第004話「派遣勇者里生活を満喫する」
第一章【レグナ王国編】
第004話「派遣勇者里生活を満喫する」
アレミア家で世話になり始めて三日。
俺自身一泊させてもらったら里を出ていくつもりだったのだが、アレミア家の人々に引き留められてしまった。
「アレミア家始まって以来の外のお客様なのだから、ゆっくりしていきなさいな。」
このゆっくりのニュアンスが凄い、どうやら一年くらい面倒を見るつもりだったそうだ。流石に一年もいることはできないが、もう少しだけゆっくりさせてもらうことにした。
とは言え何もしないのもなぁ、と思っているとダグとリムからお誘いを受けた。
「シンキチ!暇なら俺たちと剣と魔法の訓練をしないか?」
「いいね!俺もエルフの技術を見てみたかったんだ。」
「ルーも行きたい。」
「前みたいに一人でどこか行かないならいいぞ。」
前回ルーが一人で森の中にいたのは、この二人の訓練について行ったものの暇を持て余したルーがフラフラと一人で木の実探しに出て行ってしまったそうだ。
「ルーはまだ魔法は使えないのかい?」
「そろそろルーの年齢なら使えるようになっていてもおかしくないんだけど、ルーはまだ呪文が浮かばないみたい。」
「そうなのか。」
まあ、寿命の長いエルフだからのんびり構えているのだろう。訓練の為、四人で里を出る。
「ここで普段訓練をしている。」
ダグに連れられてきたのは池の畔の開けた所だ。
「それじゃ、俺とリムと模擬戦闘をしてくれないか。シルバーウルフを殲滅した剣技披露してもらおう。」
木剣を渡され模擬戦闘をすることになった。
「行くぞシンキチ!はっ!」
ダグは鋭い動きから多くの手数を出してくるが、俺はそれを剣では受けず身体で躱していく。
剣撃に少し隙が出来た所でダグの剣を払い、ダグに切先を向ける。
「シンキチ…。お前はすごいな…。」
リムもダグ同様驚いた顔をしている。
「リム!どうやらシンキチは俺一人では手余りみたいだ、二人で相手しよう!シンキチは問題ないか?」
「大丈夫だ。」
「行くぞリム!」
「手加減はしないわよ!シンキチ!」
今まで魔物相手に一対多数で戦ってきた俺には二対一はお釣りがくるくらいだ。
ただここにはエルフ達の訓練で来ているから、今度は避けつつ攻撃を剣で受けつつ相手をしていく。
しばらく続いた訓練は二人の息が上がった所で終了した。
「そろそろ休憩…。かな?」
「はぁはぁ…。結局シンキチの身体に一撃も入らなかったわ…。」
「どんな鍛錬をしたらそんなに強くなるんだ…。」
「俺は魔物との集団戦闘が多かったから、そこの経験値って感じかな。」
「とりあえず二人は休憩しよう。俺はルーと遊んでくるよ。」
横たわる二人を置いて、俺は畔の端でぼんやりしているルーの所へ行く。
「ルー。何を見ているんだい?」
「キラキラとフワフワを見てたの。」
池に反射する日光を見ていたのだろうか、相変わらずフワッとした子だ。
「シンキチ剣すごいね。魔法もすごい?」
「んー、凄いかどうかはわからないけど使える魔法は多い方なんじゃないかな?」
「みせて。」
魔王討伐に向けて何が有効かわからず、かなりの量の魔法を覚えていたのでどれを見せてあげようか。
(ルーの魔法教育を考えるとエルフの得意魔法を見せてやればいいかな?)
