第039話「派遣勇者とその周り」
第一章【レグナ王国編】
第039話「派遣勇者とその周り」
模擬戦を行った日の夜。俺は久しぶりの本格戦闘の達成感からか酒が飲みたくなり、三人娘にお留守番をしてもらって一人酒場へ向かった。
そんな俺のいなくなった宿の部屋ではお留守番の三人がガールズトークをする。
「シンキチって何者なんだろうね?」
「それは私もずっと気になっていました。只の旅人にしては強すぎる気がします…。」
「だよねぇ…。最初は旅をする冒険者って皆シンキチくらい強いのかと思っていたけどシンキチが特別強いみたいだし。」
「アリアドールでもすごくつよかった。」
「そうそう。前に聞いた時も長寿のエルフ族が相手にならなかったんでしょ?」
「えぇ!?そうなんですか?」
「ね?ルーちゃん?」
「シンキチがみんなにけんやまほうをおしえてた。」
「シロが加わる前にシンキチに聞いてみた事があったんだけど、旅に出る前はずっと一人で修業してたって聞かされたくらいでアタシも詳しくは知らないんだよね。」
「実は偉い人とか有名な人なんでしょうか?」
「どーだろ?偉い人の線はないかも。意外とアタシくらいの町娘でも知っているような一般常識を知らなかったりするし。」
「あまり自分の事を話さないですもんね。」
「そーだねぇ。普段も優しいからその辺は全然気にならないけど、今日の騎士団との模擬戦を観てて改めて強さが群を抜いているんだなって思ったなぁ。」
「最後は負けましたけど、シンキチさんあまり攻撃しませんでしたしね。」
「シンキチはわざとまけたとおもう。」
「やっぱ二人も思った?普段のシンキチから考えてあんなに攻撃が消極的なのもちょっと不自然だったよね。」
「面倒臭くなったんでしょうかね?」
「案外そうなのかも。」
結局シンキチの事は分からない事もあるが、優しく頼りになるので別に気にしないという当たり障りのない所で落ち着いたのだった。その後はそんなシンキチの話題など忘れて王都の美味しいものの話題で盛り上がった三人だった。
ジンはシンキチとの模擬戦後、シンキチ達の送迎をダックスとマイルの二人に託して王都魔導研究所へ向かった。そこでシンキチ達の実力に問題なしと研究所所長に伝えるとその足でルードルの研究室を訪ねる。
「おや?叔父上お疲れ様です。ダックスはご迷惑を掛けていませんか?」
「あぁ、ルードル。少しばかり真面目が過ぎるがしっかりとやっているよ。」
「そうでしたか。本日は彼らの試験の報告で来たのですね?」
「そうだ。試験はもちろん合格だ。私はこのまま王城へ報告に行くのだがお前も一緒に行くか?」
「そうですね。所長にも実際にコンタクトを取った私が代表して報告するよう言われておりますのでご一緒させてもらいます。」
「では、向かうとするか。」
そう言ってルードルとジンは王城へ向かったのだった。
次の日、俺達は武器収集家のアンダーソンと共に鍛冶屋に来ていた。
「嬢ちゃん達…。どうだい…?」
「うん!アタシの設計通りだね!流石は王都の鍛冶屋だ!」
「私の方もサイズはピッタリです!」
「おぉ!そいつは良かった!設計図を見せてもらった時も思ったがこいつは面白い武器だな!嬢ちゃんが考えたのか?」
「そうさ!アタシのオリジナルだよ!」
嬉しそうに胸を張るアルメイ。
「なら今後、もし王都でコレを売る事が決まった時は一声掛けてくれ!ウチも一枚噛ませてもらいたいからな!」
「う~ん。まだこの銃も未完成だし、アタシも半人前だからまだまだ先の話だけど覚えておくよ。」
「いやぁ。この武器を持ち込んだアンダーソンさんには感謝だな。」
「まぁ儂はこの銃という武器が欲しかっただけなんだがな。お前さんが喜んでくれて良かったよ。」
設計通りの銃と手になじむ武器が手に入ってアルメイもアンダーソンもシロもご機嫌だ。俺達はナックに支払いを済ませて鍛冶屋を出る。
