

 「そうでしたか。それは失敬。」

 「いやいや、それより、帝と翁が対策会だって?……一応聞くが、何のだい?」

 目の前の益荒男はそれを聞いて大きく高らかに笑った。

 「あっはっは!賢匠院殿?まだお目覚めではないのか?対策会とは?などと、決まっておりましょう?かぐや姫を攫いに来る不届きな月の使者への対策会にきまっているではないですか。」




 「おぉ、賢匠院殿。参られたか。」

 「賢匠院。お前の意見を聞きたい。」

 目の前には二人の男が居た。

 一人は年老いた気の優しそうな男。

 もう一人は矢鱈とめかし込んだ男だった。

 「まぁ、誰が誰だか、解るな。」

 小声でつぶやいた。

 「どうかなされたか?」

 「大丈夫か?賢匠院?」

 「いえ、帝、翁殿。何でもありません。遅れて申し訳ない。して、作戦の確認をさせて頂きましょう。」

 自然と話が通じる。古文の成績がCのこの俺が。だ。夢って便利だな。

 おそらく俺が今見ている夢。察するに、かぐや姫が月の住人だとカミングアウトした後で帝と翁が兵を集めている場面だろう。

 で、さっき起こしに来た益荒男さんの対応。この二人が待っている。という事は、俺は夢の中の竹取物語のオリジナルキャラクター。策士の賢匠院なる人物なのだろう。

 実に俺好みの、都合のいい夢だ。

 「これに。兵の配置をこのようにしようかと。」

 「兵はもう少し居ても良い。何、私も帝だ。この五倍くらいまでなら何の問題も無いぞ。」

 目の前に出された木の板にはこの家の見取りと思しき図。かぐや姫の居場所。兵の配置が書かれていた。

 成程。予想通り、かぐや姫奪還阻止作戦の指揮官や参謀的ポジなんだな。「もう少し何とかできなかったのか?」という思いに応えて夢が叶えてくれたんだろう。ならば!

 「帝?翁殿?少し、不肖私めに妙案が御座います。もし良ければ、協力を願ってもよろしいですかな?」

 悪ノリ。含みのある笑顔で微笑みかける。

 一度、『妙案が御座います。』って言ってみたかった夢。夢の中で叶った!

 「聞かせて下さいませ。」「聞かせて貰おう。」

 二人は顔を輝かせて食いついてくれた。




 夢の中ならば、やってみたかったことが出来る。

 バッドエンドを塗り替えられる。

古典文学のファンの皆様へ。ごめんなさい。


批評批判も感想等に書いて頂ければ幸いでございます。

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