「おーい!エルフは何魔法が得意なんだー?」
「俺たちは〈水・風・土〉の魔法が一般的だぞー…。」
横たわるダグ達から返事が返ってきたので、見た目も綺麗な水魔法にしておくかな。
「〈バブルフェアリー〉」
これは妖精の形をした泡を繰り出し敵にぶつける魔法だ。泡と言っても弾けた際の衝撃がなかなか大きいので、集団戦時にかく乱としても役立つ魔法だ。
出したものの、何かにぶつける事も出来なかったので池の上でフワフワとしたままだ。
ルーも横たわるダグ達もキラキラと光り漂うバブルフェアリーを眺めている。
「シンキチ、あれはキラキラとフワフワの仲間なの?」
「ルー、あれは魔法で出した水の泡なんだよ。」
「キラキラとフワフワとは、違う?」
ルーの言葉が妙に気になったので質問してみる。
「ルーが言うキラキラとフワフワってどんなのなんだい?」
「池には青いキラキラとフワフワがいて、森の中にも緑のキラキラとフワフワがいるよ?青いのは女の人かもしれないけど緑のは鳥に似てる。」
(ん…?それは…。)
「もしかして青いキラキラとフワフワはこんな感じに見えていたりするのかい?〈クリエイトクレイ〉」
土魔法で作成したのは俺のイメージした女性の形をした像だ。
「そう…。こんな感じ。」
(そうか!やはりこの子は…。)
「シンキチ!ルーと土遊びか?やけに立派な女の像だな。」
「シンキチは土遊びも凄いわね。」
休憩を終えたのかダグとリムが戻ってきた。
「ダグ、リム。ルーは魔法が使えないんじゃない。教えていた魔法がルーに合っていなかったんだよ。」
「「えっ」」
「この子は珍しい妖精魔法の使い手だ。」
「「ルーが妖精魔法をっ!」」
夫婦は似てくると言うがリアクションも似てくるらしい。
「どうやらルーは妖精の残滓が視えている様なんだ。俺も残滓が直接視える妖精魔法使いは初めてだったから驚いたよ。」
「ルーが本当に妖精魔法の使い手なら凄いことよ!エルフでも妖精魔法の使い手は千年に一人くらいしか出ないものなの。ウチの里でも使えるのは長老を含めて二人しかいないのよ!」
精霊魔法は魔法の中でも先天的に使えるかどうかが決まる珍しいもので、俺はその才能がなかったらしく覚えることが出来なかった。
「今まで俺が出会った精霊魔法使いは精霊の気配を肌で感知して魔法を行使していたんだけど、ルーはその精霊が目で視えているみたいなんだ。」
「ルー、君が視えている青いキラキラとフワフワはおそらくウンディーネという精霊だ。」
俺は昔覚えようと調べ上げた精霊魔法の内の水の妖精の名を伝える。
「〈ウンディーネ〉…。」
ルーが俺の作ったウンディーネ像を見つめ、精霊名を呟くと池の水面が形を変え始める。
「「おおぉ…。」」
「すごいわ…。」
俺、ダグ、リムは水面から姿を現す精霊に声を漏らす。
そこにはルーが生まれて初めての魔法で召喚び出した水の精霊ウンディーネがいた。
「本当にルーが妖精使いとは…。」
「これはお義父さんお義母さんにもすぐ教えなきゃ!今日は里を上げてのお祝いね!」
「よかったね、ルー。」
「楽しかった。」
あの後ウンディーネはすぐに消滅してしまった。
妖精魔法は上位魔法に近い魔法で発動に必要な魔力は小さいものの、妖精の顕現維持には非常に集中力がいる。
まだ幼いルーではウンディーネを召喚出来ても維持することが難しかった。
練習が必要になるが、今日の所は三人共疲労していたようなので早めに里へ帰ることにした。
その日の夜は久々の妖精魔法使いの誕生と、初魔法記念ということで里を上げてお祝いの宴となった。
親や里の人達に褒められて照れるルーを見て俺も自分の事のように嬉しくなる。
次の日からはずいぶんと忙しくなった。
というのも昨日の宴でダグが俺の剣技を里の人達に話したことで、多くのエルフが訓練に参加したい俺の剣技を見てみてたいと集まってきたのだ。
俺もアレミア家以外のエルフ達共この機会に仲良くなりたかったので二つ返事でOKしたのだが、その後参加者が参加者を呼び、数日後には里の若いエルフ達ほとんどが訓練に参加するほどの大所帯となった。
里に滞在を初めてひと月ほど経つだろうか。今日も池の畔で剣技訓練組と魔法訓練組に分かれて指導している。
ルーもあれからは里にいた精霊魔法の使い手と一緒に魔法訓練をしていた。
「シンキチ、みてみて。〈ウンディーネ〉〈シルフ〉。」
そういうとルーはウンディーネとその後呼び出せるようになったシルフを同時召喚する。
「ルー。精霊の同時召喚なんて凄いじゃないか。」
「ふふん。」
フンスとドヤ顔が可愛い。
「本当にルーの成長には驚きじゃ。普通は同時召喚と維持までできるようになるには時間が掛かるもんなのじゃが、幼い子の吸収力というのかの。」
「子供の適応力は凄いですからね。でもフオさんの教え方が上手いってものあると思いますよ。」
そう言って話すのは里では長老とルーの他に唯一精霊魔法が使えるフオさんだ。
「ほほほっ。老いぼれを褒めても何も出んぞい。精霊魔法は使える者が少ないせいか、適正に気付くのは大人になってからというのが多い。ルーのように幼いうちに発見できるとこうも簡単に使いこなせるようになるのじゃな。」
「ルーの場合は精霊の残滓が直接視えているので通常の精霊魔法師より簡単に精霊を召喚出来るのかもしれませんね。」
「うむ、このまま上達すれば素晴らしい精霊使いになるやもしれん。」
「ルー、すごい?」
「すごいすごい。このまましっかり勉強すればきっと凄い精霊魔法師になれるよ。」
「おーい!シンキチぃ!こっちで模擬戦に付き合ってくれ!」
「シンキチ君!そのあとはこっちで魔法の訓練もおねがーい!」
「今行くよー!」
こうして、エルフ達との楽しいスローライフの日々は過ぎて行ったのだった。
初執筆です。
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