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派遣勇者の世直し観光記  作者: あおまる軍曹
第一章【レグナ王国編】
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第041話「派遣勇者と新たなエリア」

第一章【レグナ王国編】

第041話「派遣勇者と新たなエリア」




 調査を始めたルードル達を囲むように辺りを警戒し始めて数時間。全く魔物が出ないので俺の索敵スキルのみ発動させて三人娘達は休憩がてらに遺跡内をブラブラとしている。


 「魔物の気配だけ注意しておいてくれれば遺跡内を交代で見学してもらって構いませんよ。」


 とルードルから許可が出たので俺と三人娘で交代しながら遺跡を見学しているのだった。


 「シンキチただいま。」

 「こういう所ってなんだかワクワクしますね。」

 「一通り見て回ったからシンキチも行ってきなよ。ここはアタシ達がみるからさ。」


 戻ってきた三人はオブジェ周りの警護を代わってくれることになった。


 「ありがとう。なんか面白い所はあったかい?」


 「そういえばこの先に扉がありました。」

 「あぁ~そういえばあったね。全然開かなかったけどね。」

 「いしのとびらだった。」


 (開かずの扉か…。見に行ってみるか。)

 「それじゃ俺もちょっと見学してくるよ。こっちの警護は頼んだよ。」


 三人に警護を任せて遺跡見学を始める。前の世界ではダンジョンに入った経験はあったが、使われていない遺跡なんかは殆ど用事が無くてスルーしていた。前世でも海外の世界遺産とかに行きたかったのだが仕事が忙しくて海外に旅行へ行くなんてできなかった。


 (まさか転生先、三か所目の世界でようやく遺跡や遺産見学の夢が叶うとはな~。)


 改めて見て回るとレグライム・クルスは非常に高度な魔法技術や文明で建築された事がよく分かる。何故かと言うとこの住居エリアの建物の部分が過去に見覚えのあるものだったからだ。


 「遠目で見ていてまさかとは思っていたが、やはりコンクリートみたいな素材だな。」


 王都をはじめこの世界の建築物は木材、レンガが殆どだ。王城はレンガに簡素なセメントを塗っている様にも見えたがこのレグライム・クルスで建築物に使用されているコンクリートは前世でビルなんかに使用されていた様なかなり近代的なもののように見える。


 (ここまで進歩した文明や技術がなぜ次のレグナ王国に引き継がれなかったんだろうか…。)


 「そういえば博物館でレグナ王国の歴史を見た時も古代時代の国の一つが魔族との戦争に勝利した後に今のレグナロッサの位置に王都を動かしてレグナ王国を建国した的な感じだったよな。」


 (戦争に負けて文明や技術が損なわれた状態から復興しているならまだ分かるけど、勝った側がこれだけ優れた技術を失うのはよく分からないな。)


 そんな湧き上がる疑問に首をかしげつつ、住居エリアをウロウロと見て回る。そうしている内にシロ達が交代する時に話していた開かずの扉が見えてきた。

話に聞いていた扉は取っ手も何もないコンクリート製の二枚扉だった。これもまたシンキチには見覚えのある見た目をしていた。


 「エレベーターの扉みたいだな。コンクリート製だけど…。」


 しかし扉は想像以上に重く流石に開けられそうにない。思い切り物理攻撃を扉にぶつければ破壊して先に進めそうな気もするが貴重な歴史遺産でロストテクノロジーとまで言われている物体を破壊するわけにはいかない。

 ふと扉の右側の壁を見ると、小さく丸い魔石が埋め込まれているのに気が付いた。


 (魔石に魔力を注いだら開かないかな?)


 俺は壁に取り付けられた魔石にそっと魔力を流す。魔力が込められた魔石は「ぼやぁ」と発光したものの、扉が開いたりする様子はない。


 「まぁ、そんな簡単な仕組みなら今までの遺跡調査の時に誰かが開けているだろうしな。」


 何となく損したような気分になり、そろそろ皆の所に戻ろうかと思った時。あるものが俺の目に留まる。


 (魔石に何か浮かび上がっているのか…?)


