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派遣勇者の世直し観光記  作者: あおまる軍曹
第一章【レグナ王国編】
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第040話「派遣勇者歴史遺産に触れる」

第一章【レグナ王国編】

第040話「派遣勇者歴史遺産に触れる」




 護衛任務当日、明け方に貴族街区の入り口前で待っていると中から真新しい幌馬車がやってきた。


 「おはようございます。」


 挨拶と共に馬車からルードルとヘレナ、それに加えて二人の男が降りてきた。


 「ルードルさんおはようございます。」


 「今日はよろしくお願いします。遺跡まではこの馬車を使っていきますが、まずはお互いの顔合わせをしておきましょうか。こっちのヘレナとは一昨日会いましたね。こちらがもう一人の部下ジャックスです。」


 「ジャックスです。僕もヘレナ同様平民出身ですが、主任のご厚意で研究員をしております。」


 ジャックスは俺と同じくらいか少し年上に見える。


 「こちらは今回の遺跡調査に同行してくれることになった考古学者のユルトさんです。」


 「ユルトです。普段は博物館で歴史学や考古学を研究しています。」


 「今回の遺跡は、このレグナ王国の前身である国の遺跡なので彼の知識が役に立つのではと調査へ同行していただける様をお願いしたのです。」



 「あちらの御者の方は?」

 「あの人はウチの家で御者をしているストッピングです。この馬車は研究所で借りたレンタル品です。」


 研究所側の紹介が終わったので、コチラも自己紹介をした。三人娘もルードル以外は全員平民出身者ということが分かって緊張はそれほどしていない様子だった。


 「では行きましょうか。」


 王都の外を出て馬車は遺跡に向かう。研究員三名とウチの三人娘は荷台に、俺は索敵スキルを使いつついざという時に早めに目視できるよう御者台に座っている。

詳しくは聞こえないが、荷台の中ではアルメイとヘレナを中心に会話が出来ているようだ。口下手なルーや人見知りしがちなシロの代わりに社交的なアルメイが話をしてくれているようだ。こういう時アルメイがいると本当に助かる。


 遺跡までの間、随時索敵をしていたものの魔物が出ることはなかった。


 王都を出発して二時間程度が経っただろうか、街道からさらに森を抜け目的の遺跡へ辿り着いた。


 「ここが目的の遺跡レグライム・クルスです。」

 「これが…。」


 かつて都市があったと言われていた遺跡は都市というよりは要塞といった景観だった。まず森を抜けてすぐに現れたのは王都の外壁にも劣らない高い壁。しかし王都の外壁との大きな違いはその防御面だ。高い壁はネズミ返しのように若干反っているし、壁の中からも攻撃が出来るように所々に物見窓がついている。

 壁の内側へ入ると中は壁を突破した侵入者が一斉に押し寄せることが出来ない様、深く無数の堀があり、高い位置にトーチカも設置されている。


 (ここは本当に都市だったのか?前線の軍事施設の様だな…。)


 「このエリアは見ての通り外敵から都市を守るための防衛エリアになっています。この先の住居エリアまではこういった戦闘時用の工夫が随所に見られます。」

 「なんだか不便そうだね~。」

 「確かに今の我々の感覚で言えばここまで外敵を拒む様な設計は住人からしたら不便さを感じるのかもかもしれませんがこの遺跡がまだ実際に使用されていた三百年程前は、人族と魔族の戦争が絶えず各地で起こっていた時代になりますから、この時代の建造物はこういったものが多いのです。」


 そう説明をしてくれる考古学者ユルトの話に俺達は感心しつつ先へ進む。


 「この先が居住エリアだった場所です。」


 防衛エリアの先にあったのは山だった。レグライム・クルスの都市は山の中にあるのだとユルトは言う。これもそれほど珍しいものではないらしく山をくり抜いてその中で生活していたのだそうだ。確かに山を丸ごと一つ破壊するような手段が無い限りこの方法は防御面で鉄壁の威力を持つだろう。


