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派遣勇者の世直し観光記  作者: あおまる軍曹
第一章【レグナ王国編】
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第038話「派遣勇者と模擬戦②」

第一章【レグナ王国編】

第038話「派遣勇者と模擬戦②」




 団長に呼ばれて前へ出てきたのは、想定通りダックスとマイルの二人組だった。

 

 「三チーム目は二人なんですね。」


 「元々この模擬戦は皆さんの技量を図るのが主目的ですからね。この二人であれば大丈夫であろうという考えでした。とはいえ、この二戦でシンキチ殿はすでに護衛として十分な力を持っていると確信しております。ですがここまでくると貴方の力を出来る限り測ってみなくなりますな。」


 「…ということで。」

 「三戦目は私も加わらせて頂きたいと思います。」


 「「「「おぉ…。」」」」


 団長の参戦と聞いて騎士団のギャラリーがざわつく。


 (いやいや…。なんか面倒な事になってきたぞ。)

 

 準備を終えた三人が改めて前へ出てくる。ダックスは大きな両手剣、マイルは長弓、ジンは騎士らしく大きな盾に片手剣を装備している。


 (これは勝ってしまうと大変そうだな。すでに護衛は合格ということだし、いい感じに善戦したら負けてしまおう…。)



 「ではシンキチ殿。行きますよ!」


 「〈身体超強化〉ぁ!」


 合図と共にダックスが強化スキルを使い、ものすごい勢いで突っ込んでくる。一気に距離を詰めて来たダックスはその勢いのまま先ほどのバトルアックス隊長の一振りとは桁違いの速度の一撃を繰り出す。


 (―――!!あっぶね!)


 久しくこのレベルの速度の攻撃を受けていなかったので焦ってしまった。寸前で躱すことに成功したものの、俺の体勢はかなり崩れてしまっている。


 「ダックスのあの攻撃を躱すとは流石ですな。では私のこれはどうですかな?」


 「〈連続刺突〉!〈攻撃反復〉!」


 体勢を戻す時間を与えず団長の刺突攻撃が始まる。威力こそ高くないものの的確に肩口や脇腹を狙ってくる。俺は剣で刺突攻撃を受け流しながら後退し、後方へ受け身を取る。


 (これはどうやって負けるかとか考える暇もないな。)


 「―――っ!?」


 そんな事を考えながら顔を上げるとマイルの放った矢が飛んできた。


 「いやぁ!反射神経ヤバいですねぇ!」


 弾いた矢は先端にスキルが込められている。なんのスキルかまではダックスとジンの相手に集中していたためわからなかったが、状態異常やデバフ系のものなのだろう。


 先ほどの中隊長チームと違って前衛二人のバフは自分たちで必要な分を使用する。前衛から距離を置くと後衛のマイルがデバフ付きの矢を飛ばしてプレッシャーをかけてくる。

デバフを気にして近距離戦闘になれば前衛二人の攻撃の嵐、前衛から距離を取ればマイルによる遠距離射撃で不利なデバフにかかる可能性が出てくる。


 (個々の力もあるが、連携の取れたいい戦闘内容だな。この連携で通常の三人よりもかなり手ごわく感じているのだろう…。)



 その後も前衛の攻撃を受け止めつつ、何とか負ける機会を伺うもののなかなか良さそうなタイミングを計りかねていた。


 (二試合目で格闘戦を披露しているから武器がなくなったからといって降参って手も使えないしどうしたものか。)


 前衛と距離を取ったのでお決まりのようにマイルがデバフ付の矢を放つ。それに合わせてダックスが再び距離を詰め始める。


 「〈スロー付与〉!〈連射〉!」


 (ここだ!)


 俺は三連続で飛んでくる矢の一発目と二発目を剣で払うが、二発目はギリギリのタイミングで撃ち落とす。三発目は間に合わず辛うじて避けるものの掠ってしまったという演技をした。


 「くそっ!」


 実際俺にはレベル差の大きい相手のデバフは効かないのだが上手いことマイルの矢を掠らせることが出来たのでデバフを受けた振りをする、するとその一瞬の機会を狙って距離を詰めて来たダックスが攻撃を仕掛けてくる。