 近づいて魔石に浮かび上がっているものを確認するとそれは文字だった。しかもそれは俺がよく知る文字。日本語だった。


 (これは…。日本語…?なぜこんな場所に日本語が…?)


 魔力を込められた魔石に浮かび上がった小さな日本語。その日本語の文章は【開かない扉の開け方はもちろんあの呪文】と記されている。


 (まさか…。いや…。そんな事がありえるのか?罠という線は…、なくはないが…。クソっ!突然の事で考えが纏まらなくなっているな…。)

 久しぶりに混乱してしまう。いつもならもう少し冷静になってから行動するのだろうが、全く想定していなかった日本語の出現にこの時ばかりは冷静さを保つことが出来なかった。しかもどうしてもあのセリフを口に出してみたいと言う欲求に負けてしまったのだった。


 「ひらけゴマ…。」


 言ってしまった。

 声に出した後、なんだかこの呪文で古代の堅固な扉が開いて欲しくないと言う不思議な気持ちになったが、その願いは聞き入れてもらえなかったようだ。


 『ゴゴゴゴゴ…。』


 (まじかぁ…。)


 俺のチート級の腕力でもピクリとも動かなかった扉は大きな音を立てながらゆっくりと左右に開く。洞窟のような構造の遺跡の中を扉が開く音が響いている。これだけ大きな音だ、オブジェ周りで調査を続けているルードル達にも間違いなくこの音は届いているだろう。



 (どうやって開けたのかとか聞かれるだろうな~…。言い訳どうしよう…。)



 扉が開いて程なく音を聞きつけた研究員の面々と三人娘がやってくる。


 「シンキチー。なんかおっきい音してたけど大丈夫ー?」


 近づいてくる七人だったが、俺の後方の扉を見るや否や考古学者のユルトが一番に駆けてくる。


 「シ、シンキチさん!これはどういうことですか!?まさか開け方を知っていたのですか!?」


 「い、いえ…。たまたまここの魔石に魔力を込めたら開いちゃいまして…。」


 「この魔石に!?いやいや!この魔石に魔力を込めるのはこれまでも何度も行われているのですが…。まさか!?シンキチさんの魔力に反応したのか!?」


 そうこうしている間に扉が閉まってしまった。


 「シンキチさん!もう一度、もう一度魔石に魔力を込めてみていただけますか!?」


 ユルトに頼まれて今一度魔石に魔力を流すが扉は開く様子はない。当然あのセリフが扉を開けるワードに設定されているようなので開くはずもないのだが、俺の魔力に反応して開いたと思っていたユルトはガックリと肩を落とす。


 「まさか…。偶然開いただけだったのか…?」


 「あ~…。さっき実は魔力を込めた後にある言葉を言ったんです…。」

 「なんですか!?」


 食い気味に問い詰めてくるユルトに押されて俺は白状することにした。


 「ええっとですねぇ…。」


 なんだか恥ずかしくなってきたので耳打ちでユルトに説明する。説明を聞いたユルトは「ほうほう!」と目を輝かせた後、扉に向かって叫んだ。


 「ひらけ~!ゴマぁ~!!」


 「「「「「「!??」」」」」」


 突然のユルトの言動に俺以外の全てのメンバーの目が点になっている。


 (俺が言わなくて良かった…。)


 ユルトの声に反応して再び扉が開き始める。目が点になっていた六人も扉がゆっくりと音を立てて開く様子を見て「おぉ~!」と歓声を上げた。しかし…。


 「なんでゴマ…?」

 「さ、さぁ…。」


 ごもっともなヒソヒソ話がアルメイ達から聞こえてくる。


 (たしかに普通に考えれば「ひらけゴマ」って意味わかんないよな…。詳しくは知らないけど、実際物語の中に出てくるひらけゴマもなんでゴマなのかとか諸説あるみたいな感じだったっけ。)


 扉が開いたあと達成感に満ち溢れた表情でユルトが振り向き俺達に声を掛けてくる。


 「さぁ!進んでみましょう!!」



 「お待ちください。」


 ユルトの提案に対してルードルがストップを掛けてきたのだった。

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