「アンダーソンさん今回は本当にありがとうございました。」
「儂こそ交換条件だったとはいえ、オリジナルの武器を譲ってくれたことに感謝しておるよ。」
「もし、アタシがこれを売るようになったらおじさんにも一丁送ってあげるからね。」
「本当か!?約束だぞ!?」
「アタシもどうせなら完成品を渡したかったしね。」
「おぉ…。なんと良いお嬢ちゃんなんだ…。では儂はその日が来るのを楽しみに待つとしよう。」
「それでは。」
「じゃあねー!」
「ばいばい。」
「あの…。ありがとうございました!」
「達者でな。」
そう挨拶を交わして武器収集家アンダーソンと別れた。
俺達が宿屋へ戻ると、宿屋の前に白衣の女性が立って待っていた。
「あ!シンキチさん!」
「貴方は研究所の…。」
「はい。ルードル主任の部下をしておりますヘレナです!今日は例の遺跡への探索日が決まりましたのでご連絡に来ました。」
研究所の人が連絡に来ると言っていたが、まさか研究員が直接連絡に来るとは思っていなかった。
(てっきり、研究所の事務員みたいな人が連絡に来るのかと思っていたけど…。)
「わざわざすいません。」
「いえ!研究員として働いているとはいえ私も平民ですし、あのチームでは私が一番新人なので!」
「そうですか。ありがとうございます。」
目を輝かせながら話すヘレナは非常に真面目な性格の様だ。使い走りの仕事でも研究員として誇りを持って仕事をしているのだろう。優秀なだけでなく真面目だからこそ、平民で研究員になるという狭き門に合格出来たのだと感じた。
「それで、遺跡へ行くのは明後日となりました!出発は明朝となりますので明後日の明朝、貴族街区の門まで来てください!そこで私達研究員と合流になります。」
「調査はどれくらいの予定ですか?」
「一応明後日の調査は一日ですね。明朝から日暮前には戻ってくる予定です。なので丸一日護衛ということになります。」
「了解しました。ではそのように準備しておきますね。」
「お願いします!では明後日の明朝に!」
そう言ってヘレナは帰っていった。
「聞いた通り明後日から護衛依頼だから、シロの武器を試すためにも明日は冒険者ギルドで簡単な魔物討伐でもやろうか。」
「「おっけー。」」
「頑張ります!」
(明後日からは古代の遺跡探索か。それなりに危険もあるかもしれないけど歴史的な遺産という事だし観光としても見どころがあるといいなぁ。)
「―――以上が、魔導研究所と騎士団第三師団から上がってきた冒険者シンキチに関する報告です。」
秘書官からの報告を聞いて貴族の一人が発言する。
「将軍。一冒険者が王国騎士団の1個師団と同等というのはいくらなんでもあり得ないのではないのかね?」
「いえ、今回報告を上げてきた第三師団団長のエストランテは全団長の中でも経験豊富で私と共にいくつもの戦場を見てきた人物です。そんな彼が虚偽や誇張した報告をするとは思えません。」
将軍と呼ばれた男性の返答に貴族は「むぅ…。」と黙ってしまう。
「その者は王国の臣民なのか?」
「現状他の国にシンキチという名の冒険者や有名な戦士、軍人は該当がございませんでした。さらに最初に冒険者として登録したのはレマーレ領内の田舎町オカコットの冒険者ギルドの様です。それより前の足取りはよく分かっていません。」
「一体どこから来たのだ、その者は…。」
秘書官の報告を聞いて別の貴族は途方に暮れる。
「とにかく冒険者シンキチに関しては情報が少なすぎる。もう少し人員を増やしてその者の詳細を出来る限り調べるのだ。力の大きな者の動向は他国が動きかねん。」
「畏まりました。」
フワフワと投稿し始めて三か月。
総PVが1500を超えました。
いつも読んでくれて本当にありがとうございます。
閲覧数が増えるとやる気が出ますね(笑)