 「もらったぁ!〈薙ぎ払い〉!」


 俺の右側面から高速で振りかぶったダックスの一閃が入ってきたので彼の両手剣と脇腹の間に辛うじて剣を挟み込んだという体でダックスの〈薙ぎ払い〉を受け止める。

そしてそのまま左側へ吹き飛ばされたように、横っ飛びで体を飛ばして勢いよく壁へタックルした。


 俺のタックルした壁が大きく凹み、少し崩れる。俺はそのままグッタリとした。



 「「「「うぉぉぉぉっ!!」」」」


 「「「シンキチ!」」」


 俺がダウンした様子を見て騎士団員のギャラリーは勝ち鬨の声を上げ、ルー達は慌てて駆け寄ってくる。


 その後騎士団の回復魔法系団員が治癒魔法をかけてくれたところで俺は身体を起こす。


 (正直それほど体力は減っていないのだが、あれだけ派手に吹き飛んだ振りをしておいて模擬戦終了後にケロッと起き上がっては縁起の意味がないしね。)


 その分三人娘には心配を掛けてしまったが、彼女達を模擬戦に参加させない為の手段だったのでこればかりは仕方がない。


 過保護に思えるかもしれないがルーもアルメイも親御さんからお預かりしているのだから、ある程度のレベルになるまでは脅威になりうる相手との戦闘や対人戦は控えていきたいと思っている。


 特に対人戦闘は精神的にもあまり良い影響はないものだ。実際俺も前の世界で初めて人間を相手に戦闘した際は魔物とは違う感覚に戸惑って、脳裏に焼き付いたものだ。


 俺は三人と平和な観光の旅をしたいと思っているのだ。旅をする上で資金を作る為に魔物を討伐したり、身を守るために強くなる必要はあってもわざわざ戦いの場に出ていくような真似はさせたくない。



 「シンキチ、大丈夫?」

 「いたくない?」


 「あぁ。治癒魔法もかけてもらったし大丈夫だよ。」

 「あんな凄い勢いで吹き飛んだのに大丈夫ですか?」

 「大丈夫、大丈夫。」



 俺がゆっくりと立ち上がると、ジンとダックスが歩み寄ってきた。


 「お疲れ様でした。おかげ様で私も久々に楽しく模擬戦が出来ましたよ。」

 「私もとても勉強になりました。」


 「いえいえ、こちらこそ勉強させていただきました。」


 「シンキチ殿の実力は申し分ないと魔導研究所の所長には報告しておきますので任務に就けない我々の分まで護衛をよろしくお願いいたします。」

 「私からも兄上と研究員の護衛、宜しくお願いいたします。」


 「ありがとうございます。精一杯頑張ります。」


 「回復したとはいえ、お疲れでしょう?お送りしますので今日の所は宿に戻り、ゆっくりと休んで下さい。今後の話は研究所の方から後日知らせが来ると思いますので。ダックス、マイルお前達も疲労があるだろうが送迎を頼んだぞ。」


 「「はっ!」」



 俺達はダックス達に送迎してもらい、宿に帰ってきた。


 「お疲れなのにわざわざ送迎ありがとうございました。」

 「いえ、こちらこそお疲れ様でした。」

 「では我々はこれで。」



 シンキチ達を送迎し、駐屯地へ戻る途中ダックスとマイルは今日の模擬戦に関しての感想を語り合った。


 「副団長…。あの人何者なんでしょうね。」

 「わからん。少なくとも俺達第三師団が束になっても勝てる相手とは思えない。」


 「副団長もそう思いますか?」

 「あぁ。俺達との試合もわざと負けたのだろう。あれだけ俺と団長の攻撃を受け流していた戦士が不意打ちでもなんでもないお前の三連射を弾き損ねるとは思えない。」


 「やっぱそうですよねぇ…。」

 「それにあれだけの技量があるのにこちらには碌に攻撃をしてこなかったんだ。兄上曰く魔法もかなり使用できるはずなのにスキルを数個使うのみだったという事はそもそも勝つ気がなかったのだろう。」


 「本当に何者なんですかね。」

 「レグナや隣国の名のある戦士、騎士、冒険者は嫌でも名前が入ってくるものだが、シンキチ殿の名前は聞いたことが無い。謎の達人といった所だな。」


 「それに…。」

 「シンキチ殿については兄上や団長が上に報告しているだろうから俺達が気にすることではないさ。」


 「俺や副団長と大して変わらない年齢でどうやったらあんなに強くなるんですかねぇ…。」

誤字脱字報告をしていただいた読者様ありがとうございました。

投稿前は読み返したりしているものの、なかなか完璧とはいきませんね。

少しでも読みやすいようにチェック頑張らなきゃ!と思いました。

これからも本作をよろしくおねがいします。


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