 入り口から遺跡の中に入り、ヘレナは魔法で中を照らすと俺達は驚いた。


 「山の中にしっかりと街があるのか。」

 「うわぁ…!」

 「凄いです!」


 目の前に広がるのは山の中とは思えないほど広々とした空間。そして立ち並ぶ家の数々だ。

確かに三百年という長い年月によって家の壁や地面に朽ちかけている部分はあるが、それでも少し補修すればまだ街として利用できるのではと思うほどだ。


 「何度見ても驚きますね。」

 「はい」

 

 「まさか山の中にこれほど高度な街並みがあるとは思いませんでした。」

 「そうですよね。初めて見た方は大体そう仰います。実際この街がどのように作られたのかはよく分かっていませんからね。」


 「そうなの?」

 「この広い空間は人力で掘削したような形跡がないから魔法の力で作ったんじゃないかって事なんだけどね。でもどんな魔法でこれだけの空間を作ったのか、どれくらいの日数が掛かったのかとかは資料が残っていないらしいの。」


 「えぇ、その辺は歴史資料もないですし同じものを今の魔法で再現することが出来ないというのが現状なので言わばロストテクノロジーによって建造された都市といった所です。」


 俺達の感想にヘレナやユルトが説明をしてくれる。その説明を聞きながら居住エリアを歩いていく。


 「そういえば今回はこの遺跡のどこを探索するのですか?」

 「この居住エリアを進むと当時の権力者達が住んでいたエリアが出てきます。本日はその周辺にある物を調べる予定です。」


 「それにしても魔物とか全然いないね?」

 「そうですね。護衛の依頼だったのでもっと色々出てくるのかと思いました。」


 「魔物の目撃例もありますが、実はこれまで過去の遺跡調査で魔物に襲撃された例はないのですよ。」


 「「「「えっ?」」」」


 ルードルの一言に俺達は思考が停止してしまった。


 「我々非戦闘員が万が一魔物に襲撃された場合の為の皆さんであり、特に今回は貴族である主任も同伴しているので念には念をといった具合なんです。」


 「ひょうしぬけ。」

 「ちょっと気が抜けちゃいました…。」


 「でもなぜ魔物が出ないのですか?三百年も人が住んでいない上にこの山の中です。魔物が一切住みついたりしていないのは逆に不自然なのでは?」


 「それはこの先に理由があるのですよ。」


 俺の問いにそう答えたルードルは進行方向を指差す。


 「アレがここに魔物が出ない理由です。」


 そう言われて視線をルードルの指差す方へ向けるとそこには大きなオブジェが建っている。


 「あれなんだろ?」

 「おおきいたま?」

 「うっすらと光っているようですね?」


 「あれは…。魔法道具ですか…?」


 「シンキチさんの言う通りあれは魔法道具です。三百年もの間この地で起動し続けているもので、魔物を寄せ付けない魔法陣が組み込まれています。」


 オブジェに近づくと全長は三メートル程あり、台座の上に球体が乗っている。確かに台座には魔法陣が組み込まれている。俺とルーが最初に訪れたアドナ村の広場にあった魔物除けのビッグサイズのようなものだ。しかし魔法陣の形状や種類がアドナ村のものとは随分と違うようだ。


 「シンキチ、こんな大きい魔法陣どうやって三百年も起動させてるんだろう?」

 「これは地面から魔力を吸い上げているんだよ。」


 「よく御存じですね。」

 「俺とルーは以前レグナ王国領の村で似たような仕組みの魔物除け魔法陣を見た事があったんですよ。」


 「なるほど。これはシンキチさんの言うと通り、地脈から魔力を吸い上げてオブジェにある魔物除けの魔法陣を発動させる魔法道具です。その仕組みが例の杭に似ていますので何か手掛かりになるかと思って今回見に来たわけです。」


 (たしかにあの杭も地表の魔力を吸い上げて杭に刻印された魔法を発動させているし、妹女神が言うには杭も古代の戦争時代に作られたものって言っていたから時期的にも同じ時代の物なのかもしれないな。)


 「とりあえずこれから我々は調査を行いますので、シンキチさん達は一応周辺の警戒をしていただけると助かります。」


 「わかりました。」


 これだけ大規模な魔物除け魔法が発動しているので問題は無さそうではあるが、俺達はオブジェを囲むように警戒を始めた。

なかなか執筆できずに投稿が遅れてしまいました…。

今後も頑張っていきます。

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